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 感染症危機管理対策協議会    

平成21年3月4日(水)14時~16時

場所:日本医師会館小講堂       

司会:飯沼雅朗(感染症危機管理対策室長)

1.唐沢祥人日本医師会長挨拶(要旨)

都道府県医師会危機管理担当の皆さんに於かれましては日ごろの感染症対策のご尽力に感謝致します。日本医師会では平成9年に感染症危機管理対策室を設け情報の共有と迅速な対応が出来るように活動しています。一昨年は若者の間に大規模な麻しん流行があり、昨年4月からは第3期、第4期の麻しん定期予防接種が開始されました。しかし充分な接種率の向上は得られていません。また新型インフルエンザの発生も危惧されております。そして肝炎対策のウイルス検査やインターフェロン治療も国の思惑通りには普及していない状況です。今日は厚生労働省から3人の講師をお招きして、これらの問題の状況報告をしていただきます。今日の協議会の成果を踏まえ各地域での感染症対策が混乱なく円滑に実施されます様に御協力をお願い致します。

2.報告

(1)麻しん対策   (梅田珠美 厚生労働省健康局結核感染症課長)

平成19年には10~20代の大学生を中心に麻しんの大流行が有りました。麻しんは肺炎、脳炎など重篤な合併を起こす感染症です。国は同じ年に流行阻止を目指して麻しん排除計画を策定しました。平成20年4月から5年間限定で第3期の13歳相当、第4期の18歳相当に麻しんワクチンの追加接種を開始しました。接種率95%を目標としていますが平成20年12月時点での接種率は第3期が66.4%、第4期で58.11%と低迷しています。

平成20年の麻しん患者の発生数11、007人で、年齢分布が15~19歳26.4%、10~14歳16.7%、0~4歳15.3%、20~24歳が12.8%を占めました。そしてワクチン未接種歴者が44.6%、一回接種26.6%、2回接種1.2%でした。

麻しん予防接種については昭和51年に1回のみ定期接種を生後12月から72月の間に、平成6年の改正で生後12月から~90月の間にする事が決まりました。世界保健機関は2回接種を推奨しており日本も平成18年から第1期を生後12月~24月の間に第2期を小学校入学前に行う2回定期接種にしました。平成19年の流行を受け平成20年から第2期接種を受けていない13歳と18歳に補足接種を行う事に成りました。その理由は免疫のつき損ねる率が5%に生じ、また一回接種のみでは自然感染に曝されなければ年月と共に発病阻止レベル以下に抗体価がさがる事や未接種者が罹患しないまま成長している等が考えられるためです。改正では女子に対しては予診時、妊娠の有無を確認する事、これまでの保護者の同伴については事前の説明と了解があれば必要ないになりました。発生時の早期対応のため、これまでの定点報告から全ての医療機関が患者の発生状況を保健所に報告する全数報告にしました。厚労省としては製造販売業者と連携してワクチンを確保すると同時に国民に情報提供と予防接種環境づくりを文部科学省と連携して行います。特に特定の日や、定期健康診断時、修学旅行時等を利用して罹患歴・予防接種歴を確認した上で接種を勧奨してもらいます。また都道府県は麻しん対策会議を設置して発生動向、接種率、副反応の事例を把握すると共に住民に情報提供します。市町村では住民台帳での定期予防接種歴をデーター管理し、本人の求めに応じて容易にそれを確認できる体制を作る事が望まれます。

(2)新型インフルエンザ対策の概要

(難波吉雄 厚労省健康局結核感染課新型インフルエンザ対策推進室長)

現在H5N1H7型など世界各地の鳥の間で流行っている鳥インフルエンザが変異して新型インフルエンザの発生するリスクは確実に高まっています。新型インフルエンザが蔓延しパンデミックになった場合、過去のスペイン、アジア、香港などの新型インフルエンザの経験から推計して罹患率25%で約3200万人罹患、医療機関を受診の患者数は最大2500万人、入院53~200万人、致死率0.5~2%で死亡者数17~64万人に登り、従業員の欠勤は最大40%と予想されています。感染力、重篤度等はウイルスの変異、新しいウイルス薬の開発、細胞培養などワクチン製造技術の革新、タミフル耐性ウイルスの出現などで状況は変わります。当面の対策としては医学的介入、公衆衛生的介入、社会全体の対応を組み合わせ状況にあわせた機敏な対応が必要となります。公衆衛生的介入は大流行のピーク時期を遅らせ平坦化させるためにワクチン供給などの対応の時間稼ぎが出来ます。また感染者、発症者、受診者、入院者、死亡者の同時多発を減らして医療サービスへの負荷や被害を抑えて医療機関、社会機能の破綻を防ぐ事が出来ます。国は坑インフルエンザウイルス薬を国民の23%分(一次補正で45%に引き上げる)、プレパンデミックワクチンは国民の16%分(追加備蓄で24%に増やす)を備蓄しており、パンデミックワクチンに関しても鶏卵培養を含め細胞培養などの開発で全国民のワクチンを6ヶ月以内に製造する体制を整えます。わが国では2005年WHO世界インフルエンザ事前対策計画に準じて新型インフルエンザ対策行動計画を策定しました。その後、科学的知見が進み2008年に感染症法を改正(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律)し、2009年2月に新型インフルエンザ感染拡大を可能な限り抑制して健康被害を最小限にとどめ社会・経済を破綻に至らせない様に関係省庁や専門家会議の検討を踏まえてこれまでの新型インフルエンザ対策行動計画を全面的に改定すると共に新型インフルエンザ対策ガイドラインを策定しました。特に行動計画での従来のWHOによるフェーズに変えて国内の対策での転換点を表す段階を設定しました。段階ごとに関係省庁の対応、連携、協力体制の方針を明記して社会・経済機能の破綻の防止を強化しています。ガイドラインでは各対策に取り組む内容や方法と国、自治体、企業、家庭、地域の夫々の役割の分担を指し示して国民各層での取り組みを促す指針としています。具体的には水際対策、検疫体制、国内の感染拡大防止対策、医療提供体制の整備、坑ウイルス薬の流通・使用、ワクチン接種の進め方、企業・職場、個人、家庭及び地域での取組、リスクコミニュケーションの有り方、埋火葬対策などです。発生段階とそれに応じた方針を図まとめてあります。

(3)新しい肝炎総合対策(正林督章 厚労省健康局疾病対策課肝炎対策推進室長)

肝炎は国内最大の感染症です。肝炎はインターフェロンでの根治が可能で肝硬変、肝癌への移行を予防できます。しかし肝臓は沈黙の臓器と言われ症状が現れ難いのでウイルス検査は必須であり、それによる早期発見と引き続きの適切な治療が望まれます。国は医療費助成、検査・治療体制の整備、正しい知識の普及と相談事業及び研究に力を入れています。総合的肝炎対策として1.基幹病院を拠点にインターフェロン療法の促進と環境整備 2.肝炎ウイルス検査の促進 3.健康管理の推進と安全・安心の肝炎治療とともに肝硬変・肝癌患者への対応 4.国民に対して正しい知識と理解を普及する 5.研究の推進の5本の柱を立てています。インターフェロン治療は高額なために早期治療の妨げになっていました。厚労省は平成20年4月からB型、C型肝炎患者に対してインターフェロン医療費助成制度を始めました。世帯の所得に応じて1ヶ月当たりの医療費の自己負担額を1万円、3万円、5万円の3段階に設定しています。平成21年からは税制上と医療保険上の扶養関係の無い者には例外的取り扱いを行っています。当初は投与期間が1年間でしたが医師がペグインターフェロン及びリバビリン併用療法の延長投与が必要と認める場合には72週が認められます。国と都道府県が夫々1:1の割合で負担し年間256億円、7年で1800億の医療費を助成します。肝炎ウイルス検査体制は平成14年から18年度までは特定感染症検査事業として保健所で20歳から39歳の受診希望者と40歳以上の未受診者に対し性感染症及びHIVと平行して40歳以上の希望者にウイルス肝炎検査を無料で行っていました。平成19年から医療機関に委託し費用の一部負担で、20年1月からは無料で行っています。平成20年の老人保健法改正で市町村の骨粗しょう症検診、歯周病検診と同じく健康増進法で行われ40歳、又は40歳以上で過去に検査を受けていない人やこれまで老人保健事業で受診機会を逃した人には特定健診と連携して同時に実施しています。また政府管掌健康保険では生活習慣病予防健診時に希望する35歳以上の人は検診を受けられましたが各医療保険者による特定健診に移行したため40歳から74歳までは義務健診として、75歳以上は努力義務となっています。一方、労働安全衛生法の一般健康診断はこれまでと同じです。健診制度が複雑になったので各関係機関同士の情報交換と連携が必要です。検診後の肝疾患診療体制としては都道府県が医師会と協働して診療ネットワークを構築しています。都道府県に1箇所拠点病院と共に2次医療圏に1箇所以上の専門医療機関を指定し医療情報の収集と提供、協議の場の設定、医療従事者の研修会や地域住民に対する講演会の開催を行って居る所です。国は肝炎情報センターを設置しインターネットによる最新情報提供、拠点病院間のネットワークでの情報提供、医療従事者の研修の企画、立案、推進を行い、肝炎研究推進の7ヵ年戦略を立てておりB型肝炎の治癒率を30%から40%へ、C型特に1b高ウイルス型を50%から70%へ、非対象性肝硬変の5年生存率をB型の25%から50%、C型を25%から35%、進行肝癌の5年生存率の25%から40%に上げる事を目指します。B型、C型肝炎患者は国民の1~2%に存在すると推定されるにも拘らず効果のあるインターフェロン治療が伸び悩んでいます。その理由として肝炎患者・感染者である事を知らない。知っていても通院していない通院している医療機関が肝炎治療に適していない適切な医療機関に通院しINF治療適応患者なのに何らかの理由で断っている。などが考えられます。平成20年の国立病院機構及び国際医療センターのINF治療にかんする患者アンケート調査によるとINF治療を断った患者130人の理由は忙しい35%、INFの副作用が心配28%、高齢8%、自覚症状が無いので必要ない6%、お金が掛かる5%でした。治療は大きく進歩したので最も大事な事は全ての人が肝炎ウイルスをチェックし全ての肝炎ウイルス陽性の人が定期的に専門医療にアクセスする事である。

3.協議各地医師会の質問事項と協議会での質疑応答 昨年承認され使用できるようになったHibワクチンを定期ワクチンにする考えはどうかの質問に対しては実施しながら副反応を見極めて判断する事になるとの答えだった。日本脳炎についても副反応が問題として接種勧奨の差し控えが通達されて来た。このたび細胞培養によるワクチンの安全性が確認されて定期接種になる。しかし2回接種に関しては今のところ決まっていない。日本と緒外国とのワクチンギャップに関しては日本のワクチンに対する考えは伝統的に社会防衛的な考え方がありワクチによる副反応を恐れる面が否定できない。それに対し外国は個人の責任による健康確保を重要視しているので接種率が高い。新型インフルエンザについてはワクチン接種の優先順、抗インフルエンザ薬の備蓄や流通の問題はあくまでも倫理的・人道的な方法が取られるべきであるとした。また行動計画の中での発熱外来と医療従事者の安全確保に関する資材の確保、保障問題などについて活発な協議がなされた。 

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