いろんな新聞で報道されていますから、ここでは朝日の記事だけ。
http://www.asahi.com/national/update/0102/TKY200801020067.html 警察庁のサイトに交通事故死の統計がありますが現時点で最新の昭和26年~平成18年までの交通事故死者数グラフ
http://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h19kou_haku/genkyou/h1/h1_01.htmlをみると私の子ども~青春時代には死者が1万人を越えるのが普通だったのですから、それを思うとよいことと言えるでしょう。あの頃は「交通戦争」ということばも言われていましたっけ。
でも、手放しで喜ぶわけにはいきません。
まず「5千人台」と書かれるとうっかり「お、5,000人」と感じてしまいますが、あくまでも「台」です。スーパーなどの値札の「5,980円」じゃあるまいに、少しでも数字を少なく見せかけようとする“工夫”があざとく感じられます。
また、あちこちのブログでも書かれているでしょうが、日本の定義で「交通事故死」は「受傷後24時間以内の死亡」となっています。24時間と1分で息絶えてもそれは「交通事故死」ではなくて統計上は「負傷者」にカウント。ちなみに欧米はたしか「30日以内」が標準のはずです(日本でも警察庁や厚生労働省の統計では交通事故後30日以内の死亡も数字が上げられていますが、大体24時間死の数割増し)。なんで何種類も数字を使い分けるんでしょうねえ。医師の立場からは、死亡診断書の「死亡の原因(直接または間接)」あるいは「直接死因には関係しないが上記の疾病経過に影響を及ぼした傷病名等」の欄に「交通事故」と書かれたものはまず“すべて”「交通事故死」としてその中から完全に交通事故とは無関係に亡くなったもの(交通事故の骨折で入院していたら大地震で病院が潰れて圧死した、とか)だけ除外する、でも良いと思います。(極端?)
「飲酒運転の厳罰化が死者減少の原因の一つ」と警察は手柄顔ですが、それだと手柄は司法と立法のものになってしまいますよ。警察の“手柄”にするためには「飲酒運転の防止と摘発によって飲酒運転を未然に防止したことが原因の一つ」としなきゃね。
……ただ、死傷者数トータルや交通事故件数が「死亡者」と比例して減少していないことが気になります。本当に交通行政は“成功”していると占って良いんでしょうか?
ずっと以前のことですが、田舎の病院にいたときに、救急で交通事故の患者さんを外科のドクターと診ていると警察官がずかずかと入ってきて「すぐ診断書を書いてくれ」と求められることが結構ありました。小外傷(ちょっと縫えばよいもの)とか単純な骨折だけならとりあえずすぐ書けますが、あちこち打撲している場合、それがただの打撲か内臓に損傷をきたしていないかしばらく経過を観察する必要があります(逆にしっかり重症の方がかえって話は楽です(処置は大変ですけれど)。「この状態の悪さは、絶対重大な障害(たとえば脳出血とか内臓破裂)があるぞ」とわかりますから。判断が難しいのは中間領域なのです)。で、「一見軽そうだけど、この人は入院してしばらく様子を見ないと確かなものが書けません」と言うと、みるみる警官の機嫌が悪くなりました。もう一つ、診断書を書いてその治癒見込み期間がある日数を超えているとまたみるみる機嫌が悪くなっていました。どうも診断書を警察に持ち帰ってすぐに処理したいという事情があったようで、さらに重症と軽症ではその処理過程での面倒くささが全然違っているという事情もあったようです。だけど、そんな事情に合わせて診断書を書くわけにはいきません。そのときの経験から、警察は書類処理を優先するお役所なのかな、という印象を持っています。そういえばあの町、事故好発地点の道路改修もなかなか進まなかったなあ。