夢見る掃除人 / 2007.07.30 18:03 / 推薦数 : 1
「田中様、お待たせしました。どうぞ。」
「あ、どうも。」
「今日は暑いですね」
「ええ。もう夏ですね。」
「お荷物はこちらへどうぞ。」
。。。。どこのブティックの会話でしょうね。丁寧ですね。英会話の練習文の直訳ですかぁ。。。
いえいえ、ごく当たり前のクリニックの朝の外来風景です。患者様のお名前を呼ぶ時に、「さま」付けすることに抵抗のある人がまだ多い。でも、毎日、繰り返しているうちに、当たり前になります。
前いた某病院の外来。。。
Dr.「はい。つぎ。」
Nrs.「山田さ~ん。どうぞ。」
Dr「んっ?!これか?カルテは?」
Nrs.「いえ、そっちです。急いでください。せんせ。次が待ってますから。」
患者様が入ってきても、挨拶もなしでカルテをパラパラしながら、
Dr.「んで、どうだい。調子は。」
患者様「。。。あっ。はい。おかげさまで。」
Dr.「ははは。そうか。そりゃよかった。」
よくある風景。どっちがお客様でどっちがお店かわからない、お下品なお出迎えの言葉づかいを決して研修医は真似してはなりません。名医の中のほんの一握りだけが許される?日本語です。
こんなことではやっぱりイケナイ。。。ということで、全部の外来を「さん」から「さま」に統一した病院があった。「さま」は、患者様との信頼を地道に作り上げる第一歩であるということで、事務も医師も看護師も一丸になってまとまった。
暗い中にもうっすら「トモシビ」が見えかけた矢先に、偉い先生が赴任してきた。
「田中さま~。どうぞ。」。。。と明るい笑顔のNrsの声。
「ん~???!。。。さまとはなんだぁ。そんな風におれの外来で患者を呼ぶのは俺は聞いたこともない。いいか。医療はヘリクダッテまでして、するもんじゃないだろう。」。。。と名医。さっそく各部署に「さま」付けをやめて、「さん」付けに戻すよう、文書で命じたらしい。従わなかった外来もあったが、自分の外来はとりあえず「さん」付けに戻したと、同窓会誌に得意げに書いていた。つい2-3年前に本当にあった話。
さて、どこの旅館でも「○○様ご一行」と書いてある。料亭も「○○株式会社様」と札を掛けてある。どんな領収書にも「○○様」と書いてある。そーいえば、あれは7年前、ヤクザな有限会社のボッタクリ請求書にさえ、「○○様」と書いてあった。2年前、私が自転車置き場で猫を拾って持ち込んだ「ペットのお宿」のゲージにも、「○○」様(メス猫、生後3ケ月推定)と書いてあった。
かように、今は「さま」の時代になったのでございます。
しかしつい先日、赤字に陥った病院の理事が、「赤字の原因は、人気の病院に患者が流れたからだ」と言っていた。名医でも呼んで起死回生の専門外来でも作らないことには、一度流れたものは戻らない、というのがその主張の骨子のようだった。その間。患者、患者と何回か口走っておられたが、「さん」も「さま」もキライらしい。
ちなみに、もう10年以上も前のことになりますが、自分でポンコツ車を陸運局に持ち込んで「ユーザー車検」というのを生まれて初めてやってみたことがある。オッタマゲたヨ!すべての行程をやり終えて、車検証の発行を待っていたら、係官が立ち上がり一枚一枚大きく手でつかみ上げてユーザーを次々と呼び出した。実名フルネームで。「さん」もなければ、もちろん「さま」もなかった。私の本名をあんな大きな声で。しかも呼び捨てで。。「夢見る掃除人!!!」
車検証はちゃんともらえたけど、ほんとに恥ずかしかったよ。
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