5年前、わが町の消防署に心電図伝送システムを備えた高規格消防車が配置される事になりそれを受ける医療機関が必要があった。進んで引き受ける医療機関は無く医師会長の病院と丁度救急担当理事をしていた私のクリニックにお鉢が回ってきた。一人でやっている私の所が24時間対応するのはとても無理とは思ったがしぶしぶ引き受けた。救急指定でもないので当番医のときぐらいしか救急患者さんは運ばれてこない。それでも救急救命士の研修機関としての役割まで回ってきた。研修生には申し訳なかった診療の手伝いをしてもらうのが関の山だった。AEDの普及とも重なり、これまで救急現場から伝送されるケースはホンの数えるほどであったが受信装置がある事でずいぶん心の重荷にはなっていた。やっと今年になり、公立病院が代りに引き受けてくれることになったので心底ほっとしている。そして市としても今までの私の働きを表彰してくれると言うので御用納めの日の朝早く消防署に出掛けた。そして消防署の屋上の広場に案内された。そこには制服姿の全消防、救急隊員が整列していた。挨拶はすべて敬礼で整然として厳かな雰囲気で私のところで研修も何回か受け、かねて救急患者さんを搬送してすっかり顔なじみの隊員達なのに制帽と紺の襟章の制服姿は威厳がありよそよそしくさえ見えた。私は別の世界に迷い込んだ様な気分になった。その前に進み出て署員と同じ格好の市長から表彰状を受けた。なにか面映い思いがしたが表彰されてみると世で言うメディカルコントロールの一端を担えたのかなと少し自負する気持ちが沸いてきた。
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