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あるレストランフランチャイズチェーン店での話。
レストランフランチャイズチェーン展開している「IRYO」では不況のあおりを受けてかつてない経営危機に瀕していました。
「IRYO」ではいままで和食、中華、フレンチ、イタリアンの他にもお客様のニーズに応えて、韓国料理、ロシア料理、インド料理、はたまたアフリカのコンゴの料理やらこりん星の料理まで提供していました。
また料理の種類も多岐にわたる上、お客様が寿司と麻婆豆腐、ピザと好き勝手にいろんなものを頼むので、非常に無駄が多くなっているということに気がつきました。
そのため「IRYO」本社では次のような決定がされました。
うちで販売する料理は全て定食にする!!
入店したときに定食の食券をかってもらう!!
トッピングは許さない。
しかも一回の入店で頼める定食は1個まで!!
そんなわけで「IRYO」では寿司御膳(にぎり寿司10貫、吸い物、茶碗蒸し、漬け物、デザート)2000円、麻婆豆腐定食(麻婆豆腐、ご飯、スープ、デザート)2200円、フレンチフルコース5000円、イタリアンフルコース4500円という風に定食かコースのみになりました。
お客さんはそれぞれ食べたい食券を買って席に着きます。
しかしお客さんからは当然、麻婆定食には「ご飯をチャーハンにしてほしい」とか「スープをラーメンにしてほしい」とか、フレンチコースでの魚にはアレルギーがあるので肉にしてほしいとの要望が出ました。
チェーン店側はお客さんの要望に応えたいと思い、そのようなことはできるのかどうか本店にきいてみました。
すると本店の回答はこうでした。
トッピングはだめです。少し高めの料金設定にしてあるので、そのような要望をきいて料理をだしてもいいけど、料金はかえてはいけません。
要は麻婆定食のご飯をチャーハンにしてもお客さんは2200円しか払わなくていい、ということです。もっというと麻婆定食を頼んでご飯をチャーハンに変えて紹興酒を飲んでも2200円です。その分は店の持ち出しになってしまいます。
店はそんな持ち出しが多くなってはたまらないと考え、トッピングをしないようにお願いしましたがそうもいきませんでした。
こまったチェーン店は本社に泣きつきましたとさ。
(続く)
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勤務医の先生方ならわかると思いますが、DPCの話です。DPCとはちょっとむずかしいのですがDiagnosis Procedure Combinationの略で包括的診療報酬制度といいます。
この制度は,急性期に入院した人の診断を細かく分類したものに基づいて一日当たりの治療費を決めるという制度です。
それに対して、それぞれの診療行為に対してそれぞれ診療報酬を受けるものを出来高払いといったりします。
上の例えだと
本社→厚労省 チェーン店→病院
入院→入店
いろいろ頼んでいい状態→出来高払い
定食しか頼めない状態→DPC
となります。
虫垂炎で入院すると、その時点で虫垂炎定食を注文したように、すべての値段がその診療報酬にふくまれています。
「虫垂炎定食」です(虫垂炎定食には手術ありの定食と手術なしの定食に分かれていますが)。
一日何をやっても○○円と決まっています。
虫垂炎定食には入院費、抗生物質、点滴、食事がセットです(難しい話になるのですが、虫垂炎の手術は別料金です)。
患者さんとしてはCT検査をしても投薬されても、○○円と決まっているのでお得なような気がするのですが、病院としては検査や投薬を極力減らそうとします。なぜならその分の費用は病院の持ち出しになってしまうからです。
そのため厚労省としては無駄な検査や投薬が減らせるので医療費が減らせると考えています。
患者さんは人それぞれです。虫垂炎といっても虫垂をとればいいというわけではありません。高血圧がある人もいればものすごく高い薬を飲んでいる人もいます。また虫垂炎の入院中に血を吐いて内視鏡が必要になる人もいます、合併症をおこして入院が長引いたり、高価な薬剤を使わなければいけないような人もいます。
虫垂炎定食では高血圧の薬も、高い薬も、内視鏡も病院の持ち出しになってしまうため、入院中は病院としてはそういう薬をだしたりするのをとどまってしまいます。
必要だと思った検査もするのをとどまってしまうことがあります。
多くの場合利益が出るようにはなっているのですが、何かがあったときにはその利益はふっとんでしまいます。
またこのことを患者さんは知らないので無邪気にも「今回入院している間に、ついでだから白内障も診てもらおうと思うんじゃが」とおっしゃってきたりします。
今の入院システムではそれは病院としては認められないものなのです。
昔ならば受診すればその分は病院に戻ってきたのですが、今は病院の持ち出しです。眼科の先生がただで白内障を診察することに他なりません。
虫垂炎で入院しているならば虫垂炎の治療しかしてはいけません。するんだったら病院で勝手にやってくださいよ。ただしお金はだしません。
医者になる前はこういうことを知らなかったのですが、ただ自分のしたい医療をしたいと思っていたのですが、そういうわけにはいかないのですね。
患者さんのためにと思って動くことが病院にとってよくないことになるときがあるということがわかり、動きが鈍くなってきているような気がします。
しかし、研修医のときとくらべたら、格段に効率的なオーダーや指示ができるようになったとは自負していますが。
医療費の削減と患者さんのための治療、なかなか両立するのは難しい問題だと思います。
今日のエントリーも僕の勉強不足なところがあるかもしれませんが、間違っているところがあればつっこみをよろしくお願いします。(定食のお代をお客さんが払うと言うところは保険の観点からは違っているのですが、わかりやすくするためにあえてそのままにしました。)
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コメント
コメント一覧
5行目でDPCのことだと思いました。
私の働いてる病院も来年度からDPC導入で、先日その研修があったばっかりです。(ほぼ爆睡でしたが・・・)
何事も無く、全て順調!プロトコール通り!クリニカルパス通り!ならいいんでしょうけどねぇ・・・。
些細な事やら重大な事やら何かあることのほうが実際は多いのでは・・・。医療の質は完全に低下すると思います。
それはともかく、とてもわかりやすい例えでおもしろかったです。
DPCも効果があるのかもしれないけど、
一般人からしたら、なんだか治療の選択が
狭くなって、いやだなぁって感じです。
ありがとうございます。朝早いですね・・・。
DPCでもだんだん定食の値段が引き下げられています。
プロトコール通り、クリニカルパス通りにいく人はやっぱり少なからずいますね。
前回のエントリーではないのですが、術後自分では会心の出来と思った手術でもやっぱり合併症を起こしてしまう人がいるわけでして、なかなか大変ではあります。
>Kei☆様
ありがとうございます。このDPCの問題にはいろいろいわれています。実際はDPCにすることで病院の収益としてはUPするみたいですけど。詳しいことは勉強不足なもので。また勉強して書いていこうと思います。しかし、治療をしている方としては最近は収益のことについて上からわーわー言われてしまうと、どうしても収益やコストのことを考えてしまうものです。患者さんにとって一番いいと思われる医療を行うことは難しいことです。医療費削減、コスト削減という大義のもとでの洗脳にとらわれすぎるのもどうかと思いますね。
『虫垂炎定食』タイトル面白いです(笑)
何の話かと思えば、DPCの発想の転換には
さすが先生、お見事ですね。
収益ばかり言われると、良い医療はなかなか難しいですね。先生の士気が下がることに懸念を抱きます。
先生どうか、めげないでくださいね。
【知られざる外科医のお仕事シリーズ】
続編、楽しみにしてまーす♪
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