4月から始まる後期高齢者医療制度、糖尿病・高血圧・高脂血症・認知症など慢性疾患を継続して診療出来る医師は基本的に一診療所のかかりつけ医と言う事になる。その資格条件は①高齢者とその家族を支える基本的診察②高齢者の病態③高齢者の生活機能評価に関する研修を受講した医師となっている。これに該当するのが各県医師会が国と県の委託を受け毎年実施している「主治医研修」や「かかりつけ医認知症対応力向上研修」等である。産業医や各種専門医の資格維持のための研修では会場が一杯になる。それに比べ主治医研修や認知症対応力向上研修の受講者は少なく、主催する医師会担当は受講者を増やすのに苦慮してきた。対策として研修会終了後に受講証明書を渡す方法などを考えたが義務の伴わない研修では効果が期待できずそのままになっていた。「水を飲もうともしない馬を、池に引っ張って行き、いかにして水を飲ますか」の如き不毛な議論を10年近く繰り返して来た。参加する顔ぶれは毎年同じで、会場によっては10~20人のこともある。国が内容と時間まで指定する事業にも拘らず徒労感だけの残る研修事業に思えてならなかった。それにもめげずに担当者は使命感を持って自分の診療は犠牲にしてまで手分けして講演して回る。今年から慢性疾患を継続して診療する保険医は研修を受け修了証書を取得しなければならない。ますます高齢化社会になる。急性期医療のみが医療ではない。人間の生活を中心に置き医療・介護を包括して考える診療がすべての医師に求められる事になる。孤高を保った唯我独尊では立ち行かなくなる。当たり前の事がやっと始まる。余りにも遅すぎる。
再掲
いま人類は巨大化台風、ハリケーン、熱波などに象徴される地球温暖化による環境変化、テロや紛争の続く国際情勢、パンデミック寸前の感染症など未曾有の危機に直面している。日本では少子高齢化が進行し、このままいけば人口最大部分の団塊世代が後期高齢者になる2025年までに社会保障制度は機能不全に陥る可能性が危惧されている。特に医療・介護では少子化による人口減とともに高齢者が増え核家族化など社会構造の変化で単身世帯や老々世帯が増加して介護問題が浮き彫りになり平成12年には介護保険制度が創設された。最近の日本人の平均寿命は男78歳、女85歳である。これは食生活の改善、皆保険制度でのフリーアクセス、感染症制御の効果も大きい。加えて健康日本21や老人保健事業の成果でもある。しかし事業が死亡率の高い癌、心臓病、脳卒中を減少させる事に力点が置かれて来たため本来の目的であるQOLを考えての健康寿命の延伸に繋がっていない。その表れとして女性の場合は平均寿命は長いが健康寿命は男性より3年も短い。これは医療の進歩が介護期間を長引かせ平均寿命を伸ばしたとも考えられる。最近の調査では65歳以上の要介護認定率は16.7%である。その中で74歳までの前期高齢者は16%で75歳以上の後期高齢者が80%を占めていた。後期高齢者の多くが介護を必要としているといえる。後期高齢者の3人に1人が単独世帯であり子供の同居率も低くなり高齢世帯ほど家族の介護力が下がっている。今年、還暦を迎える60歳前後の団塊世代800万人が後期高齢者になる15年先には高齢者人口が3500万人にも膨れ上がる。現在の年間死亡者数は100万人であるがその頃には160万人になると予想される。国民の半数以上は病気になっても住み慣れたわが家で過ごし続けて、そして死にたいと願っている。それとは裏腹に医療機関で死ぬ人の割合は現在80%を超えて今や病院で死ぬ事が今や当たり前の風潮となっている。それとも関連すると考えられる70歳以上高齢者の一人当たりの平均年間医療費は40歳代の6倍も懸かっている。それに加えて問題なのが高齢化にともなって増加する認知症である。現在170万人といわれる患者数は10年後には250万人を越すと言われている。近未来に必ず出来するこれらの状況を踏まえ、年毎に悪化している医療・介護の保険財政に歯止めを掛けるためにそれを意識した介護保険法改正がなされ、そしていま真剣に医療改革が進行中である。その中心になるのが高齢者医療介護の在宅移行である。かって日本は看取りを含め在宅医療は普通の事であった。急に昔に戻せと言われても、崩されて仕舞った社会構造を元に戻すのは難しい。これまでの医療スタイルは医療機関内で医師対患者が1対1で対応し他の職種の指図して成り立つ医療モデルであった。また内容は患者の病気だけを見て生活は顧みなかった。さらには医師を頂点とした階層性が介護保険の定着した今でも残っており高齢者医療に関っている医師でさえ戸惑いがあるのも事実である。そのような状況にあって高齢者医療は待ったなしで介護保険制度が動き出した。そして地域の社会生活の場でもある在宅療養介護を医療、福祉の多職種が平等な立場で連携し生活をサポートしなければ立ち行かなくなっていく。医療のない介護は危険であり、介護のない医療は考えられない。介護の入り口には医療がある。その先にも医療がかかわる看取りがある。私達医師のすべてがますます進行して行く超高齢化社会にしっかり向き合う必要がある。主治医意見書・認知症対応能力向上研修会への参加は最低限の医師としての義務であると考えている。
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現在、日本人の平均寿命は女85歳、男78歳です。日本の総人口1億2千7百万人の中で65歳以上の高齢者が2800万人の22%でその中で75歳以上の後期高齢者が1300万人の10%を占めます。団塊世代が後期高齢者になる15年後は3500万人になると予想されます。平成19年の65歳以上の要介護認定率は16.7%、75歳以上では50%と半数が介護を必要としています。それに平行して認知症は増え85歳以上の4人に1人が認知症になっています。この様に認知症は誰にでも起こる病気です。ある程度、病状が進むと家族だけでの介護は難しくなります。今、認知症対応のグループホームを始め小規模での介護サービスが増えています。その効果には素晴らしいものがあります。その証拠にグループホームの数は現在1万箇所です。そこで蓄積、検証された成果は認知症の知識・治療・介護の進歩をもたらし、ここ10年の間に大きく社会の認知症観を変えました。これまでの様な家族の介護が大変だから施設に預けると言うのではなく、本人と家族の双方のQOLが良くなる最善の方法の在る事が分かって来たのです。ぼけても大丈夫な社会の到来が期待されます。認知症介護にはマンパワーが必要です。それに資金も必要です。私の経営するグループホームでは9人の入居者に対して8人のスタッフがいます。マンツーマンの介護を必要としています。介護保険制度創設時より認知症の要介護度認定は現実の介護の手間を反映していませんでした。それが問題にされ第2期介護保険事業の改訂でやっと少し改善されましたが、平成18年の介護保険制度の改正では新介護予防給付が導入され問題の部分は、すり替えられ違う方向で利用されました。一次判定プロセスはいまだに現実を反映しないと言う、悪い癖は直されていません。それゆえに認知症の知識と対応を熟知して審査会での大切な資料の認定調査と特記事項それに主治医意見書に書かれた認知症に係る情報を見落とす事無く、申請者の状況に合う適正な判定を行なう必要があります。
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