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<スライド 7>
なぜ認知症を無視できないのか その一例を示します。
道路交通法の改正で主治医の診断書を提出、免許の取消および停止の申請が可能となりました。かかりつけ医が「自動車運転は危険を伴うので控えた方がいい」と考える場合、本人や家族への的確なアドバイスをすれば免許更新時その旨の意思表示をすることができます。かかりつけ医が運転の危険性について十分な説明をおこたった場合に人身事故が起これば“説明報告義務”違反の民事責任を問われる恐れが有ります。
<スライド 10>
家族がかかりつけ医を受診した時の理由です。周辺症状BPSDの行動症状である徘徊や心理症状のもの取られ妄想などを理由として受診した割合が30~40%にものぼっています。
<スライド11>
一方、中核症状の物忘れのみを理由に受診している割合は3.7%に過ぎません。いかに認知症の人が早期に受診していないか家族の認識の低さを示す結果です。
<スライド 17>
疫学調査での「認知症」と診断された人の家族が気づいた日常生活上の変化を頻度順に示してあります。このような変化が半年前にくらべ目立つようであれば認知症を疑って良いでしょう。問題は家族がいなければこのような変化は気づかれ難く、現在65歳以上の4割が単身もしくは高齢世帯で今後ますます増加して家族に情報を求めることが難しい状況です。かかりつけ医が本人への問診を通して認知症を診断する能力が求められます。
<スライド 18>
認知症の主体は認知機能の障害で中核症状と呼びます。それに続発・併存して様々な行動・心理症状BPSDがみられ周辺症状と呼びます。中核症状は記憶障害を始め判断力低下、見当識障害、失語、失行、失認などがみられます。周辺症状にはせん妄、抑うつ、興奮、徘徊、睡眠障害、妄想などの症状がみられます。周辺症状は介護の上で問題となります。環境の調整、対応の工夫な対症的な薬物療法で改善します。 近年ICFの導入により生活機能の障害を認知症にも取り入れらている。もともと認知症の定義には生活の支障がでて、支援が必要となる状態といわれている。ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)国際生活機能分類。
<スライド 22>
認知症と間違えられやすい状態
認知症と間違えられやすい状態には加齢に伴う物忘れ、うつ病、せん妄などがあります。うつ症状やせん妄は認知症の症状として現れることもあり鑑別が必要です。認知症はせん妄の危険因子でもあり、そのリスクはおよそ2倍です。うつ病はアルツハイマー型認知症の危険因子でもあります。診断が困難な場合は専門医へ紹介するのが良いでしょう。薬物による意識変容なども間違えられます。
<スライド 23>
普通の物忘れ
生理的もの忘れは半年や1年で進行することは有りません。認知症は進行し本人は自覚していないが、家族に1年前と現在の物忘れの状態をくらべて貰えばわかりやすいです。もの忘れの内容は、生理的もの忘れが体験の一部なのに対して認知症では体験のすべてを忘れてしまいます。例えば、結婚式に出席した際に隣に座っていた人の名前を思い出せないのが生理的忘れで、出席したこと自体を忘れるのが認知症で見当識障害の時間の失見当がみられます。
<スライド 24>
うつ状態
うつ状態とアルツハイマー型認知症との大きな違いは発症時期です。 うつ病では何らかの契機が認められて通常は長くて数ヶ月前からの発症です。うつ状態では症状を強調します。認知症では過小評価しており、とりつくろう様な答えはアルツハイマー型認知症の特徴です。顕著となると作話になります。内容もうつ状態では自責的となり認知症では他罰的となります。この結果がもの盗られ妄想につながります。
<スライド 25>
せん妄
せん妄との大きな違いは起こり方でせん妄は何月何日と特定できるほど急性に起こります。認知症は緩徐に発症します。また、夜間に増悪することが多く、夜間せん妄ともいわれます。注意力の散漫した意識障害と幻視および運動不穏をせん妄の三徴といいます。高齢者では幻視を伴わないこともあり、通常は運動不穏のために多動となることが多いが、多動状態を伴わない場合もあります。
<スライド 28>
代表的なアセスメントツール
質問式、観察式 それぞれの代表的なツールを紹介します。 質問式には、認知症のスクリーニングを目的とした簡易テスト的ツールとして、
①改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
②ミニメンタルステート検査(MMSE)が挙げられる 。
観察式は主に患者さんとの問診や家族・介護者からの情報によって評価しツールとして
① Clinical Dementia Rating(CDR)、
② Functional Assessment StagingFAST(FAST)、
③ 初期認知症徴候観察リスト(OLD)の3つが代表的です。確定診断前の気づきを高めるツールとして活用できます。
<スライド 35>
OLD
OLDはオランダのかかりつけ医グループが外来診療での認知症の気づきを高めるために作成したツールです。日にちを忘れるなどの忘れっぽさ、同じ話をする会話の繰り返し、言葉が出てこない、会話が理解出来ないなど文脈理解の障害、時間が分らない、家族に依存、辻褄あわせの作話など12項目から構成されている。4項目以上該当した時に認知症が疑われる。ある程度習熟すれば12項目にはこだわらないでアセスメントできるようになります。
診断編ビデオ
<スライド 2>
認知症を呈する病気
認知症を呈する疾患は多い。病気を疑い検査を進めるべきです。検査機器などの問題や専門外の疾患なら専門医に紹介します。神経変性性疾患、脳血管障害、脳炎などの感染症、脳腫瘍、外傷性高次機能障害、中枢免疫性疾患、正常圧水頭症の髄液循環障害、内分泌障害、中毒・栄養障害などがあります。
<スライド 3>
主要な認知症
代表的なものにアルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型認知症があり、治療可能なものに甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、ビタミン欠乏症がある。初診時に検査を行い治療可能な認知症を鑑別する必要がある。
<スライド 12>
中核症状のアセスメント
質問には、あらかじめ家族から日常生活の行動に関する情報を得ておく必要があります。矛盾が生じた場合に患者がそれを認めるかどうか、言い訳をして取り繕うかどうかが診断の重要なポイントとなり家族からの情報で重要なのは1)以前無かった症状?2)症状が出現してきたのはいつごろ? の2点です。以前は無かった症状が出現し、悪くなって来た、出てきた時期がいつと断定出来ない等、情報が得られた時には、変性性認知症の存在が疑われます。失行、失認では家族はおかしなことをする、わざと変なことをすると分っていても症状とは認識していないことがあるのでおかしな行動をするという訴えがある際には、着衣失行、構成失行、半側空間失認、肢節運動失行の存在を疑います。
<スライド 13>
記憶障害のアセスメント
あらかじめ家族から情報を得ておくのが良いでしょう。
最近の記憶:どのような交通手段で受診したかをききます。できる限り世間話をするように聞きだすのがコツで昨日何をしましたかと質問するのもよい。
昔の記憶 : 生年月日、出身地、結婚や子供の誕生日などを尋ねる。既往歴、職業歴をきく。ここで教育歴をきくのもよい。その年齢なら当然知っているはずの社会的事件についてきく。太平洋戦争、東京オリンピック、サリン事件等です。
<スライド 14>
見当識障害のアセスメント
見当識障害のアセスメントでは時間と場所について尋ねる。通常、時間の見当識が先に障害されることが多い。アルツハイマー病では記憶障害と平行して進行する。レビー小体病では見当識障害が前景に出て記憶障害よりも目立つことがある。 時間の見当識障害では年月日だけでなく季節や、時計を見ないで現在の時刻を言わせることも有用である。月は正確に答えても季節と全く食い違うこともあります。場所の見当識としては今いる場所、ビルなら何階にいるのか、自宅の住所、今住んでいるところ、自宅と今住んでいるところが一致するかどうか質問します。
<スライド 15>
判断・実行機能障害のアセスメント
家族から日ごろの行動について聞いておく必要があります。女性の場合、料理が適切にできているか、男性の場合、買物ができているかを聞くことが有用です。料理、買物ともに多くの判断と遂行機能を要するからです。このほかに電話をかける、移動・外出をする、薬の管理をする、お金の管理をするなどについてどの程度できているか確認しておきます。
<スライド 17>
原因疾患の同定の手順 (一般身体所見)
ビデオ
<スライド 32>
アルツハイマー型認知症と血管性認知症の主な鑑別点 アルツハイマー型認知症と血管性認知症の主な鑑別点は血管性認知症では病歴や画像が認知症と関連しているかどうかの判定がしばしば困難である。 神経症状があること、脳卒中の既往、発症様式が急激なこと、動揺性が重要です。
<スライド 事例1>
ここで主治医意見書の記載のしかたで使用した事例の認知症に関連した部分を見てみましょう。
この事例での生活機能低下の原因は平成2年高血圧をベースに脳出血を起こし右半身麻痺と失語症の後遺症が有ります。そのために言葉が出ません。脳血管性認知症の可能性もありそうです。
3.の心身の状態に関する意見では
(1)認知症高齢者の日常生活自立度はⅡaです。
(2)認知症の中核症状の短期記憶は問題あり 認知能力は見守りが必要なようです 伝達能力は伝えられないになっています 周辺症状には幻視・幻聴、昼夜逆転、介護に抵抗、火の不始末があります。 精神・神経症状は無しとなっています。 これから考えられる生活に支障をきたす認知症の程度としては物忘れがあり、買い物、金銭・服薬管理などにミスが目立ち、慣れた日課はなんとかこなせるが新しい状況に対応出来ず見守りが必要であり、一人暮らしは無理だと想像が出来ます。伝達能力は失語がありコミィニケーション手段が課題です。
スライドにも書いてあるように 提出される意見書によっては認知症高齢者の日常生活自立度から推察される生活状況と「認知症の中核症状・周辺症状」から推察される生活状況が大きく異なっている場合があり介護度認定の際に困るケースがあります。そこでチェックした根拠を5.の特記すべき事項に記載して欲しいのです。失語症が有りコミュニケーションに支障、一人で外来を受診して居ますが治療費支払い後にレシートを仕舞い忘れたと何回も窓口にやってくるなど事前の事を忘れ、何度も同じ事を言っています。家の中ではたまに薬の内服を忘れるようです。長谷川式簡易知能評価スケールは19点で中等度認知症レベルです。コミュニケーションおよび判断力の障害で状況判断が出来ず家族関係が悪くなり周辺症状の昼夜逆転、介護に抵抗などが出ている様子が分ります。
治療とケア編
<スライド 1>
早期発見、早期治療の意義
日本でのアルツハイマー型認知症の中核症状に対する治療薬はコリンエステラーゼ阻害薬の塩酸ドネペジル(アリセプト)です。初期効果では認知機能の改善が期待されます。長期的にはADLの維持に介護見守りの手間が減り患者本人や介護者のQOLの改善に効果があります。認知症の早期発見・治療開始の大切さを患者・介護者に説明する事と早期に治療を始める事が大切です
<スライド 2>
認知症の病気の説明
認知症の告知は患者本人の受け入れ、心理状態を考えて確実に認知症の診断がなされた後に行うべきです。早期で本人の意思・判断能力が保たれている時期であれば任意後見制度を利用し、本人の自己決定を尊重できる。将来このような方向に臨床現場が進むと予想されます。一般を対象にしたアンケート調査では認知症と診断されたら自分自身に開示して欲しいとの回答が多くを占めました。告知した後のフォローが大切で、うつや生活の変化、心理状態に注意して、場合によってはカウンセリング、心理的ケアが必要になる。配慮しながら診療を続ける必要があります。
<スライド 3>
告知の考え方
診療は、法律的に準委任契約、医療診療契約でどのような治療を選択するかは患者の自己決定権にゆだねる観点から医師は診療経過と病状について開示し報告する義務があります。治療を続けるうえからも大切なプロセスです。患者が告知に耐えられない精神状態であれば告知を控えます。