夢見る掃除人
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「別室の恐怖」

夢見る掃除人 / 2007.08.29 15:46 / 推薦数 : 2
「それじゃ、せんせっ~!おさきにぃ~。」
チャキチャキなーすの甲高い声と満面のニコニコ顔が、ステーションの入り口から手を振りながら去っていった。暑気払いの季節。今日は久々の病院挙げての飲み会だ。不吉な予感が。。。
 
もう何十年も前になるが、昔見たある舞台劇。ストーリーの概略はこうだ。。。
男と女が、どこかの○テ○のようなところだったと思うが、くつろいで話しをしている。
 
「今日はどうだった?」と、女が男にさりげなく聞く。
「ああ。面白かったよ。君があんなに笑うなんて思わなかったよ。」と、男は少し苛立ちながら答えた。
「あら。あなただってニヤニヤしてたじゃない。」と、女が男をからかう。
「してないよ。君が笑うたびにはずかしかったんだ。あんなに陽気にね。」
「でも、久し振りね。あなたとこうして会うなんて。以前は仕事をごまかして、よく会いにきてくれたのに。」
「そうだよ。上を捲くのは大変なんだ。ところで、君のところの社長は駄目だね。ありゃ。馬鹿だよ。どー見ても。」
「あら。あなたが紹介してくれたんじゃなかったの。わたしも、はじめはあーゆう横柄丸出しは嫌だったけど、きっとなんかいいチャンスあるんじゃないかと我慢してたの。でもやっと最近分かったてきたわ。単なる○好きの○○○だって。。。」
秘かな二人だけの会話が続く。
「でも、君もいい加減、整理したら?」と、男が切り出す。
「何を?」
「雄猫だよ」
「あら、言うわね。あなたこそ、例のメスブ○どうしたの。捨てたの?それともまだ、飼ってるの?」と、女がくい下がる。
二人舞台は、かなりきわどい会話へと進んでいく。私たち観客は、彼ら二人の会話をにやにやしながらみている。ああ、これはきっと予期しない結末がくるはず。。。私たち観客は、かたずをのんで喰い入るようにみつめている。
 
***********
  今日はいったい!!何の話っすか。ヨルドラサイトですか?火曜サスペンスですか?。。。ここは医師専用サイトじゃなかったんですか。
たしかに今日は火曜日ですが、落ち着いて。もう少し聞いてくださいな。きっと面白いから。
 ***********
 
ホ○ルの一室へもどる。。。
 「私のこと、あなたの○○にバラしてもいいのね。」
「へっ!やれるもんならやってみろ。こっちにも手はあるぞ。」
「そう。じゃ。。。あなたの首を絞めて、わたしも死ぬわ。。。」
女が男のバンドを振りかざし、男はストッキングで女の首をかけようとした瞬間だった。壁にかかった薄い赤いカーテンが、ゆっくりと上がりはじめるのだった。。。舞台の幕が上がるようにゆっくりと。
な、なんだぁ?!。。。あし?足が見えてきたではないか。へぇっ!?。。。それも一つじゃない。たくさん並んでいる。。。
二人は喧嘩を忘れて壁の奥に釘付けだ。観客である私も、もちろん唖然。
40-50名の観客が、壁の向こうの階段状の観客席に整然と座っているではないか。無言で食い入るようにこちらを見ているのだった。。。
かくして、もうひとつの向かい側の観客席から、それまでの二人の秘密の会話やなりゆき、そして私たち観客の表情までも、すべて見られていたのだった。。。私たちは騙されたのだ。。。!
 
 さて、医師専用サイトにもどります。
  
ナースステーションの会話。。。
「せんせ。いつになったら告知するんですか。」
「あー、304号室ね。ありゃ。どーしよーもないよ。ニンチだからね。それにメタメタだし。」
「抗がん剤はやっぱり行くんですか。」
「上に言われるまま行ったら、死んじゃうよ」。。。
入院中の患者様が、ステーションの前を点滴棒を押しながら歩いておりまする。ときどき立ち止まっておられまするぞ。
 
階段の踊り場の会話。。。
「じゃ、君は見ごろ死にする気か。」と、オーベン。
「じゃ、先生は抗がん剤で殺す気ですか。白血球がすでに2500を切ってます。」と、反抗期のネーベン。。。。上の階の待合椅子にやり取りが響いておりまする。10人座っておりまする。
 
手術室の会話。。。
「いや、俺もね。なりたての頃は、焼き肉が喰えなかったよ。」と、オーベン。
「なんでですか。先輩っ!。」と、コベン。
「電メスの煙が焼き肉の匂いだからね。おい。きちんと糸を絞めろよ。」
「はいっ。アブラだらけでメタボな腹は縫いにくいですね。で、せんぱいっ!。好物の焼き肉はナニ肉ですか。」
「決まってるだろ。黒豚さ。」
「ところで、腹膜メタは処理しなかったんですね。」
「当たり前だ。骨メタステージ4だよ。よし、終わるぞ。(麻酔医)○○先生。ありがとうございました。。。まだ覚めてないだろね」。。。手術台の上の患者様は、気道は確保されたままですが、縫い終わる頃にもうウッスラ麻酔から覚めています。耳は塞がれておりませぬ。
 
 ナースステーションでの会話、時には職員同士の言い合い、病気のこと、日常的なあまり聞きたくない冗談や笑い、術中の饒舌やどなり合いが、「二入芝居」のように誰かに聞かれていることがある。
 
ビールがうまい季節。。。うしろのテーブルが銀○員の反省会らしきビアガーデン、ふすま一枚で隔てられた座敷宴会場、奥のコーナーの笑い声と説教が出口まで聞こえてくる居酒屋などでの、医療業界ゾンビ集団暑気払いには、クレグレモ「もう一つの観客席」をお忘れなきよう、心して酔われたし。。。「別室の恐怖」の唯一の救いは、それがテレビ番組であったということかもしれない。。。

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