年末に机の上の整理をしていたら、社会保険事務局からの「医療費のお知らせ」が出てきました。鞄に放り込んで帰宅してそのままにしていたのをやっと思い出して取りだして封を切ってみると、昨年5月~10月の間に私の一家がかかった医療費の区分と額の一覧です。「ふーん、こんなにかかっているのか」と思いながら見ていて、嫌なことを思い出しました。
田舎の病院に勤務していたとき、こういった通知書を受けた老人が「こんなに医療費をかけて世間に負担をかけては申し訳ない」と通院をやめてしまったのです。持病は高血圧。私がそのことを知ったのは数ヶ月後、服薬をやめたために血圧が上がり、その人が脳出血で倒れて運ばれてきたときのことでした。
情けなく悲しかった。パターナリズムを発動させて「やめたら脳卒中になるよ」と脅してでも薬の必要性を納得させていたら薬を続けていたかもしれないのに。ずっと薬を飲んで血圧を安定させていれば、その人は脳出血にはならなかった可能性が高いのに。半身麻痺にはならなかったのに。
少額の医療費をコストカットすることで、かえって重大な病気の治療が発生してコストが高くついているわけですし、なにより一人の人生が破壊されたことの“コスト”は数字ではあらわせない損害のはずです。
なのにその人は「すみませんすみません」と謝り続けていたのです。「医療費で世間に負担をかけてすみません」「先生の薬を勝手にやめてすみません」「脳出血になって迷惑をかけてしまってすみません」……あなたのせいではありません。謝る必要もありません。まして「長生きしてすみません」「ぽっくり死ななくてすみません」なんて言ってはいけません。そんなことばは言わせる方が人間として間違っているのです。
どうせこんな通知を出すのだったら、自己負担分を一年分計算して税務署に送付してくれないかなあ。そうすれば医療費の分の税金還付を確定申告にわざわざ行かなくても受けることができます。少しは国民のためにお役所が連携して仕事をしてくれたら嬉しいのになあ。
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