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患者を苦しめるのは、病気だけではなくて健康保険制度もまたその“共犯”になっている、と感じることがあります。点数設定やレセプト査定などの問題もありますが、たとえば現行のリハビリテーション日数制限がはらんでいる問題をとりあげてみましょう。
リハビリテーション(以下「リハ」と略)と言っても、急性期・回復期・維持期とあるし、対象とする疾患も脳卒中や整形外科的なものなどいろいろありますので、ここでは脳卒中の回復期リハに限定してみます。
リハに関して、お上は日数制限をしています。それを簡単にまとめると以下のようになります。
(A)脳卒中が発病した日(発症日)から2ヵ月以内に回復期リハを開始しなければならない。
(B)回復期リハができるのは、発症日から180日まで。回復期リハを開始した日(算定開始日)から150日まで(実際には140日を過ぎると減算処置(長くリハをしたことに対する“罰金”)が取られます)。(ところでこの減算処置は今年度始まって、来年度には廃止になるとアナウンスされてます。一体何が目的だったのでしょう?)
もちろんどちらにも合理的な理由はあります。発症して時間が経ちすぎて病状が固定したら、回復期リハの効果は望みにくいし、ある程度以上良くなってからさらにリハをしても“無駄”になるだけでしょう。
しかし、世の中は単純な経過の人ばかりで成り立っているわけではありません。人生や世界は、単純な人が望むほど単純ではないのです。
具体的に考えてみましょうか。ある脳外科に3人の患者がいるとします。
1)脳卒中が発症して入院して2週間で退院する人
2)2ヵ月で退院する人
3)3ヵ月の人
まず、この中でどの人が重症かを考えてみましょう。脳卒中になって入院した(緊急搬送された)脳神経外科病院から早く退院できる人が軽症、なかなか退院できないのは、元の病気が重いかすごい合併症がある、つまり重症、と判断できます。ではそれらの人に前記の(A)(B)の規定を適用して実際にどのくらいリハが可能かを考えると……一番軽症の1)の人は丸々150日。2)の人は 120日リハをしたところで(B)の規定の「180日制限」がやって来ます。そして3)の人は退院時に回復期リハを開始することができません((A)の規定によります)。平たく言うと、日本では軽症の人ほど長くリハができて重症の人は回復期リハが受けられないようにする仕組みが機能しているのです。
もちろん軽症の人に日数限度一杯まで漫然とリハを施行することはないでしょう。本
人の社会復帰は早い方が望ましいし、次の人がベッドが空くのを待っているのですから。しかし、重症の人(あるいは脳外科で他の重い合併症が見つかってその治療や手術を受けなければならなかった人)に対して「もう少しリハができたらもっと機能が伸びるのに」ということはないのでしょうか。急性期病院の方では「合併症の治療をもう少しやりたいのだが、回復期リハを始めるべき“締め切り”が来てしまう」とどちらを優先するべきかジレンマを感じていることもないのでしょうか。
規制をするのなら、軽症の人には短期間に集中して、重症の人にはゆったり時間をかけて手厚く、とメリハリのあるものが望ましいでしょう。重要なのは、病名と日数で縛った十把一絡げの対応ではなくて、各個人の状態に合わせた個別対応医療です。「線引き」「一律」「規制」が座右の銘の人には理解してもらえないでしょうが。
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