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「今日に備えて、3日間アルコールを抜いてきたんですよ」
先日手術をした青年の第一声だった。
なかなか殊勝な心がけである。
が、
正直言って、彼の努力はあまり意味がない。
確かに、常日頃アルコールを飲んでいると、アルコール分解酵素が誘導されるので
麻酔薬の分解速度も速くなり、効き目が短かくなる。
ただ、アルコール分解酵素の量が減るのには数週間はかかるので
3日くらいの禁酒では効果のほどはいかばかりか。
さらに、局所麻酔の効果が切れるのは、麻酔薬が血流やリンパ流によって拡散され
局所濃度が低下するために起こってくるためなので、
全身的な代謝能はあまり関係ないのではないかと思う。
怪我をして、傷を縫うときに麻酔が効かず
「あなた、お酒飲むでしょう」
といわれた経験がある方もいると思うが、
実は、麻酔薬を注入する皮膚の深さが不適当なために、効きが悪い場合が多い。
手術の前後に、「お酒を飲んで良いですか?」と訊かれることは割と多い。
手術直後に飲むと出血しやすくなるために、これは避けた方が良いと思うが、
基本的には、深酒をしなければ適度な飲酒はかまわないと思う。
むしろ、創部の血流が適度に上昇すれば、創傷治癒(傷の治り)に
有利ではないかとも思う。
ただ、酒飲みの性として、適度な量でやめることが難しいのは判っているので、
「晩酌程度は良いけど、飲み過ぎると傷がうずくよ」というようにしている。
そうすると大半の人が2〜3日は控えているようだ。
不思議なことに、術後の飲酒について訊いてくる人は多いが、
喫煙に関して訊いてくる人はいない。
傷の治り方という観点からすると、喫煙の方がはるかに問題なのだが。
傷が治るためにはそこに傷を修復する物質が必要になる。
それを作るためには十分な栄養素と酸素が必要不可欠だ。
そしてその二つを運んでくるのが血液なので、
創傷治癒にとって血流というものが非常に重要となる。
アルコールは、血流を増加させるので、飲み過ぎなければ、創傷治癒に役立つと言えるが
喫煙は、ニコチンの作用で血管が収縮し、創傷治癒には悪影響を及ぼす。
傷の治りが悪ければ、その分傷跡も残りやすくなるので
術後にくつろいで一服なんぞやると、せっかく綺麗になるためにやった手術でも
自分で傷跡を残しているようなものだ。
以前、勤務医時代、スタッフの二重、否、睫毛内反の手術をしたことがあった。
飲み友達の一人であった彼女は、ヘビースモーカーでもあった。
「先生、お酒とタバコは?」
「術後の皮下出血(青タン)を少なくしたいのだったら禁酒2日、
傷跡を綺麗にしたいのだったら禁煙3ヶ月」
「エ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
こんな会話をし、手術は無事終了。
手術結果は良好で、術者も患者も満足し、数ヶ月。
「先生、そろそろいいかな?
「いいかなって、何が?」
手術をしたことも忘れた頃に、彼女が突然質問した。
「何がって、先生が言ったんでしょ!禁煙3ヶ月!!」
「・・・・禁煙3ヶ月って・・・・・・っ!!」
正直言って、そういった当人が忘れていました。
内心、ヘビースモーカーの彼女に禁煙が出来るはずもないと思っていたし、
どうせ出来ないなら思いっきり長くいってやろうと、無理な数字をいったのでした。
「・・・3ヶ月、本当に禁煙してたの?」
「そうよ、せっかくやるんだったら傷跡綺麗な方がいいじゃない」
「・・・・いや〜〜実は、・・・」
と、ここでネタ晴らし。
「ひど〜い!!吸いたいのを我慢して、この3ヶ月必死に頑張ったのに!!」
「まあ、全くのでたらめでもないし、健康のためにはよかったんだから、
いっそのことこれを機会に禁煙続けたら?
「絶っ対に、嫌!!吸える日のことを楽しみに頑張ってきたんだから!!
今日から、3ヶ月分まとめて吸ってやる!!」
超党派の国会議員達の中で、タバコ一箱1000円の意見が出ているそうだ。
予想税収が9兆円。
消費税を上げるよりも、はるかに国民の同意は得やすいだろう。
肺ガン、舌ガン、喉頭ガン、咽頭ガン、食道ガン、肺気腫、etc。
医療費は明らかに減るだろう。
最近話題の地球温暖化ガス、Co2も削減される。
タスポなどという、小手先の方法などとらなくても
一箱1000円もすれば、未成年者はそうそう手が出ないだろう。
愛煙家の方々のブーイングと悲鳴が聞こえてきそうだが、
成り行きが楽しみな話題だ。
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