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「産業医のジレンマ」

夢見る掃除人 / 2007.07.23 19:09 / 推薦数 : 5
 「企業健診で解離性大動脈瘤が見つかったことがきっかけで、肉体労働の派遣労働者が配置転換の末、うまく事が運ばず結局、労働者は退職に追い込まれてしまった」。。。心痛める産業医のブログを最近拝見した。手術が必要なければ、血圧のコントロールをしながら今の仕事を続けることも可能であり、退職という最終選択を回避できたかもしれない。。。しかし破裂の危険を考えると、「様子を見ましょう」という単純なものでもない。。。産業医としてどこまで助言でき、どこまで責任を負うか。。。
疾患のリスクを喚起し、配置転換や休業を人事部に助言することで、労働者に一方的に不利な結果を必ずしも招くわけではないが、過重労働でしか成り立たないような仕事が世の中にたくさんある。いつなんどき体が焼け焦げになったり、埋もれたり、コナゴナになってもおかしくない危険な仕事が山ほどある。1日数回はここぞと腰を踏ん張らなければ全身やけどというてんぷら料理店もある。無症候性といっても、解離性動脈瘤を抱えて、中目黒のよさこいの団長はやはり無理です。大声張り上げて雨の日のふんどし一丁、気づいてみれば丸裸の馬頭神社神輿担ぎは、今年は辞めてもらいたい。
「先生、頼むから人事に言わんでくれ」という労働者。
「専門医からの診断を詳細に開示してもらわければ配置転換も止むを得ない。」と人事部。
目を点にした労働者と、眉を八の字にした人事とのケンケンガクガク、ノノシリアイのはざまで、産業医は下手なことは口に出せない。。。「結局、どっちなんですか!?!」双方が産業医に矛先を向ける。。月13-4時間で請け負った、気楽なかけもち仕事のはずが、とんでもない渦巻きになる。
 かつて、労働者の健康被害に目もくれない劣悪な労働環境、労働条件を放置して、さまざまな重大な結果を招いてきた過去の事例の反省から生まれた産業医制度であるが、ややもすると産業医は労使関係に立ち入るぎりぎりの線で仕事を余儀なくされるだけに、なおさら中立的立場が求められる。疾病を理由にとした休業や配置転換の助言は、労働者への不当な差別にならなよう配慮しつつ行われる。休業が長引いたり配置転換に反対して調整ができないときも、意にそぐわない無理な勧告と取られないように産業医は常に慎重でならなければならない。しかるに、昨今の過労死・自殺事例では、産業医も連座で提訴されることがある。これは、労働者にとって産業医は企業の経営サイドの一員であるという誤解によるものかもしれない。労働者の前に、人事と産業医が同席すれば、かなりのプレッシャーであることは間違いない。労使間に挟まれて苦労する産業医のジレンマは、その雇用関係の不自然さにあるかもしれない。すなわち、産業医は中立であるといいながら、実は企業に雇われているからです。
産業医は企業から直接報酬を受け取るのではなく、健康保険制度などで間接的に報酬を受け、自由に物が言えるといいかもしれない。
さて、ご存じのように、病院には勤務医の健康を守り、勤務医の過重労働に注意を促す公平中立な立場の産業医らしきものがいない。いまや、病院は、「時代に取り残された過酷な戦場」と言っても過言ではあるまい。当直明けの派遣アルバイト先に車で向かう途中、死亡事故にあった研修医、24時間拘束に近い小児科医の過労・ストレスの果ての自殺。。。
エムスリーのブログを概観するに、勤務医の過酷な労働と無制限責任、いつ巻き込まれるか分らない刑事・民事訴訟への恐れと、行き先の見えない待遇の悪さ、強い看護師軍団の要求と無関心、時間外の書類の山とこまごまとした病棟からの呼び出し、政治に見捨てられた果ての医療崩壊。。。もうヤッテラレナイ。。。ツモリツモルと節度・礼節を忘れて、ここまでわめきちらすかという勢いの最近の若手医師や中堅医師のウツウツ・ジクジクを見るにつけ、勤務医の精神衛生と健康を守り、過労死・自殺を未然に防ぐ、産業医ならぬ「病院医」が必要になってきたと言うべきかもしれない。

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