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オストヘールの法則

イッシー31 / 2009.07.05 04:36 / 推薦数 : 1

最近、医療事情に対するエントリーばっかりだったので手術と絡めた話題をちょっと書いてみようと思います。 

  

手術中に出血はよくあります。

それは、僕の技術がまだまだということも80%ぐらいを占めているのですが、やはり上手な先生でも、予想外のところで出血をすることがあります。

 

胃の手術だったら、脾臓が裂けてじわじわ出血が続くところだとか、膵臓の前のリンパ節郭清をするところだったり、少しでも深く剥離してしまったときに動脈から出血したり。

直腸の手術だったら、仙骨前面の静脈叢や前立腺と直腸の間なんかでしょうか・・・。

 

やはり術式によって「ここ、ポイントー。メモっとくようにー」と言われる危険地帯があるんです。

 

そういう危険地帯は慎重に慎重に行くんですが、「ああ、やぱりー」とか、危険地帯ではないところ「ふふーん、余裕余裕」ってやっていると、どばっと出て「ええっ、こんなところで?」ということがあります。

 

出血したときにどのような対処をしているのでしょうか。

実はだいたいこんな感じです。

 

ドバッ 

①とっさに指で出血箇所を押さえる。

②ふぅー、とため息をつき、前立ちの先生の顔を見る。

③ガーゼを詰めて引き続き押さえる。

④ふぅー、とため息をつき、前立ちの先生の顔を見る。

⑤ガーゼを、そーっと外してみる。

ドバッ

⑥ガーゼを詰めて引き続き押さえる。

⑦ガーゼを、そーっと外してみる。

⑧出血箇所がわかればその血管を糸で結んだり、その周囲の組織をがさっと糸と針で結んで止血する。または出血しているところを取ってしまっていいのならば、速やかにその場所ごと取ってしまう。

⑨ガーゼを詰めて引き続き押さえる

以降⑦⑧の繰り返し。

 

よっぽどやばい血管を損傷していない限り、この方法でだいたいが止まってくれます。

(それでも止まらないときはなんとかして止めなくてはいけないので他のいろいろな方法を使って止めようとするのですが、ここでは書きません)

まず重要なポイントは押さえること。

もう一つ重要なポイントは④の前立ちの先生の顔を見ること。まだ僕の前立ちには上の先生が付いてくれているので、このときの顔色をうかがうことが重要です。

本当にやばいところだと、「ちょっと貸せっ!!」といって取り上げられてしまうことがあります(汗)。

 

「オストヘールの法則」

「ヌウトマールの法則」

「トルトマールの法則」

というのがあります。

まあ、僕とその周囲だけで言っている法則なのですが。

 

解説すると

 

出血しているところを押さえていると出血が減ってくる法則。

出血しているところを縫うと止まる法則。

出血している所を取ってしまうと止まる法則。

 

ただそれだけ。

それで止まらないときは次の手を考えるんですけどね。

 

救急外来でよくやるのが「オストヘールの法則」と「ヌウトマールの法則」をつかった止血。

 

例えば頭部外傷なんかで頭のから血がびゅーびゅー出ている人。

運ばれてきたらとりあえずそこをしばらく強く押さえています。

消毒や洗浄を手早くやって、また押さえます。

そーっとガーゼを外して出血が下火になっている間に頭皮をザクザクって縫って、創を合わせてあげればいっちょあがり。

よっぽど血が固まりにくい人じゃない限り、止まってくれます。

 

福島県の一時期話題になった事件の手術の時につかったのが、「トルトマールの法則」。

出血箇所である胎盤を取ってしまえば、出血は止まるということを期待して剥離を続けるという選択肢をとりました。

結果的には出血は続いてしまい、患者さんは亡くなってしまいましたが、そのような選択をとることは手術をしている人間からするとちっとも不合理な選択ではありません。

 

一般の人に知っていてもらいたいことはとりあえず「オストヘールの法則」ですね。

さすがに「ヌウトへール」と「トルトマール」はむりなので。

 

とりあえず出血したら出血したところを押さえてください。

鼻血がでたら、鼻を指で強く押さえ続けてください。

包丁で指を切ったら水で洗って清潔な布で押さえ続けてください。

頭や顔をうって、傷から血がピューピュー吹き出しているときもあわてないで清潔な布で強く押さえつけてください。

 

しばらく(10分ぐらい)押さえてそーっと指を離してみてまだ出血しているようなら、押さえたまま病院にきてくださいね。

くれぐれも歩ける人は救急車を呼ばないように・・・。

 

ただし強く押さえている間でもどんどん血が出てくるようなときはもちろんすぐに来てください!!

 

よく救急外来で「血が止まらない」といって来られる方で、タオルだけ巻いて、押さえずに血をだらだら垂らしながら待っている方がいらっしゃいます(タオルも巻かずに流れるままの方も折られますが・・・)。

 

貴重な血がもったいないので、とりあえず強めに押さえておいてください。

診察したときに少しでも出血が少なければ、観察もしやすいものなのです。

押さえていれば出血も止まっていて縫わなくてもいいことも多いし。 

 

出血したら「オストヘール」。

あんまり覚えやすくないか・・・。

それではお休みなさいって、もう朝だ。

 

(ほんとはそんな名前の法則はありません・・・)

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