脳血管性認知症で要介護5に認定されている85歳男性の在宅医療をしている。この方は10年前、左脳梗塞を起こして左半身不全麻痺が残っている。また3年前には再梗塞を起こし、それを契機に物忘れが酷くなった。理解および判断力が悪くなり奥さんが付きっ切りで世話をしている。遠くに住む息子さんも時々帰ってきて手伝っている。2人で少し長く介護していた時期があった。その間は患者さんは声も出さず表情もさえなかった。ただただ生きているだけの感じを受けた。そのうち息子さんが都合で我が家に帰る事になり奥さん独りで介護する事になった。所がそれを切っ掛けに患者さんの様子がまるっきり変わった。見違えるように反応が良くなった。この事を奥さんにそれとなく聞いてみた。なんてことは無い。夫を自分の赤ちゃんのように頬ずりし抱きしめてあげる。そうすると安心して穏やかになり言葉も出る様になったという。そして自分の惨めさに死にたいとまで訴えたと話した。認知症の人は自分の記憶が失われる事に不安を覚えても訴えられないらしい。奥さんは息子に遠慮して夫への接触を控えていたのでコミュ二ケーションが取れなかったのである。
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