日本医師会長の挨拶
暑い中、大雨や地震災害など様々な世情ですから、皆さんのご心痛、御多忙を御察し致します。昨今の医療崩壊での医療再生には地域に根ざした有床診療所の医療資源を活用する事が必要不可欠であると考え今回、日医で初めての有床診療所担当理事連絡協議会を開かせていただきました。今年も九州で全国有床診療所協議会が開かれ私も参加させていただきました。種々の問題が生じていることは充分承知しています。日医としては平成14年に有床診療所検討プロジェクト委員会を設置し、平成18年からは常設委員会として有床診療所に関する問題に取組んで参りました。有床診療所は休日、昼夜の救急医療に対応し、外科手術や分娩の半数を取り扱っています。在宅医療が推し進められているなかで在宅医療を担うと共に実際に、在宅では看れない患者さんの入院も引き受ける地域密着型の医療を行っています。このたび日医では現況を把握するために厚労省と一緒に全国の有床診療所の現地視察を行いました。今日はその報告もなされる予定ですが、全ての有床診療所の先生方は多様な住民のニーズに熱意をもって答えて居られます。一方で有床診療所の運営は熱意だけでは続けられず無床化など年々1000ケ所の施設が減少しています。有床診療所の減少は地域の医療提供体制に混乱を来たして、医療崩壊の要因の一つになっている事は明らかです。日本医師会としては有床診療所の機能を存続させその機能を活用する事が地域医療の再生に時間的にも経済的にも有効であると考えています。今日は厚生労働省の医政局総務課、保険局医療課の方にも出席して頂いております。出席の皆様方には有床診療所の適正な評価、その活用に向けた忌憚のない御意見を賜りたい思います。
「有床診療所を巡る動向について」
今村定臣常任理事
福岡県、和歌山県、広島県、北海道の複数の有床診療所を厚生労働省と合同での現地視察でのヒアリングと実態調査から得られた有床診療所の問題点、現場の意見や要望について報告します。診療報酬の問題では外来収入で入院部門の赤字を補填しており、人口の少ない地域ではその外来収入も少ない。介護施設より手厚い医療介護サービスをしているにも拘らず報酬評価が低い。患者さんは負担の少ない有床診療所への入院を希望してなかなか退院させられない。暴力や認知症、医療処置など手間のかかる患者は介護施設が断るなどがある。要望としては意欲のある医師が複数で経営が出来たり次世代に自身を持って継承できる診療報酬体系にして欲しい。医療療養病床での急性憎悪に対しての一般病床へ転用が出来る柔軟な運用にして欲しいなどの要望があり、またコストが合えば地域のために続けられるとの意見もありました。看護職員関係では看護職員の不足、特に夜勤者不足は深刻な状態です。若い人の就職が殆どなく高齢化も問題となっています。診療報酬が低いために病院と同じ賃金を提示出来ない事も理由の一つです。一般病床と療養病床の看護配置は個別でなく一活合算にして欲しい。また患者さんの家庭環境や財政的な問題を考慮した病院から在宅医療の中間施設として有床診療所を利用できる体制を作って、有床診療所を増やす等の提案がありました。
有床診療所に関する検討委員会検討経過について
有床診療所問題検討委員会 大道久委員長
平成14年に日医は有床診療所検討プロジェクト委員会を立ち上げました。有床診療所の将来構想についての会長からの諮問を受け検討を始めています。48時間規制の運用見直しや入院基本料など診療報酬の問題を取り上げています。平成16年には「有床診療所の今後のあり方について」の諮問で48時間規制の撤廃を厚労省に要請し有床診療所の実態調査を開始しました。平成18年にプロジェクト委員会は常設委員会となり、「地域医療における有床診療所の役割」についての諮問を受け検討に入りました。この年には医療改革関連で医療法が改正され48時間規制が撤廃されました。そして平成20年度医療費改定に向けて緊急要望書を提出しました。平成20年には「有床診療所の発展と安定運営に向けて適正な評価に向けた方策」の諮問に対し有床診療所入院基本料のあり方を日医総研の実態調査のデータをもとに検討を進め現在に至っています。見直しの方向性では入院基本料について底上げか上位基準の加算かで議論になっています。その中で有床診療所を機能類型し種別化する事には疑義が上がっています。医師の複数配置、上位配置加算の要望もあります。現在の重要課題は看護配置基準と入院期間の逓減制の見直しです。委員会では関係者を現地視察させ有床診療所の社会での役割について明確化させその認知に向けた広報活動を行っています。今回の介護報酬改定では有床診療所の一般病床でのショートステイ算定が可能になりましたが、手続きが複雑過ぎるので国、県に簡素化を要請しています。また会員に診療所後期高齢者医療管理料の活用を促進しています。他には48時間規制の撤廃により有床診療所病床の地域医療計画の基準病床に算定され過剰地域での新規開業参入が出来なくなった事も問題にしています。委員会として小石川養生所跡を視察して参りました。気を新たにして歴史的に永い経緯を誇る有床診療所を新時代に向けて立て直し、社会に認知評価を受け活用される事が委員会としての願いです。
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