戦場を体験した人から野戦病院は傷口に蛆がわくほど悪い衛生状態だったと良く聞いて来た。死をタブー視し表社会から隠す日本人にとって死体をはじめ腐敗するものに湧く蛆は生き物の終末を感じさせるからである。それだけに生理的に受け付けない嫌悪感を持っている。ヨーロッパでは1800年頃から経験的にこの蛆を医療に利用している。日本ではやっと4年前、岡山大学で糖尿病の合併症の脱疽の傷の治療に応用して足の切断を避けることが出来た。そしていまは全国で使われるようになった。糖尿病で足先が組織壊死に陥り化膿した所に滅菌状態で飼育した無菌のヒロズキンバエの蛆を置くと2日で化膿した創部が綺麗になり健康な赤い肉芽が現れ治癒が促進される。これは蛆の分泌する液に含まれる酵素が化膿した表面の組織を溶かし吸い取り掃除をしてくれるからである。また分泌液は組織を再生させる生物活性物質を含んでいる。8割の人が治り切断を免れたとの報告がある。また抗生物質耐性菌を消滅させる働きがある。最近はこの蛆虫をネットに詰めて床ずれ部位に置き、褥瘡を治す方法も試みられ、在宅医療への応用が期待されている。日本人には抵抗のある蛆での治療も自然の合目的な生物連鎖の営みであったのだ。現代医学が治せない難しい壊疽の治療は野戦病院での治療が優れていたのかもしれない。ー6月5日午後5時のNHK放送よりー
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