糖尿病とパーキンソン病で私のクリニックの掛かりつけの患者さんが3月頃、山の蜜柑畑で取れた夏みかんだと言って籠に沢山持って来てくれた事がある。4~5日前の夜、遅くなってから、高い熱があるので診て欲しいと外来に訪れた。ここ2~3日暑い中でミカン畑の手入れをしたので体もきついと言う。熱以外にこれと言った他の症状も無い。腰痛もあるが熱の有る所為だろうと考えた。尿を検査すると蛋白と潜血がプラスに出た。白血球数は7000で増えていない。血小板は8万で少し少ない。パーキンソン症の薬のメネシットを服用しているので悪性高熱も考えなければいけない。ちゃんと飲んでいるか聞いたら飲んでいると言う。少し心配はしたが脱水と腎盂膀胱炎と判断して抗生剤のセファメジンαに解熱剤のアミノピリンを輸液と共に点滴した。次の日は日曜日だったが一応、来院するようと話し帰ってもらった。翌日の朝、来院したので体温を測ると39度台であり、昨夜帰宅後の熱はどうだったか聞いた所、少し下がったが矢張り38度台であった。食欲はあり何とか食べられると言う。体に発疹が出て来たが薬疹ではないかと奥さんが心配している。かゆくも痛くも無いとのことで様子を見ることにした。熱が下がらないのが気にはなる。白血球は6000で細菌感染症ではおかしい。段々と気になりだした。2~3年前に近くの人が神社の周りを清掃して高熱が続き皮疹がでて、ダニに咬まれた跡もはっきり確認できてツツガムシ病との診断が出来て回復したのを思い出した。検査センターも休みなのでいずれにしても抗生剤はミノマイシンを使い解熱剤はボルタレン座薬で対応する事にした。3日目に来院した時も38度台の熱であるが幾分凌ぎ易いと言う。四肢から躯幹全体に赤い斑点が拡がり、特に左前腕に暗赤色で中央が黒ずんだ皮疹があった。ここで一応、リケッチア症と考えてツツガムシの血清反応と肝機能検査を検査室に依頼した。検査結果は緊急に昨夜の内に来ていて、GOT,GPT,LDH、CPKが高く、白血球の核左方移動が著明でミエロまで出現している。これはやはりリケッチア感染症で今の治療でよいと確信した。朝来るように話してあったのに来院しない。如何したのだろうと事務に一応、何か連絡が無かったか尋ねた所、皮膚科から検査の内容について問い合わせが昨日あったとの事。そう言えば奥さんは皮膚科紹介を希望したが検査結果を待ってからと考えていたのでそのままにしていた。心配だったのだろう。点滴が済んだその足で皮膚科を受診したらしい。早速、皮膚科に今までの経過と検査結果を報告し、前腕の皮疹は刺し口で日本紅斑熱であろうとの結論になった。その後、暫くしてから皮膚科の昨日書かれた情報提供所を持って患者さんが現れた。解熱して発疹も褪色していた。ミカン畑で作業中にマダニに指されたのだろう。今年は何時もに無く夏みかんをおいしく戴いたがミカン畑がどうもキーワードになりそうな事態である。血清検査が陽性と出たら保健所に4類感染症として報告するように準備している。
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