2008.12.30 23:48 |  医療制度 / 行政  |  仕事 / 職場  |  近隣の僻地医  | 推薦数 : 5

仕事納めに思う

本日が診療所の仕事納めでした。

昨年も仕事納めのときの記事を書いていました。

http://blog.m3.com/hokkaido/20071229/1

 

今改めて読むと、今回の辞任は決して突然のことでなかったということが分かると思います。

 

この1231日で町の職員を辞めるため、今日は最後の日ということでお花も頂きました。まだ1月は別の医療法人からの派遣ということで通常通り診療所で勤務するので、ちょっと微妙な心境でした。まあ所長は今月一杯なので、公務員最後というより、所長の最後ということで受け取りました。

10年前にこの町にやってきて、その後院長、所長と約4年間責任ある立場にあり、診療所を町民の皆さんにとってなじみのある、頼られ、愛される存在にしていきたいという思いで色々と取り組んできました。

24時間365日急患は受け付けるということについては私が赴任する前からずっとやってきたことでした。このことについては病院から診療所へ転換する際も、方向性を変えませんでした。それがこのような僻地の診療所の使命と考えてきたからです。医師の過重労働については以前からずっと自分の中では気になっていました。大きな都会の病院の忙しさと違った忙しさが僻地の医療機関にあります。それがこの24時間365日の救急対応です。急患の数は少ないのですが、少ない医師で当直を担当するため当直する回数も多く、非常に拘束感があります。夜もいつもすぐに診療所に駆けつけられるように寝間着ではなく、ジャージを着て寝ていました。この町のような僻地ではこれが当たり前と思う反面、これでは長く勤められないという思いがいつもありました。そのためなるべく勤務環境を良くしようと思い、研修日を設定したり、代休をとれるようにしたり、夏休みはしっかり取れるようにしたり、週末の当直免除をしたりしてきました。しかしこのような方向性は行政からすれば医師のわがままと思われてきたような気がします。行政自体が、医師が労働者であるという認識がなく、労働基準法を逸脱した勤務についても見て見ぬふりをしてきました。

これは北海道の一僻地の問題ではなく、医療界全体にいえることで、マクロでみれば国自体が医師が労働者であることを無視して(知らないふりをして)、労働基準法を守っていないことを無視し続けてきました。そのため疲れ果てた医師たちが現場から逃散し、地域医療の崩壊が起こりました。医師は仕事先を変えようと思えばいつでも変えられます。開業もひとつの選択肢でしょう。ですから現場の医師たちはわざわざその場で踏ん張って闘争などせずに逃散するのです。今まで医師はみな使命感から身を粉にして頑張ってきました。今もそうです。全国で頑張って疲れ果てている医師がたくさんいるはずです。私も卒後8年間は完全に解放されるのは学会の時と夏休みくらいでした。旅行の予定も患者さんの容態が悪ければキャンセルでした。いつ呼ばれるか分からない状態でしたので、家内も私に子供預けて美容院にも行けないと嘆いていました。特に家内は医療関係ではなく一般人でしたので、医師の勤務体系についてはいつも不満を言っていました。夜寝ないで働いたのに次の日にまた普通に仕事するなんておかしいと。これってきっと普通の感覚だと思うのですが、私は医師という職業についたからはしょうがないと思っていました。

このような異常な勤務は医師では当たり前でした。ですから日本は医師数が少なくても医療が守られてきたのだと思います。医師が全員週 40時間勤務となると、一体何人の医師が足りないのでしょうか。

住民(国民)ももちろん知らない振りをしてきました。夜中当直で働いている医師が実は翌日も普通に勤務するということを知りませんでした。知らなかったというか想像力の欠如で知ることが出来なったのかもしれません。わざと考えなかったかもしれません。いずれにしても国民も医師の過重労働については認識してこなかったでしょう。行政にしても住民にしても医師なのだから夜も寝ないで働いて当たり前、高い給料をもらっているのだから36時間連続で働いて当たり前くらいしか思っていなかったかもしれません。私も以前事務の人から「先生くらい給料もらっていたら私も毎日当直しますよ~」なんて軽いタッチ言われて非常に怒ったことがありました。

話しが長くなりました。私も使命感でこれまで一生懸命働いてきたつもりです。しかし、こんな調子でいつまで働かなければならないのだろうかと思うようになりました。またこのような行政、住民の理解のない町では今後確実に医療崩壊が起こるだろうと思いました。

ということでは私は今月一杯で辞職し、ある医療法人に頼ることにしました。その医療法人が派遣で診療所に医師を派遣してくれる予定です。しかし、簡単に派遣などしてくれません。私の辞職と町の医療再生はあくまでセットです。今後行政や住民の努力が足りないと医師派遣は得られなくなり、地域医療は確実に崩壊するでしょう。おどしのようにとられるかもしれませんが、これは非常に重要なことだと思います。地域医療は医療機関だけで行うものではなく、行政、住民が一体となりつくっていくものだからです。医師まかせ、医療機関まかせではいい地域医療なんて出来るはずはありません。まずは行政側の判断で、残った医師を過重労働から守るために1月からは時間外受付を中止としました。医療法人からの派遣が今後増えれば少し時間外を診るようにはなるかも知れませんが、まずは完全にシャットアウトということになりました。いままでのこの町の時間外受診の自由さから考えると住民にとってはとんでもないことかもしれません。しかし、医療再生のためにしばらく我慢していただきたいと思います。24時間365日を看板にしてきた私としても非常に複雑な心境です。でもここを乗り越えないと私の、そしてこの町の再生はないと思っています。

北海道では各町に小さな病院や診療所があり、少ない人数の医師で地域の医療を支えています。どこの町も「地域医療を守るため」に24時間365日の救急体制を敷いています。でもこの「地域医療を守る」ということ自体が問題なのだと最近やっと分かりました(遅い)。

いったい地域医療の何を我々は守らなければならないのでしょうか。24時間救急なのでしょうか?違うと思います。24時間救急を守るつもりで頑張って医療崩壊になっては元も子もありません。ですから私は行政や住民に言いたい。今地域で頑張っている医師を大切にしてください。限りある医療資源だと思って大切にしてください。

しかし、現実は違います。まさに使い捨て状態ではないでしょうか。今まで「地域医療を守るため」という大義名分で医師に過重労働を強いてこなかったでしょうか?疲れ果てて辞めていく医師に後ろ指を指してきませんでしたか?

 

私が今度就職した医療法人の理事長はよく以下のような話しをされます。

北海道での生活にあこがれて北海道の地域の病院に赴任し、疲れ果て夢破れて帰っていく先生がいかに多いか。そしてその先生方は周りの先生に「北海道の地域医療なんかいったらだめだよ。殺されるよ」というかもしれない。そうなったら益々北海道の地域に医師は来てくれなくなってしまいますよ。そんな地域医療をするのはもうやめましょう!と。普通の医師が普通に北海道に来て2~3年でも楽しく地域で生活しつつ、地域医療を学んでまた帰って行けるような環境を作っていきましょうと。

 

どちらかというと「頑張って身を粉にして働くのは当たり前」タイプの古い理念にしばれられていた私に、この理事長やその下で働く医師たちは大きなパラダイムシフトを起してくださいました。これからどのような展開になるのか。色々と楽しみになってきています。

 

*その理事長も実は以前は私以上に「頑張って身を粉にして働くタイプ」だったことを私は知っています。「医者は普通の人の2倍の給料をもらっているんだから2倍働いて当たり前だ」とおっしゃっていたことも知っています。でも私よりずっと早くパラダイムシフトを起されていたようです。さすがです。

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