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2008.02.29 19:37 |  診療  |  紅のパグ  | 推薦数 : 1

遠くの頂

外科系の人間が開業するとき、一番心残りになるのがメスだろう。

開業すると、今までやっていたような手術は出来ず、

それまで心血を注いで(?)磨き上げてきた技術を捨てることにもなるわけだから。 

私も例外ではなく、開業を決意した後でも「本当にいいのだろうか」という逡巡があった。

 

もちろん今でもメスを捨てたわけではなく、細かい手術はやっているし、

ものによっては、開業してからの方がよりデリケートな手術をしている。

中には、他の病院で大手術になるようにいわれ一旦断念したものの

諦めきれずにここに来て、外来での、通院しながらの手術で治したケースもある。 

ただ、どうしてもこの環境で出来る手術には限度がある。 

 

この出来ないという手術は、

全身麻酔や入院が可能ならば、技術的には出来る手術と、

端から技術的に無理、という手術の二つがある。

 

前者のようなケースが来ると、環境さえあれば可能なのに出来ないという歯がゆさがある。 

開業当初は、その歯がゆさ故にフラストレーションが溜まったが、

最近は「・・どうせ大きな手術は疲れるし、まあ、いいか・・」

という心境に達しているので、フラストレーションもない。

しかし、むしろ以前やったことがない手術がの方が気になる。

 

この時期になると、形成外科学会のプログラムが送ってくる。

どの演目を聞きに行こうか、タイトルを見ていると

新しい考えやテクニックの手術の発表を目にする。

そんなとき、あのまま勤務を続けていたら、大学にいたら、

今このレベルの手術をやれているだろうか、という思いがよぎる。

そのレベルに達するまで精進しなかった事への後悔だろうか、

単に、新しもの好きなだけだろうか。 

 

別に新しい手術や難しいテクニックほどすごいわけではない。

特定の内容に関しては、大学以上の治療をやっている自負もある。 

だが、遠くから眺めることしかできない尾根は、

今登っている山より、魅力に満ちあふれて見える。 

 

ただ、手が届かないからこその憧れなのかもしれない。 

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