A型インフルエンザは、もともと渡り鳥、水鳥の持っているウイルスである。主にカモのインフルエンザウイルスはカモに感染しても病気を起こさない。お腹の中で増えて便とともに湖に排泄されそれをカモが食べて感染する。それが鶏に伝搬する。そこから人や豚などの動物に直接、間接的に入り人獣共通感染症となり、人の間で増えやすいウイルスが選ばれて新型インフルエンザになる。20世紀最大の流行は1918年~19年のスペイン風邪である。はっきりした起源は解ってはいないが恐らくアメリカのカンザス州の豚から発生したのではないかと言われている。2009年から流行しているH1N1の起源はスペイン風邪と共通の豚のウイルスと考えられている。スペイン風邪とはまったく同じではないが非常に近縁のウイルスで人の間で流行すると同時に豚の世界でも流行した。それが北アメリカの豚の間で90年間に渡り綿々と継代されて来た。豚は半年で出荷され感染して免疫が出来ても、残された豚の全体からすればウイルスに対する免疫への圧力が無いので抗原変異が起こらない。それ故、現在、存在するウイルスも90年前のそれと抗原的に近い。1990年代に、この北アメリカのウイルスにヒト香港型ウイルスの遺伝子の1本に、鳥由来のウイルス遺伝子の2本の、3つの起源の異なるインフルエンザウイルスの交雑ウイルスが出来た。そして、それが豚の間で、10年ぐらい継代されて流行し、人の間でも感染したことが記録されている。しかし非常に弱いウイルスであり、人から人には広がらなかった。そしてインフルエンザの専門家達もこのウイルスが新型になるとは想定もしていなかった。ところが北米の食肉関連企業の養豚施設のあるメキシコで広がったのである。今回の新型インフルエンザはこのスペイン風邪の子孫の交雑体ウイルスにアジア・ヨーロッパ系統の豚のウイルスの遺伝子が2本入れ替わると云う複雑なウイルスで人から人に感染する性質を持っている。高齢者が罹り難いのはスペイン風邪の子孫であるH1N1のウイルスは大流行後も40年間に渡って人の間で流行したので、そのウイルスに感染し、その免疫の記憶が残っていると考えられている。その後、1957年新型インフルエンザのH2N2アジア風邪が出現、11年間に渡って大流行して、1968年には香港型H3N2が出現した。いまでも季節性のインフルエンザとして流行を繰り返している。今回のウイルスは豚由来であるけれども、人の中では正確には新型とは言えないけれども毎年流行しているソ連型のH1N1と亜型は一緒であり、豚の間では兎も角、これまで人の間で流行していなかったウイルスがヒト型となって人の間で流行したという意味では新型と位置づけても良いと考えられている。70~80%の人が感染して、免疫を持てば今度は季節性のインフルエンザとして毎年流行していくものと考えられる。2009年は新型のインフルエンザが主流で95%を占め香港型とソ連型の季節性インフルエンザはほとんど流行しなかった。今後はソ連型は消えていくと考えられる。香港型H3N2はこれまで大きな抗原変異を繰り返しており、季節性インフルエンザのH3ワクチン株と抗原性と異なる種類のH3ウイルスが免疫を潜り抜け生き残り流行する可能性がある。現在はほとんどの人が豚由来の新型インフルエンザH1N1に注意が奪われ鳥の問題は報道されなくなった。今も鳥の間では独立して流行が広がつている。鳥の間のインフルエンザウイルスを完全に駆追できないし新型ウイルスの発生も繰り返される。現在も鳥から感染した人の患者も出ておりH5N1由来の新型インフルエンザが出てくる可能性は全く減っていない。
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