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HER2

K.U. / 2009.12.30 13:00 / 推薦数 : 1

60歳代女性。乳腺腫瘤の細胞診上Class Vのため,乳腺腫瘍摘出後の検体。浸潤性乳管癌で,scirrhous (硬癌) の形態を示しました。

標本はHER2染色です (一般に“ハーツー”と呼びます)。核の形状の変化した癌細胞の表面に茶色く染まっているのがHER2蛋白です。

組織学的には,HER2染色の評価は4段階 (0,1+,2+,3+) に分類しており,この症例の場合はスコア3+で染色性強度としました。

統計にもよりますが,乳癌の20から30%にHER2遺伝子増幅があるといわれています。そして予後との関連が報告されています。

HER2蛋白はヒト上皮増殖因子受容体2 (Human Epidermal Growth Factor Receptor Type2)という名前で,HER2遺伝子の産物であり,細胞膜に存在するチロシンキナーゼ型受容体です (細胞質側にチロシンキナーゼ活性があり,シグナル伝達している)。

しかしそのリガンド (受容体にくっついてくるもの) はまだ分かっていません。受容体に何もくっつかなくても,シグナル伝達が行われているのかも知れません。また細胞表面にHER2蛋白があるという状態と,癌細胞の増殖能や活性化の関係はまだ分かっていません。

現在,乳癌治療に用いられているヒト化抗体であるTrastuzumab (ハーセプチン) は,HER2蛋白に対するモノクローナル抗体で,HER2蛋白と結合したのち,一緒に細胞表面から消失します。これによりHER2蛋白発現量を低下させます。

その作用機序には,抗体依存性腫瘍細胞障害作用 (ハーセプチンがHER2蛋白にくっついたことによる障害作用) や直接的腫瘍細胞増殖抑制作用などがあるといわれています。 

HER2蛋白の細胞表面での発現量とハーセプチンの薬効が相関するため,HER2染色による組織学的評価は非常に有効なのです。

また最近ToGA試験という,胃癌に対するハーセプチンの治療成績が報告され,このままいけば胃癌に対しても適応拡大となりそうです。

胃癌症例では20%程度がHER2陽性ともいわれます。確かに乳癌と同じ腺癌でもありますし,その他の癌でも陽性の比率の報告がありますから,今後適応疾患が増えていく可能性があり興味深いです。

臨床的指標,病理学的指標および分子生物学的な機序が比較的整理されている薬剤は,まだ非常に少ないです。しかし分子治療はまだ始まったばかりで,今後さらに発展していくと思われます。

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結核

K.U. / 2009.12.12 03:00 / 推薦数 : 1

70歳代女性。もともとの間質性肺炎に細菌性肺炎を合併し,呼吸不全のため死亡。剖検時には,両側の間質性肺炎像および,好中球浸潤を伴う細菌性肺炎像がみられた。また上葉の一部に1cmの空洞がみられた。

標本はこの空洞の周辺組織のHE像です。

内部に馬蹄形様の配置で多数の核を有し,細胞質がピンク色の大きな細胞が散在し,その周囲には類似した核をもつやや細長い細胞が多数みられます。

ここでは見えませんが,この下の方には壊死組織が存在しており,この細胞たちは,その壊死部を取り囲んでいました。またさらにその外周には,リンパ球が多数集まっていました。

この多核巨細胞はラングハンス型巨細胞です (膵臓のランゲルハンス島,皮膚などのランゲルハンス細胞とよく混同されます)。また細長い (紡錘形様) 細胞が類上皮細胞です。

つまり,空洞周囲には中心部壊死を伴う (乾酪性),類上皮細胞肉芽腫が存在しています。

これが存在するといわゆる肉芽腫性炎 (特異性炎) → 結核という診断となります。Ziehl-Neelsen染色をしたところ,やはり結核菌が染色されました。

通常,細菌性の炎症の場合は,好中球が感染巣に集積して異物処理が開始され,その後肉芽組織 (肉芽腫ではない) が形成され,リンパ球や大食細胞 (マクロファージ) などがさまざまな処理をして,最終的には瘢痕組織になります。

結核の場合は,この処理機構が上手く働かず,マクロファージが際限なく食べ続け,互いに癒合し,風船のようにぱんぱんに膨れ上がります。この辺の機序は研究途上です。

つまり,類上皮細胞とラングハンス型巨細胞というのは,いずれもマクロファージの変形した姿なのです。

血球系の細胞であるマクロファージは,組織によって,クッパー細胞や,破骨細胞など,名前だけでなく,姿形を変えてしまいます。学生時代はよく混乱していましたっけ。

さて,中心部の壊死に「乾酪性」というフレーズがついていますが,これはチーズという意味です。どうしてチーズなのかというと,壊死部位のマクロ所見がチーズみたいだからです。

医学用語には,飲食物の名称がわりと多いですよね。チーズ,ナツメグ,ソーセージ,コーヒー豆,リンゴの芯,イチゴゼリーなどなど。

日本人の感覚だと,あまりそういう名称は使いませんよね。

あ,「たこつぼ」っていうのがありました (食べ物ではありませんが)。

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