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夢見る掃除人 / 2008.11.23 16:08 / 推薦数 : 4
「なにが奇妙?」
鳴門病院:筋弛緩剤を誤投与し患者死亡 徳島
毎日新聞 2008年11月20日
社団法人「全国社会保険協会連合会」(東京都)が運営する徳島県鳴門市撫養町(むやちょう)黒崎の健康保険鳴門病院(増田和彦院長)は19日、市内の70代の男性患者に誤って筋弛緩(しかん)剤を点滴し、死亡させる医療事故があったと発表した。病院から届けを受けた県警鳴門署は業務上過失致死の疑いもあるとみて、医師や看護師から事情を聴いている。
病院によると、肺炎などで入院中の男性が17日午後9時過ぎに発熱し、当直医が解熱効果のある副腎皮質ホルモン剤「サクシゾン」の処方を決めた。しかし、この薬の備えはなく、調剤のためコンピューターで「サクシ」と入力して検索した際、筋弛緩剤「サクシン」のみが検出された。点滴後、男性は容体が急変し、18日午前1時45分ごろ死亡した。
看護師は筋弛緩剤の処方を不審に思い、「本当にサクシンでいいか」と確認したが、当直医はサクシゾンと思い込んでいて、点滴を指示したという。【岸川弘明、深尾昭寛】
***
報道には、医学的な事実がほとんど書かれていません。こうした無造作なトピックスの公表によって、病院の外から見る「世間様の目」は、当然、当直医に真っ先に注がれることでしょう。
果たして、そうでしょうか。。。この奇妙な事件を推理してみました。
***
当直医の出した指示ステロイドホルモン「サクシゾン」が、看護師によって劇薬・筋弛緩剤「サクシン」に取り違えられた。
サクシゾンの使用の是非は、特に問題ないでしょうね。もっと免疫抑制の強いステロイド(ソルメドロールなど)も、肺炎の急性増悪にはパルス療法としてよく使われます。
一方、サクシンのアンプルは、それが劇薬・筋弛緩剤劇薬であることを示す「物々しいラベル」が貼ってあります。アンプルを切るのも「恐ろしい」感じのラベルです。
投与前に、看護師が当直医に確認したと言います。サクシゾンとサクシン。発音するとよく似ています。電話ではよく聞き取れないほど、「ゾ」は明確に発音しにくい音です。
当直医は、まさか「サクシゾン」が「サクシン」に取り違えられるなど、夢のまた夢です。一生に一度もないでしょう。そのようなことは、「何億円の宝くじに当たって、取りに行かない人がいる」くらい「ありえない」ことです。もしも、看護師がこれでもかという勢いで「サクシン」と発音しても、にわかには信じがたいほどありえない取り違えです。「冗談だろーーー」と本気に気づく方がおかしい。病棟に行って、まさか本当に「サクシン」って、「あれあれあ~~」の世界です。首です。看護師。
事件は、看護師の勉強不足だった。当直医の管理不行き届きだった。。。で、一見落着。
?
さて、奇妙な事件は、奇妙を呼びます。
報道では、点滴とあります。サクシンもサクシゾンもともに、点滴ではなく、通常は、静脈注射です。看護師がサクシンが筋弛緩剤であり、サクシンを静脈注射している間に、みるみる呼吸が停止します。
国の規則では、静脈注射は医師のみがするという規則になっています。実際に、この規則を厳密に適用すると、業務が成り立ちません。実際は、医師の管理下・指示の下で、危険性の少ない薬剤は、看護師が点滴のチューブの途中から日常的に注入しています。これを「側管」といいます。
硬い病院では、「側管もだめ」ということで、ある工夫が行われています。本来静脈注射(ないし、側管)を、大きな点滴バッグに混入してゆっくり点滴する、という方法です。
これ自体に、特に問題はありませんが、筋弛緩剤が誤って投与された時、やっかいです。呼吸停止にすぐに気付かないという事態が起こるのです。
さて、この事件、どのような投与方法だったのでしょう。
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この奇妙な事件には、他にも奇妙があります。
この70歳のご老人は肺炎で入院していました。呼吸状態が悪く、薬剤投与するとき、すでに呼吸器が装着されていて、自発呼吸のないコントロールモードになっていたと仮定すると、どうなるでしょうか?
ステロイドが必要な肺炎は、自発呼吸もままならない極めて重篤な状態のことも多く、呼吸器が装着されていた可能性があります。コントロールがうまくいかないときにサクシンが医師の管理下で、緊急に使われることもあるでしょう。例えば、気管チューブがねばい痰で閉塞して再び挿管(入れ替え)しなければならない時などです。そのほかは使われることはないでしょう。
さて、看護師のミスでサクシンが投与されても、呼吸器がコントロールモードで、あらかじめ呼吸が管理されているのであれば死因はサクシンではありません。生命維持装置(呼吸器)で、呼吸は維持されています。サクシンで心臓は止まりません。すると、その場合は、死因は、肺炎から併発した敗血症、多臓器不全、心停止ということになります。
ところがこの事件では、サクシンが誤って投与されて死亡するまでの時間がたいへん奇妙です。
17日午後9時すぎに発熱しています。当直医が午後9時すぎにホルモン「サクシゾン」の処方を決めたあと、「サクシン」に取り違えられて投与されるまでの時間が明らかになっていません。男性は翌日18日午前1時45分ごろ死亡とあります。筋弛緩剤投与から死亡までの時間が長すぎます。はたして、死因は筋弛緩剤によるものでしょうか?間違って投与しても、投与最中に呼吸が止まります。すぐ挿管をしたのであれば、死因は筋弛緩剤サクシンではありません。
かりに点滴で投与されたのであれば、呼吸状態に気づくまでに時間的余裕があるはずですので、救命が可能です。
***
さて、呼吸器が付いていた、ついていなかった、にかかわらず、あってはならない筋弛緩剤のミス投与が、看護師の不勉強にあったのはまぎれもない事実です。こうした看護師のミスに対して、医師個人はどこまで責任を負えることでしょう。
医師は、こうした看護師のレベルの低さからくるミスに対しても責任を取らねばならない立場にある、というのが現状ですので、病棟の手の届くところに「サクシン」が置いてあること自体に問題があったと思います。あるいは、「サクシン」のアンプルを開ける行為そのものは、医師に限定されているべきで、確認作業が不十分な病院全体の管理責任にあるということになります。劇薬「サクシン」がナースステ-ションに無造作に看護師の手の届く薬棚にならべられていたのでしょうか。。。
病院が管理責任を取って、賠償に応じるべきか否かは、今後明らかになる裁判での事実の検証次第ということになります。
今日の一言
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当直も 軽くはやれない アリ地獄
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今の医療の抱える「人員不足」「予算不足」からくる由々しき問題の一側面とも言えます。
***By 無料探偵団・夜走る「ゆめみ」
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今日の一言
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当直も 軽くはやれない アリ地獄
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今の医療の抱える「人員不足」「予算不足」からくる由々しき問題の一側面とも言えます。
筋肉弛緩剤は、アメリカではカギ付きの麻酔科医師か麻酔師用にトレイがあります。または、24時間いる薬剤師の許可がないとでません。日本の管理は知りませんが、この病院の責任のがれが考えられます。
そーなんです。
筋弛緩剤が夜間に間違って「出てくる」こと自体、あり得ないことなのです。
当直医にとって、まったくの想定外なのです。当直医は声を大にして無罪を主張するべきなのです。
居酒屋で「ママ。レモンちょうだい?」って言ったら、まさかの洗剤「ママレモン」が水割りに入ってきた。。。みたいな、ありえない「無知」と管理の「杜撰」に、問題の本質があるのです。
非医療者に分かりやすい解説、ありがとうございました!
テレビにレギュラー出演しているタレント医師には、こういう推測できないんだろーなー。
ご訪問ありがとうございます。
非医療者にも分かっていただけるように、医療専門用語を極力避けて(必要なときは解説を付記して)書くように心がけています。
今後ともどうぞよろしく。
サクシンとサクシゾンはとても似ていますが、看護師のレベルの低いことでこの様なミスが起きたのは言うまでもありません。しかしもとをたどれば当直医の指示のミスでもあります。看護師が電話で再度確認しているにもかかわらず、この当直医はサクシンを指示しています。思い込みの中のミスであり、緊張感にかけていたのではないでしょうか?たかが肺炎されど肺炎です。私にはどうしても慣れすぎてしまっている当直医の姿が浮かんでくるのですが。
ご指摘ありがとうございます。
「あきらかにあなたはサクシンと指示しましたか?」という検察官の質問に、彼(当直医)がどのように答えるかが、本件の最も重要なポイントになりますね。
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