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うつ病の経過は、一言で言えば、一進一退です。
これは、言い換えれば、良くなったり、悪くなったりすることです。または、階段を上り下りするように良くなることで、直線状には良くならないということです。
実は、うつ病の経過では、一進一退の経過で良くなることが、完治するために重要であると私は考えています。
うつ病の治療経過中に、回復が足踏みしたり、後退したりすることがあります。そんな時には、その原因と対策を患者さんとじっくりと話し合うことが必要です。そして、改善策を明示して行動すれば、必ず再び前進して回復をしていきます。それの繰り返しで、病状は一段一段改善していくのです。
このような足踏みと後退があるために、患者さんは、スポーツ選手がスランプを乗り越えて成長するように、確実にうつ病を克服して、うつ病から多くのことを学べるのだと思います。
ある医師は、患者さんを”あの患者は・・・・”と呼び捨てにします。
また、ある医師は、患者さんを”あの患者様は・・・・”と丁寧に呼びます。
私は、いつもどんなときにも”患者さん”と”さん”をつけて呼びます。
患者さんと医師は、対等な間柄が原則です。
医師は、治療についての知識を最大限生かして最善を尽くします。
患者さんは、自分の体を自己評価して、悪いところを治りたいと願っています。
患者さんと医師は、お互いに対等な信頼関係で結ばれることによって、よい治療成績が生れます。
ある休日に、ある患者さんから電話がありました。患者さんからの電話は、大概は体の調子が悪くなったから、どうしたらよいかとの問い合わせの電話が多いのですが、その電話は違いました。
その電話は、”先生、ありがとう”から始まりました。そして、”先生の治療を受けて自分がよくなり、いつも心配してくれた姉も安堵している”、”姉は、私と同じように、先生に感謝している”との電話でした。
私は、医師として、患者さんへの治療に最善を尽くしています。その結果、患者さんが良くなれば、患者さんの家族も安心されて、多くの方々を良い方向へ導けるのだと再確認しました。
患者さんからの感謝の言葉に感謝しました。
当たり前を当たり前にすることは、案外難しいことが多いものです。つい目先のことに対して、目が奪われてしまい、当たり前のことが見えないことがあります。
例えば、道端に咲いている花の名前を調べる、朝日を見て感動する、星を見て星座を調べる、ありがとうと言って感謝する、などがあるでしょうか。
また、体の調子についても、当たり前を見つけることは大切なことです。
寝ているか、食べているか、休んでいるか、無理していないか、笑っているか、イライラしていないか、楽しんでいるか、体を動かしているか、痛みはないか、そして、自分の体調を評価する。
自分の当たり前の状態を知って下さい。
精神科医として多くの方に接していると、以前は人間の行動や思考は複雑だと思っていました。その人間の複雑さが、不安や困惑を生み出す原因の一つであると思っていました。
しかし、多くの患者さんの悩みを聞いていると、悩みの結論はシンプルであることに気づきました。ですから、その不安の対処方法もシンプルに対処できることに気づきました。
そのような経験から、多くの患者さんを診ても、個々の患者さんへ適切な対応が出来る力がついてきたのだと思います。
人間の思考や行動はシンプルであり、シンプルであるべきなのです。
それに気づいて、行動できれば、人生はきっと楽しくなります。
薬物治療には多くの専門的な知識が求まられます。薬物は、基礎研究、臨床研究、その結果の解釈などを知って、実際の臨床現場で慎重に使用しています。
しかし、残念なことに、時々、信じられないような薬の使用を平気でしている医師がいます。その原因は、恐らく、単純に薬の知識を持っていないことだろうと思います。自分で臨床症状を評価したり、症状に対する薬の効果の知識がないのです。薬を出しておけばよいと安易に考えているのかも知れません。
薬は、適切な使用をすれば頼りになるものですが、不適切な使用をすれば最悪は生命が危険になります。
薬の知識が豊富にあるかないかが、よい医師を見分けるポイントかも知れません。
人は死ぬまで成長を続けるものだと思います。どこかで、気を緩めて、”まあ、これでいいや!”と考えてしまうと、次の成長のステップを踏めないことがあります。
女子柔道の谷(旧姓田村)亮子さんは、世界でトップになっても 決して安堵せずに、トップになった瞬間から次の新たな目標を見出すそうです。もし、金メダルを取って、安堵してしまったら、今の強さはなかっただろうと言っています。
何かに成功して勝ったときに、リセットして休むよりも、勝負に勝って絶好調な時に次の目標を持って、すぐに次の目標に向かって歩んむことが成長を継続する秘訣かも知れません。
あせらないで、あきらめないで、前を向いて歩くために、支援と援助を続けていきたいです。
自分の体調を見極めて、体調に合わせて生活できれば、毎日の生活が楽になります。特に、調子が悪いときに、どうすればよいかと考えて行動できるようになれば、かなり生活することが楽になります。
調子が悪くて、うれしい人はいません。体調が悪くて、あせらない人はいません。
人はいつも同じレベルの体調で過ごすことは不可能です。かならず変化して、大波小波と波があります。
人は調子の波の中で、どの波に自分がいるか、悪いときにどのように対処するか、体調の悪さをどのように見極めるかが重要です。
疲れている、体がだるい、意欲が出ない、これらは調子が悪いサインです。さらに、眠れない、食欲がない、というサインはかなり調子が悪いサインです。前者は黄信号、後者は赤信号と言えるでしょう。
黄信号は、少し生活のペースを落として、赤信号が点灯しないように気を配りましょう
赤信号が点灯するれば、いずれ体は悲鳴をあげて、完全に疲弊した状態へとなります。つまり、赤信号は要注意・危険サインです。
黄信号から赤信号へ変化しないかを見極めるために、”寝ているか、食べているか”というサインが重要です。
私は、外来業務が大好きです。楽しくて仕方がありません。最近、精神科医療は、外来が中心であると確信するようになりました。
例えば、うつ病は、ほとんどが外来で治療が可能です。治療初期で大切な薬物調整や身体状態の回復のための治療は、外来へ一週間に頻回に通院していただければ、入院は必要ない場合がほとんどです。徐々に回復してくれば、通院間隔は延長することが出来ます。
外来業務は、精神科医の力量がかなり左右します。多くの患者さんに対して、適切な診断と治療を行うには、生半可な勉強や人間性では出来ません。
精神科医は、患者さんとともに、成長しなければいけない医師であり、やりがいがある楽しい仕事です。笑顔を忘れず、そんなことを実感する毎日です。
うつ病では、抑うつ気分が明確に存在して、不眠、食欲低下、意欲低下、倦怠感などがみられます。このような症状は、うつ病だけで見られるわけではありません。例えば、貧血や胃炎などの身体の器質的な病気でも出現する可能性があります。従って、身体的な検査は必須になります。
うつ病は、身体的な病気が明確に否定されて、初めて診断が確定するのです。
そのために、精神科医は全ての病気についての知識を常に入れながら、全身を診なければいけません。精神科医は、手術や侵襲的な検査などは出来ませんが、各科と連携を取りながら、うつ病の正確な診断をする必要があります。
ですから、精神科でうつ病の診断・治療を受けるときには、他の診療科での検査結果や治療歴は大変に重要な情報となります。