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「研修の掟」

夢見る掃除人 / 2007.08.11 13:17 / 推薦数 : 3
 「回診で~す。」
 「術後何日目かな?」
教授のおごそかな朝の第一声。。
 「はいっ。3日目です。」
3年目のネーベンが元気よく答える。
 「で。どうかね。」
教授はつぶやきながら、メガネの奥の視線が無意識に探す先はたいがい7年目くらいのオーベンである。オーベンを抜きにして物事が進まないのが回診である。
 「順調です。」
と、オーベン。
 「電解質はどうなってるかね。」
と、教授。新しく入ってきた1年目の研修医が、すかさず読み上げる。
「昨日のナトリウムは142、カリウムは4.3、クロールはえ~と。。。」
 ダ~レも聞いてない。オーベンが答ることはない。これはネーベンの仕事である。オーベンがネーベンをにらみつけて、
 「今朝の電解質を調べておかないと、意味がないだろが。」
 「すぐ調べます。」
と、ネーベン。1年目は、どんなにズータイが大きくても、オタマジャクシか、直径1-2ミリの仁丹くらいにしか認識されない。平たく言えば「無視される」。
 
さて、術後7日目。。。
「うまくいってるねえ。」
と、聴診器をあてながら教授がつぶやく。どうやら、オーベンに言っているらしい。当然、暗黙の了解で、
「はい。順調です。」
と、オーベン。何をぬけぬけと。。。夜中に点滴が外れて悪戦苦闘したのはネーベン。イイトコドリできるのがオーベンの特権である。
 オーベンは自分の仕事と研究?とこれからの自分の未来?に忙しく、いちいちネーベンに教える時間的(心の?)余裕がない。教えていないので、ネーベンに任せるのが怖い。怖いからいつまでたってもネーベンにやらせない。やらせない割には、やたら雑用の注文が多い。自分では動かない割には、やれてないことを探すのがうまいねぇ。ずるいねぇ。オーベンはネーベンにつらい仕事を○投げしたりする。ネーベンは殻から出てきて間もないヒヨコみたいな1年目に頼るわけにもいかない。辛い役回りだ。。
かように、オーベン・ネーベン・一年目研修医の三人担当医制は、一家の三兄弟のような構図である。教授(親)が褒めるのは長男。たとえ長男が失敗しても怒らない。一家が混乱するからだ。二男が失敗すると、親と長男の説教が待っている。三男の失敗を二男がかばうと、二男が、また親と長男に叱られる。序列が崩れるからだ。くやしい掟だねえ。
そして最後に、サルのように賢く、ヘビのように用意周到に、牛のごとく打たれ強く、サメのように度胸がつくのが、次男というのがこの世の当たり前であります。技術は見て盗め。長男は教えてくれない。いいところは絶対、長男に持ってかれる。次男は親の見てないところで苦労するしかないのだ。長男のできないところを探して開拓しろ。テガラを立てても長男の前で絶対自慢するな。テガラがpa~になる。三男にはたまにはよく教えてやれ。教えるとカシコクなるぞ。。。。
で、三男は??。。。勉強してさっさと切り上げろ。どうせ二男のいうことなんか聞きゃしないんだからね。自らの信じる道を行け!!がんばれ~!三男!!偉くなっても帰らんでいいぞ~。。。。えっ??四男?あら居たの。元気?。。。五男は新天地を探しに旅に出ることばかり考えてしまうらしい。。。というわけで、一家はぜいぜい三男までにしておいたほうがイイのかも。
さて、どこぞの研修病院のように、100数十人も1年目が集まったら、どういうことになるんでしょうね。エビの腹にびっしりくっついた卵みたいに。いくつかの科に振り分けても、回診中の病室には入れないのは覚悟しなければならない。親の声も、何言ってるかぜんぜん聞こえやしないし、手術なんか、もちろんのぞけやしない。到底ヤラシテもモラエナイ。たとえ、のぞいても長男と二男が何をワメイテいるかなんて、分かんないんだろね。術野の見えない後方でつっ立ってても無駄だよ。血のついたガーゼが頭の上に降ってくるだけだ。学生時代の見学ポリクリの延長みたいじゃつまら~ん。
んで、なになに?。。。内科はそんなことないっ?!?。。。一緒だよぉ~。
つまらんカンファに座ってないで、僻地に釣り道具持って半年でも行ってくるのもいいと思うよ。魚も釣れるようになるが、モリの刺さった足とか、生々しい心筋梗塞とか、脳梗塞とか、呼吸停止とか、目の当たりにするよ。きっと、いい勉強になるよ。有無を言わさず何でも診ないといけないからね。

 

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