医療や介護の世界は、専門職を中心とした世界である。このうち、医療、特に、急性期医療の世界では、「治すこと」を実現するための効率的な組織形態(医師を中心とした階層型組織)が構築され、指示命令系統や責任主体もはっきりしていた。また、同じ医療という土壌で育った関係者、かつ、同一医療機関内の関係者同士での連携であったため、医師のマネジメントのもと、比較的うまく機能していた。一方、介護の世界は、医療のようなトップダウン方式はなく、また、医療のように即断即決が求められる世界でも、マネジメントが十分機能した世界でもなかった。さて、今回の地域包括ケアの空間では、医療・介護関係者による多職種協働が求められる。この空間では、各専門職は「果たすべき役割の違い」という「横軸」の関係であり、また、利用者を中心とした支援方法を検討することが求められているなど、今まで育ってきた環境や方法論(治療方針は医師が決定するもの)との差異から、主治医は非常に戸惑いを覚えるのである。また、主治医は、医学的リスクに対する責任者であるため、関係者から適宜きちんと連絡が入ることを期待するが、育ってきたバックグラウンドや日常使っている言葉、仮に同じ言葉を使っていても認識している意味が異なる介護関係者から適切なタイミングで適切な連携が入ることは難しい。多職種協働による地域包括ケアの空間では、より具体的な指示と、方法論の選択理由に関する具体的な説明が求められる。このような状況において、連携を取る方法としては、1尾道市のように、アセスメントの徹底を図りながら、ケアカンファレンスという研修の場を通じて相互理解を深め、かつ具体的指示を行う2どういう場合に連絡が欲しいかを専門職側から具体的に提案・説明し、そのルールを関係者が遵守するよう徹底するなどの方法しかないと考えられる。連携強化を図るための一手段としては、包括的なアセスメント項目の評価結果から、具体的連携ルールを構築することが有効ではないかと考える。3. プライマリ・ケアの理念を理解した関係職種の養成現時点の在宅・施設療養者本人や家族のことを鑑みれば、さまざまな形で高齢者医療・ケアに関わっている医師などの意識を変えることは非常に重要である。ただし、前述したように、地域包括ケアという空間は、元々育ってきた環境や方法論とは異なる世界であるため、なかなか理解しづらい。このことは、ほかの職種との連携が要求される「在宅医療」がこれまで期待した程には進んでこなかった背景の一つと考えられる。この解決策としては、初めから、地域包括ケアに求められる機能や取り組む姿勢(包括的対応、継続的関わり、チームとしての協調性、説明責任、患者中心の考え方、家族を含めた対応、共感できる関係性の構築など)を、目的達成のためには当然のことと理解した関係者(医師だけでなく、医師と同様の世界で育ってきた看護師やリハビリスタッフなども含め)を、専門のプログラムに従って養成することであると考える。2006年の診療報酬、介護報酬同時改定では「機能分担と連携により、サービスの質と効率性の向上を図り、医療・介護費用の適正化につなげる」共通課題に対するさまざまな政策が打ち出された。平均在院日数の短縮化、患者・家族への安心感の提供の両面からみて重要な課題は「安心して退院・退所出来る環境の整備」であるが、この実現のためには、在宅主治医による継続的関与が重要となる。患者・家族にとって、「自分のことを、どこに居ても継続して診てくれており、かつ、必要に応じ適切な対応(専門機関の紹介や紹介先との連携)をとってくれる医師」が居ることほど、安心感を生むものはないであろう。在宅療養支援診療所が創設された。また、診療を補助する意味で、訪問看護の拡充も重要である。今後20 年間、最後の急速な高齢化を迎える。
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