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介護報酬改定率プラス3%の根拠と決定の経緯について
介護保険制度開始以来3年毎に更新される介護報酬の改定率はこれまで2回とも社会保障審議会介護給付費分科会諮問を厚生労働大臣が受けて2月に発表されてきた。今回は12月26日唐突にプラス3%の改定率にする旨、発表された。この決定の経緯は甚だ不透明である。深刻な介護従事者不足の状況を受け政府与党が10月30日に決定した政治判断に従わざるを得なかった。むしろ金融恐慌のためにますます景気が落ち込む事が明らかになった1月より前にプラス改定が決まりマイナスにならなかったのはラッキーといえる。1回目2003年の改定率はマイナス2.3%、2回目2006年のマイナス2.4%といずれもマイナスであったが、今回は3%(在宅分1.7%、施設分1.3%)のプラス改定と決まった。今回のプラス改定は一定の評価はするが過去2回のマイナス分は取り戻せそうも無い。特に施設については不充分であると強調したい。一部のメディアが3%アップの根拠として 年間 介護給付費の3%の2300億円は現在の80~90万人の介護職員の給料を1人当たり2万円上げるのに必要な額としている。実際、改定の大きな柱である「介護従事者の人材確保・処遇改善については「夜勤々務や人員過配や介護福祉士など専門職種の配置や勤務年数などのキャリアが評価された。しかし全体を底上げする基本サービス費は据え置かれ加算で対応している。部分的に基本サービス費をもう1つ作った形である。地域差の単価上乗せでは請求事業の60~70%を占める「その他」の地域の見直しは行なわれず地域間の格差が広がる恐れがある。報酬は全てのサービスに一率3%引き上げられるのではなく事業毎に濃淡がある。内容を充分吟味した上で利用できる部分を最大限活用して欲しい。特に施設での特老常勤医師配置加算、ケアマネ報酬やリハビリテーションのアップなどは評価される部分である。2月から改定内容の解釈通知の措置交渉が行われた後に発出される。日医としては今日の九州医師会での議論も含め 交渉に臨む 。
要介護認定での新しい一次判定ソフトのロジックについて
4月1日から要介護認定判定基準が変更され新しい一次判定ソフトが使われる。この変更は社会保障審議会・介護給付費分科会でなんら議論されないまま勝手に決められた。介護報酬改定と同じく不透明である。これは要介護認定について検討する場が法律で明記されておらずソフトの構築は老健局長の私的要介護認定調査検討会で決定される。介護認定は介護サービス給付に直接つながる大きな問題でありソフトの変更決定も介護給付費分科会の検討の俎上に上げるべく粘り強く交渉していく積りである。このソフト変更の目的は①新しいデーターに基づく一次判定ロジックの更新、②二次判定審査の負担になっている 介護1相当を要支援2、要介護1振り分けの自動化、③調査項目の削除による事務負担軽減や地域による判定のバラつきの平準化とされる。モデル事業による検証では要介護1が増えて要支援2が少なくなる一方で要介護5が要介護4に下がるなど実情と合わない判定がでる恐れが懸念される。なんら介護給付費分科会で検討されないまま4月1日から使われる事に対し意義を唱えたい。とは言え認定審査会の認定プロセスで一次判定を二次判定で重度に変更できない訳でもないので原則に立ち返って調査員の特記事項と主治医意見書から時間を物差にして介護の手間を判断し変更して行く事になる。新しい一次判定ソフトのロジック変更で判定結果と現場とのずれが生じる可能性がある。主治医意見書に対象者が介護を必要とする状況を綿密に記載する事が大切である。各地域で開催される主治医意見書研修会での啓発が必要である。
介護サービス情報公表は行政負担で
現在、医療機関情報の公表は行政が公費で行なっている。それにもかかわらず介護サービスの公表手数料は事業者が負担しなければならない。介護についても医療と同じく公費で公表されるべきである。介護従事者の待遇改善も出来ないほどの経営難の中で介護事業所は負担に苦しんでいる。県のホームページに公表されているが 利用対象の高齢者がインターネットを使いアクセスする事は殆ど無い。居宅のケアマネージャーが覗くか、市場調査のための基本情報が閲覧される程度である。公表の必要性には疑問を感じる。行政が必要と考えるなら公費で行なうべきである。介護サービス情報の公表制度の扱いは厚労省外郭団体のシルバーサービス振興会に委ねられている。そもそも公表はO適マークのコマーシャル効果を狙ったもので事業者負担は当然の事として始まった。今、公表は義務として行われている。事業者が負担にするのは不合理である。各都道府県で差は有るが減額される方向にある。これは過渡的な話であって原則は行政が負担すべきであり、廃止されるべく介護給付費分科会の議題に乗せ関係部局に働きかけて行く積りである。
介護サービス利用実積について
被保険者の介護保険料に跳ね返る総介護サービス利用額の最近3年間の実積は全国的に計画値より減少傾向にある。特に施設系の減少が目立つ。原因とて療養病床の再編問題に関連した廃止や転換などの影響も大きい。在宅では訪問看護を費用の安い訪問介護にかえたとか平成18年度予防給付の導入で通所系サービス単価が低下したり利用の抑制が考えられる。その分、市町村の介護保険財源には余裕が出ていると思われる。制度運営は財政的立場も大切だがサービス需要が有るのに利用抑制される遣り方には問題がある。利用の動向を注視する必要がある。
介護従事者の不足について
介護福祉士養成所が減少してきている。これは介護従事者の賃金や処遇が悪く、若い人が介護の将来に夢が持てず介護に目を向けないためで、定員に対して入学者数が少なく廃止に追い込まれているためと考えられる。次期介護報酬3%引き上げの目的は介護従事者の人件比率をあげ処遇を改善し定着と参入促進の為の施策である。国は来年度予算に事業者への雇用助成、介護福祉士など人材育成として修学資金貸し付限度額の引き上げや返還免除要件の緩和に必要な資金を組み入れている。
医療療養病床の転換について
医療療養病床についても同様であるが介護療養型医療施設の転換についていえば今年4月の次期介護報酬改定では介護療養型老人保健施設の報酬は引き上げられる。しかし介護療養型医療施設に比較して160単位低い。そこで今のところは有利な介護療養医療施設のまま1年間辛抱して来年2、3月に行なわれる医療の診療報酬改定で医療療養型病床がどのように扱われるかを見極め地域の事情も勘案しながら態度を決めるのが賢明である。日医としては介護難民、医療難民が出ないように医療療養病床、特に介護療養型医療施設に居る介護特性の高いADL区分1が入院、入所できるように医療療養型施設、介護療養型保健施設の評価が引き上げられるよう努力する。