イッシー31
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Doctors Blog

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先日のNHKスペシャル(僕は見ていないのですが)で医師の地方への強制配置、診療科制限、自由開業の制限について議論されていたようです。

いろいろなネット上の情報では皆さん怒っておられているのでそのような話なのでしょう。まあyoutubeでも見られなかったので有料のNHKスペシャルを見られるところに行けば見られるのでしょうが、それもなんだかしゃくに障るので、ネットだけの情報を頼りにして記事を書いてしまいます。

 

その中で医師になるのに多額の税金が投入されているのだから医師は強制配置されるべきだ、診療科制限されるべきだ、自由開業を制限すべきだという論が出ていたそうです。

(見ていないので本当かどうかはわかりませんが、そのような意見がよく聞かれてきます(朝のズバッとする番組や夜のステーションな番組なんかで)。

 

よく言われることとして、

「医師を一人作るのには1億の税金がつぎ込まれている」ということが言われます。

果たして本当なのでしょうか。

 

僕の結論として「そんなことはない」です。都市伝説です。

都市伝説と同じものを根拠に国民の世論を形成しようとするきわめて悪質なものです。

 

1億円とか5000万円とかというのは国から大学に拠出されている交付金や大学の運営費を医学生の頭数で割った乱暴な数字であって、決して医師を一人作るのに必要な金額ではないからです。

 

医学部は医学生を医師にするための教育をする機関であるのと同時に、新しい医療技術を研究開発し、患者さんを治療する機関であることはいうまでもありません。

H19年度の浜松医大の財務諸表では運営交付金が5,116,313,000円(約50億)とあります。これが国から独立法人浜松医科大学の運営に対し交付された税金となります。

一学年100人程度ととして、その年の卒業生の頭数で割ると5000万円の計算になりますので,平均すると一人卒業生を出すのに5000万円の税金がかかっているということになります。卒業生は100人もいないので6000万とか7000万の税金がかかっているという論の根拠になっているのだと思います。

 

しかし先ほど書いたように大学は学生の教育だけをしているわけではありません。

附属病院の運営管理費もしっかり計上されていることがわかります。

 

以前ある掲示板でこのことについて議論したところ、医学部の教官の数は他の学部にくらべて各科の医師がたくさんいるので多いので人件費がかかっているのだという指摘をうけました。

違うと思います。

医学部の教官は学生の教育もしますが主な業務は患者さんの診療と後進の医師の育成、研究です。さらにその人件費は通常であれば病院から支払われるものであって、学生の教育の対価として払われるものではないことがわかります

また大学の教官の給与が低いことはいうまでもありません。

また施設の運営、管理費、大学の維持費がかかっているとの指摘がありました。

これは当然だと思います。国は教育のために税金を投入して大学を管理運営していきます。それは国公立であれば税金の投入額も多くなりますが私立でも助成金という形で税金が投入されています。

しかし、それは他の学部でも同じことであり、文学部でも、理学部でも、工学部でもすべてについて運営管理費がかかることになります。

 

つまり、医学生を医師にするために投入されている税金は普通の学生が卒業するまでに投入される税金の1.2倍(医学部は6年制なので)~2倍ぐらいなのではないのかと推察するのです。計算はしていません。あくまでも自分の6年間の大学生活からの推察です。

 

私学で金がかかっているのは学生が教育の対価として払っているものではなく、大学(大学病院)の管理、運営費、研究費としての金をはらっていると考えるのが妥当だと思います。

 

「医師育成に一人一億円の税金がかかる、という都市伝説」

で去年doctor-d先生がまとめておられます。

 

よく考えてください。年間8000人の医者が誕生するとして一人に1億円かかっているとすると8000億円が医者を作るためだけに税金が投入されているということになります。そんなはずないと思わないといけません。

 

僕は「税金で育ててもらった覚えはない」ということをいうつもりはまったくありません。

医師を育てるのに国民の税金はやはり投入されており、僕も税金によって、十分な医学教育を受けることができたと思っています。

それゆえ自分は国民の健康を守るという責務があると考えているし、地域医療にも貢献したいと考えて診療をしています。大部分の医師もそのように考えて日々診療をおこない、自己を研鑽し、医学の発展を支えているのです。

 

そして医師を育てる、医療を充実させるということは国として行うべき教育の一つであり、また社会保障というインフラの整備であり、国の責務であると思っています。

国が医師を育成するのに税金を投入していることを盾にして医師のいろいろな選択権を奪うことを目論んでいる方々に対して、憤りを感じています。

それならば理工学部や文学部を卒業した人たちも全て国のために職業と住む地域も制限されなければいけないのかということになります。 

 

地域医療や救急医療の体制の崩壊、さらに診療科の偏在、小児科、産科医の不足。今医療をとりまく問題は山積しています。やっと国民がそれに対して危機感を抱くようになってきました。その医療崩壊に対して処方箋を求めています。

 

下痢をしたときにどうするでしょうか。普通なら薬で下痢を止めたいと思います。しかし強引に下痢を止めると下痢の元になったウィルスや細菌が排出されず、下痢は悪化します。

急性腸炎の人に対しては医師はこう考えます。

腸炎になって脱水になっているので輸液しよう。じゃあなんで腸炎になっているんだろう。ウィルスなのか、細菌なのか、そのほかの原因なのか検索しよう。原因がわかったならばそれに対する治療をしよう。

 

僻地への強制配置、診療科制限は下痢に対してただ止痢剤を投与するようなものだと思います。

根本的な原因は何なのでしょうか。

多くの医療ブログで語られていることなのでここでは書きません。

 

そしてその論の根拠の一つは今述べたようにきわめて脆弱で幼稚なものでだまして世論ををコントロールしようとしているといえるでしょう。

 

父親に

「お前は誰に食わしてもらってここまで大きくしてもらったと思っているんだ。うだうだ言ってねえで、山奥村にあるうちの店を継げ!!」

っていわれたら怒らない人はいないと思いませんか。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ふうっ、なんか熱くなってしまいました。

いろいろな数字や定義について間違っていることがあるかもしれません、ご指摘があればお願いします。

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