在宅診療をしていると患者さんの家庭でのさまざまな姿を見る。家族に囲まれて大事にされて幸せに過ごしている人、片や独居で締め切った部屋でゴミの山に埋もれて過ごしている人、自分なら一時も居れない寒い吹きさらしの部屋で平気で生きている人。そこには私が当然こうあらねばならないと言う考えや思い入れが通じない程の様々な人間ドラマがある。ところで生きる、老いる、病む、死ぬ事など人間の自然の営みへの関わりが家族の機能である。日本のかっての家族制度が崩れて、核家族化が進んだ。核家族化は自分達では家族機能を果せなくしてしまった。特に老いを家族の内部に受け入れる場所をなくしてしまい、老いを支えられなくなっている。老人達は行き場を失った。家庭外への疎外は棄老に繋がる。現代版姥捨て山である。一見豊かに見える日常にあって、何気なく通り過ぎる家々の内側には多くの人が打ち捨てられて住んでいる。それを防ぐために作られたのが介護保険制度の創設で有ったし、今回の高齢者医療制度のはずである。その理念は間違いはない。しかしその手法に拙劣さが目立っている。
2008.4.26 読売新聞 時の余白 芥川喜好さんの記事に動かされて