私が開業して15年が過ぎた。開業当初の医師に対する世間の見方は、医師数が増えるとそれだけ医療費はかさみ医療財政が持たない。その対策に医師養成削減をそれまで以上に進め、保険医療に携わる保険医に対して定年制を設け70歳を定年にするなどの議論があった。その後も医師養成削減は続けられたが、流石に良識有る学術関係団体や医師会の反対で保険医の定年制は実現しなかった。保険医の定年制が言われ出した時、私はわが耳を疑った。医学は心と経験の学問である。医師も人間として年を重ねれば患者さんを単に部品である臓器の集まりと考えがちな若い頃と違い、年齢と共に変わる体の変調を知ると共に、年寄りの気持ちが理解できる様になる。そのとき初めて患者さんを心を持つ生き物として扱えるようになるのである。その頃、私は国の行き先を憂えた司馬遼太郎が盛んに使った言葉「貧すれば鈍す」をかりて、所属会誌に意見を載せたものである。時代は変わり、今の状況はどうであろう。これまで大学病院に偏在していた若い医師の名義貸しに始まる医師数標欠問題は人員基準に満たない医療機関の存在を次々に明るみにし必要な医師の不足が明らかになった。これに卒後研修制度が追い討ちをかけて医療現場の医師不足が問題化した。これに対し、これからの人口減社会、療養病床の削減による必要医師数の減少等を考えないで短兵急な医師乱造を始めている。それよりも医療関係職種を活用した医師の業務内容の見直しが必要である。
「安心と希望の医療確保ビジョン」ー厚生労働省
現在大学医学部総定員7600人をピーク時の8300人に戻す。
定員削減 1982年行革大綱
1997年にも閣議決定