少子高齢化が進み家族の形が変わってきた。昔と違って介護は嫁が看るのが当り前ではなくなった。家族介護が息子や娘が担い手になる例も目立つ。いまの介護保険制度は嫁が看るのが当り前など家族介護の風潮が残っているときに設計された。いまでさえ同居家族がいると生活援助サービスは受け難い。1人ッ子世帯も多くなり仕事をしながら親の介護とか育児と介護を同時に抱える人もいる。介護を理由に離職・転職する人も年々増え続けている。復職、再就職もままならない。特に男性は地域社会とのつながりが薄い。孤立しがちで親の虐待が起きないように支援すべきである。
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朝から何となく頭が重い。目の視力が落ちたみたいに周りが暗く感じる。肩も凝っており両手で代わる代わる揉みほぐして見る。胃が詰まった様な不快感もある。首を回して前後に屈伸した途中で急に目の前が勝手に左右に揺れだした。周期的に眼が一方向に引きつけられる感じになり次の瞬間元に戻る。これは眼振だと自覚した。耳が聞こえにくいわけではないし今の所、吐き気もない。めまいについては一週間ほど前に講演会で勉強したばかりである。これは良性頭位性のめまいと自己診断した。このまま良くならないと今日の診察が出来なくなる。そちらの方が心配に成ってきた。予約の健診者もいる。わざわざ仕事を休んでお腹をすかしてやってくるので断る訳にもいかない。祈るような気持ちで収まるのをじっと待つ。周りがぐるぐる回るようになり、吐き気も出てきた。朝食はまだだったので吐くものもない。胃液が押し上げてくる。一か八か講演でならった浮遊耳石置換法Epley法を試してみることにした。視点が左に動いては元に戻る感じなので左眼振と判断して左に首を回し仰臥しばらく維持させ次に右を下にしてしばらく座位になるのを繰り返している内に寝入ってしまったらしい。目覚めてさっきまでめまいと格闘していたのを思い出した。起き上がり恐る恐る目を開けてみる。何も起こらないし吐き気もない。Epley法が効いている。何よりも今日の診療に穴が空かないのが嬉しかった。外来受付けから患者さんが待っているとの連絡が来た。腹に触らない様にと好きな羊羹を口に入れ恐る恐る体を確かめながら外来に向かった。
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介護サービス利用者数は392万人。利用者1人当り月額16万753円。総介護サービス費用7兆5620億円。内訳。訪問介護などの居宅サービス3兆6276億円、特別介護老人ホームなど施設サービス3兆2916億円、グループホームなど地域密着型が6427億円。2009年度は前年度比7.9%増の過去5年間で最も高い伸び。2009年4月の介護報酬改定率3%が影響した。2003年、2006年度はいずれもマイナス改定であった。
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通常の季節性インフルエンザの重症例には高齢者が多い。新型の場合は年齢を問わず基礎疾患のある人に重症化が見られる。高齢者で基礎疾患が有ると非常にリスクが高くなる。アメリカの報告では入院例は65歳以上の人は7%と少なく小児がむしろ多かった。70%に合併症あり呼吸系が37%、免疫不全17%、心疾患と妊婦が17%であり案外多い。ワクチンの優先順位に心疾患は入っているが高血圧のみだけでは入らない。急性心筋梗塞による死亡率はインフルエンザの流行時に1.3倍に上昇、狭心症、慢性心疾患でも1.1倍に上昇した。一昨年のランセットに載った論文にインフルエンザの流行と心筋梗塞の発生頻度は関連する事。心筋梗塞がインフルエンザで誘発されるメカニズムはウイルスが上気道感染から急性の重篤な炎症反応が体内に生じそこで産生されたサイトカインが、もともと起こりそうな状態の動脈硬化プラークの不安定化・破綻を引き起こし血栓イベントが生じる。またインフルエンザウイルス自体も心筋炎を引き起こす。ウイルス性心筋炎は1番目がコクサッキ―ウイルス、次にアデノウイルス、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、エコーウイルス、そしてインフルエンザウイルスの順に起こしやすい。ウイルス性心筋炎は自覚症状がなく気付かれずに経過するものから慢性化して拡張型心筋症に移行するタイプ、急激に重症化し補助循環を必要とする劇症型心筋炎もある。診断には先行する上気道の感冒様症状に加え、胸が痛い、頻脈あるいは徐脈の所見が有り、単なる風邪とだけでは説明がつかない場合に疑い、心電図を撮ってみるとか、聴診で心膜摩擦音friction rub が聴取されたり過剰心音が聞かれてエコー検査をするとか、心電図でわずかでもST上昇や房室ブロック等異常が見つかれば心筋炎の可能性を考える。インフルエンザを発症し発熱から心筋炎までは1~2日の短い期間である。血清学的検査やバイオプシーの検査は確定診断には有用であるがペア血清で検査で期間がいる。バイオプシーは侵襲的であり軽症の場合には躊躇する。治療に関しては保存的な療法になるが注意しなければならないのが劇症型心筋炎で、感冒様の症状から急にさまざまなタイプの不整脈、低血圧、心不全状態に陥る。診察するとⅢ音ギャロップを聴取し、頸動脈怒張、肺胞性クラックルの聴取など心不全兆候が出てくる。そのような場合は循環器の外来というレベルではなく、ICUのある病院に移送し循環補助手段が必要となる。この型は若い人に多いが年齢層は広い。心臓病を持っている人へのワクチンの接種が合併症を起こすのではないかと危惧する向きが有るがインフルエンザによって心臓病は重症化するのだとの説明を行い納得してもらう必要がある。リスクとベネフィットをしっかり話して納得の上で接種する事が大切である。重症で心不全を繰り返す人はしっかり2回接種する。
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インフルエンザウイルスは特異的に気道粘膜細胞に感染する。そして炎症反応を起こしサイトカイン反応が生じる。その病態がARDSであり脳症、心筋炎の形をとる。その後、下気道炎に発展し喘息発作やCOPDの憎悪を起こし肺胞細胞に至ると細菌混合肺炎の形を取る。新型では入院の90%は15歳以下の小児で、死亡するのは壮年、高齢者、小児それぞれ3分の1である。入院の60%に基礎疾患があり小児では呼吸器疾患である喘息が大半を占めている。入院の理由は83%が呼吸障害で合併症として肺炎が多い。それはウイルス肺炎と気道に粘液栓子の詰まった気管支炎が多い。喘息を持っている場合、発症前喘息の重症度と肺炎の重症度とは相関しないので注意が必要である。高齢者ではCOPDが多くなるがインフルエンザに罹ると気道感染を起こし憎悪の原因になる。またインフルエンザ肺炎にも成り易い。2重の注意が必要である。インフルエンザ肺炎になると季節性インフルエンザでも20~30%に近い死亡率が有る。新型では特に肺に親和性が強く肺炎を起こす人が多い。肺炎を起こすと極めて予後が悪い。インフルエンザ肺炎はウイルスが直接肺胞上皮細胞に感染する。全肺炎の半数から3分の1、特に若い人はウイルス肺炎が多い。高齢者ではウイルスと肺炎球菌などの細菌が同時に感染する混合肺炎の病型やインフルエンザが良くなった後免疫能の低下で二次的に細菌性肺炎を生じる二次性細菌性肺炎を起こす。外国の特にメキシコでの報告によると新型の死亡例の大半が30代を中心にした壮年層の重症ウイルス性肺炎である。剖検では肺からは細菌は全く検出されてはおらずび漫性肺障害のARDSに見られる所見である。アメリカの報告では成人肺炎の31%がICUに入室25%が人工呼吸をしている。これはアメリカでは重症になってからタミフルが処方されている。死亡例の110例をみると48時間以内に抗ウイルス剤を投与されたのは26%に過ぎない。妊娠をしている人はインフルエンザに罹り易く死亡例は肺炎とARDSを続発していたとの報告も多い。インフルエンザ死亡例は肺炎で亡くなる。アメリカCDCの死亡例の剖検によると平均31歳、29%に細菌感染がみられその半数は肺炎球菌の肺炎であった。インフルエンザ対策として肺炎球菌ワクチンの接種が奨められているが肺炎を起こしたらウイルス肺炎か細菌性肺炎かの判定よりも早期から抗インフルエンザ薬と抗菌剤を使う事が重要である。季節性インフルエンザ肺炎では起炎菌が56%で検出されその半数以上は肺炎球菌であった。発熱したらすぐ医療機関を受診し治療を受ける早期診断早期治療が第1であり少しでも様子がおかしかったらレントゲンを撮り肺炎の有無をチェックしてもらう事が大切である。
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疫学的に20歳以上の人々の新型インフルエンザによる入院患者で基礎疾患を持つ人は70%である。最も多いのは呼吸器疾患、二番目が糖尿病14%、慢性心疾患8.6%、慢性腎炎が7%である。新型は若い層に多く総数の9割が20歳以下である。全体でみると基礎疾患のない人が69%、そして呼吸器疾患以外は0である。トータルで見ると背景疾患、基礎疾患の比率が小さくなる。成人に限ると前述の7割になる。ハイリスクとしては糖尿病、腎疾患で、透析を受けている人、腎移植を受けていたり、IgA腎炎、ネフローゼで免疫抑制製剤を使っている人や糖尿病性腎症で維持透析患者さんも含まれる。今回のインフルエンザは呼吸器症状が特徴的で重症化パターンは肺炎で免疫低下状態がベースになっている。最終的には脳出血、多臓器不全、心不全と云う形をとる場合が多い。ワクチン投与はそのようなハイリスクな人に最優先される。特にeGFRで15~30ml/分/ 1.73平方メートルなど高度の腎機能障害者は合併症を勘案しながら接種する。2千万人を超え国民病といわれるほど多い糖尿病は程度がに差があるし合併症が多臓器、心臓、呼吸器、腎臓に生じている可能性も強い。インシュリン治療を要する人は罹患機関、重症度からハイリスクでありコントロール不足、未治療もハイリスク群に入る。これらの人に対する治療には、なるべく早期にタミフルを投与するのが原則である。キットでA陽性でなくても臨床症状からインフルエンザとして投与する。透析患者も同じであるがタミフルの投与量はタミフルを1日1カプセルを5日間使う。5日後も症状が続くようであればまた1カプセル追加する。前述したがクレアチニンクリアランス10~30では1日1カプセルに減量が必要である。30以上であれば2カプセルと考える。

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高齢者は通常の季節性インフルエンザに罹りやすいし、罹患した場合は重症化し易い。今回の新型には罹り難くかったが一旦罹ると重症化や死亡する事も多い。新型は若年者に多く発生した。妊娠、肥満がリスクファクターとして挙げられているがメキシコにおいては妊婦の年齢は10代の13,14,15才の少女が多く、正式に結婚して妊娠しているわけではなく、貧困のため医療機関に掛からないなどの社会背景があるのに、その事を抜きにした実態が統計としてWHOに伝えられた。日本では一般の者や妊婦の重症化や死亡者数は外国に比し少なかった。現実的には抗生物質の予防的投与も行われていたので新型での重症化が2次感染からのものではない事は推定できる。また肺炎球菌ワクチンの接種が奨められているがそれが重症化や死亡に関係したかは分からない。今回は流行の第1波に対してワクチンの生産が追いつかなかった。それ故、日本では抗ウイルス剤の使用が重要視され医師たちが抗ウイルス剤を有効に使った。ウイルスの増殖を抑えるためには発症後2日以内に使うべきで、日本はこれまで鳥インフルエンザ用に備蓄していた抗インフルエンザ薬を有効に使えたのである。早期投与で重症化を防ぐ事が出来た。高齢者は慢性呼吸器疾患を持っている場合が多くインフルエンザに罹りやすいしその基礎疾患も憎悪する。従って基礎疾患のコントロールとインフルエンザの早期治療の両方が大切である。
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医局の机の上に二つのリングを2段に重ねた鉛筆立てが置いてある。一番上のリングには火消の纏の馬簾の様に糸が何本も結んで垂れている。クリニックには週二回、2人の外科医が診療の手伝いに遣って来て呉れる。どちらかの医師が診療の合間に糸結びの練習をしたのだろう。それを見るたびに大学の外科医局に在籍していた昔を懐かしく思い出している。私はもともと心臓外科医であるが今は外来で外傷処置程度の診療しかしていない。鏡視下手術が大勢を占める現在はどのようになっているかは知らない。私の時代は外科の修業はまずは鈎引きと糸結びから始まった。止血、胃腸の縫合など糸の結び方が悪いと、術後出血、縫合不全など合併症が生じ大変な事になった。特に心臓手術では魔術師的早業で糸結びをしなければ心臓を止めている時間が少しでも長引けば術後に成績が悪くなる。人工弁一つを縫い着けるのにしっかりともつれないように200回ほどの糸結びをする必要がある。外科結び、片手結びなど結び方にも色々ある。場面、場面で使い分けなければならない。上手になるよう暇があるとポケットに忍ばせた糸を引きだしのつまみ等に引っ掛けて練習をした。糸にも用途により種類がある。時間とともに吸収される羊の腸から作った糸や化学合成糸に吸収されないナイロンやテフロン糸。撚り糸とそうでないテグス状のフィラメント状のもある。心臓血管手術に使う糸は非吸収糸である。血管、心臓は術後すぐに機能しなければならない。また壁には相当な血圧が掛かる。しっかり固定されていなければ出血し、人工物は外れてしまう。一昔前、テレビで「 刑事コロンボ」 と言うシリーズものの推理ドラマがあった。その中に「溶ける糸」と題する一章があった。あらすじは大学病院の心臓血管外科医局内で起きた話で、何かにつけ主人公の助教授にとっては出世の妨げとなっていた上司の教授が心臓を悪くして人工弁置換術をしなければならなくなった。願ってもないチャンス到来と巧妙に完全犯罪を装って教授を殺害する方法を考え実行したのである。それをコロンボが見破る。ヒントは手術のときに使われた糸が鍵になる。教授の悪くなった心臓弁を切除し、代わりに人工弁を縫いつける。縫いつける糸は非吸収のナイロン糸でなければならないのに吸収糸を使う事を考えた。助手の看護師が渡したナイロン糸を術衣のポケットに隠し持っていた溶ける糸と取り換えたのだ。溶ける糸を使うと手術後しばらくは持ちこたえる。しかし吸収糸ではだんだん溶けていき数日後に人工弁は完全に外れ教授は死んでしまった。術後しばらくの間、心臓機能は回復し、外目に手術は完璧に行われ高に見えた。術者に責任は無い。まさに完全犯罪成功とほくそ笑んでいる助教授の犯罪をコロンボが見破る。洗濯に回された術衣のポケットにナイロンの糸が残っていた。犯罪者の考えることは洋の東西を問わないらしい。医局の鉛筆立てを見ながら昔を懐かしんでいる。
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