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高齢者の権利擁護は勿論、介護者を支援するためにも、地域において早期発見・見守りと同時に医療や法律の専門家も参加した専門的相談・介護支援を中心とするシステムを構築する必要があります。
<スライド 33> 高齢者虐待防止における医師の役割 高齢者虐待防止法では◇保健医療福祉関係者は高齢者虐待の早期発見や国や地方公共団体による高齢者虐待防止のための施策に協力すること ◇養護者や養介護施設従事者等により虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は市区町村や地域包括支援センターに通報する事とあります。医師にもこうした責務が課されています。 実際に起きた虐待事例をみると◇高齢者はかかりつけ医の受診機会が多い。「息子から頭を殴られた」と漏らした一言で「虐待の可能性」に気づいた事例があります。◇身体的虐待が疑われる場合には生命・身体の危険性や緊急性を医学的見地から判断することが必要です 。◇虐待者の中には行政や福祉関係者の意見は全く聞かないにも関わらず医師の指示には従うという事例も一部報告されています。また介護者は時に虐待を虐待と認識していない場合も有ります。そのような場合にはその行為は違法であり即刻やめ無いと警察が関る事になると警告するとびっくりしてやめる場合が多い。
<スライド 34> 地域啓発
認知症は病気であり隠すものではない。介護は家族だけでは大変であり地域の社会資源を最大限使って支援していかなければなりません。
来春から始まるNHK大河ドラマ篤姫の指宿ロケ地。多良浜、
<スライド 5>
患者に接する視点
1.認知症の患者さんは自己評価が困難で一見楽天的に見える。内部には深刻な不安を抱えて自信を失っており感情的に不安定になりやすい。家族にこの事を理解してもらう。2.認知症の患者さんは最も懸命に介護している人につらくあたる。たまに顔をあわせる人には驚くほど愛想よくふるまう。この点は認知症の介護を困難にしている大きな問題点です。
3.感情面は保たれており具体的体験は忘れてもいやな思いは残る。接するときの態度と口調には注意することが必要でどうせ忘れてしまうだろうとの対応は望ましくない。
4.異常行動には説明がついたり理解できることも多い。できるだけ理解しようとする姿勢が必要です。
5.認知症の患者さんは体調の変化をサインとして出して来る。いつもと様子が違う時には身体合併症の可能性を考えます。
<スライド 6>
外来時の対応
本人がもの忘れを訴えて受診した場合は生活の様子を詳しく聞く。日常生活上問題がなくても、MCIが介護予防の対象になる可能性があるので専門医に紹介します。 家族に付き添われて受診した場合、本人が診療を受けることに同意していない場合、本人の気持ちをゆっくりと聞き診察の必要性を説明します。 受付や診察時の行動の変化で認知症の可能性がある場合、家族から生活の様子を聞き生活上で困っている事はないか本人にそれとなく聞いてみます。
<スライド 7>
認知症の人への支援
もの忘れがあってもこれまでの生活を続けられるよう身体疾患の治療もふくめ必要時には専門医に紹介や相談しできる限りの治療や支援を行うことを伝えます。認知症の初期にはもの忘れの自覚が強く生活上のトラブルも増えて抑うつ的になっている。もの忘れを自覚する辛さを受け止め残った能力は十分あることを伝える。早期は勿論かなり進んでも会話に対する理解力は残っています。本人のいる前で家族に「症状がひどくなってきたね」など聞いて不安になるような病状説明は避けます。家庭での役割を持たせ可能な範囲での社会参加や通所介護の利用によって現在の能力の維持、情緒の安定、対人交流・社会性の促進などをはかります。
<スライド 8>
家族への支援
専門医、ケアマネジャー、ケア・スタッフなどと供にかかりつけ医が協力体制をとることは介護家族への大きな精神的な支えになります。社会資源を上手に活用することが介護負担の軽減につながることを伝えます。介護負担や不安を軽減するように介護者の話をじっくりと聞きます。
介護者にとって介護仲間の存在とお互いに助け合うことは大きな支えとなります。身体疾患の治療は、治療薬の投与回数を減らし、往診をするなど介護家族の負担を少なくします。
<スライド 10>
アルツハイマー型認知症の薬物療法
認知症の症状に対する薬物療法に中核症状に対する物と周辺症状に対する薬物療法の2つを区別しておかなければならない。
治療開始時には、中核症状に対する薬物療法が可能であることを伝える。周辺症状がない場合でも、経過中必要に応じて薬物治療が可能であることを伝えておく。
<スライド 11>
中核症状への薬物療法(意義と薬効)
アリセプトの効果
アリセプトの投与でアルツハイマー型認知症の症状を数ヶ月から1年くらい改善させて進行を遅らせます。服薬を中断すると急激な悪化が生じる可能性があります。介護者や患者の薬物療法の正しい理解が治療への第一歩です。投与後直ぐに改善がみられなくても、長期的には進行を遅らせる可能性があります。
<スライド 22>
認知症ケア
周辺症状は薬物の副作用が原因である事もあり効いていない抗不安薬や睡眠薬などは一旦中止してみます。訴えの無い認知症患者の身体不調の診察はかかりつけ医の役割であり感染症、脱水、便秘などによって周辺症状が現れまた悪化します。 攻撃性や興奮は不適切な介護者のケアが原因であることも多く介護者のケアに問題が有ると思われる場合はショートステイなどを利用することも考慮します。以上の対応によっても改善せず本人のQOLが落ちる周辺症状には薬物治療を行ないます。
<スライド 27>
周辺症状に対する薬物療法
周辺症状の第1選択は適正なケアであるが薬物療法が有効な事も否定できません。妄想すなわち抗精神病薬投与とは限りませんが明らかなうつ状態やせん妄、睡眠障害がある場合には薬物療法を考慮します。
<スライド 28>
周辺症状に対するケアの試み
感情面を改善させて周辺症状の軽減をはかるためにデイケアやデイサービスなどでは多くの非薬物療法が試みられます。 行動に焦点をあてた療法は、周辺症状が特定の対応やイベント、環境などで現れることが確認された場合には行動面から関わっていく方法です。 感情に焦点を当てた療法に回想法があり刺激に焦点をあてた療法に音楽やペットなどを用いたレクリエーション療法、芸術療法、園芸療法などが有ります。
連携編
<スライド>
認知症サポート医とかかりつけ医の役割・連携体制
地域包括支援センター本来の機能に加え重要な事は外部の様々な支援体制を有機的に繋ぐ役割です。地域の認知症高齢者の早期発見・早期支援には日常診療での気づきをきっかけにして地域包括支援センターに繋ぐ方向 医療⇒介護 総合相談・予防ケア・マネジメントなどの地域支援ネットワークからかかりつけ医に繋ぐ方向 介護⇒医療 の双方向の連携体制が期待されます。同時に市町村、都道府県、サポート医、専門医療機関を含めた体制作りが不可欠です。かかりつけ医は「早期段階での気づき」「家族に対する理解や支援」とともに地域連携の発信者として最も相応しいのです。
<スライド 2>
ケアの基本
認知障害が進行しても感情的な機能は保たれます。しかし環境変化に適応するのが難しい認知症高齢者の特徴を踏まえて、日常生活の中で「生活そのものをケアとして組み立てる」事が望まれます。それには
① 環境の変化を避け、それまでの暮らしが続けられる配慮をする。
② 介護する側の決めた日課に沿った関わりでなく高齢者一人ひとりのペースに合わせたゆったりした支援スタイルにして安心感・安定感の醸成に心がける。③ 一人ひとりの心身の力を最大限に引き出し(エンパワーメントといいます)充実感のある暮らしを構築します。
<スライド 3>
生活圏を基本としたサービス体系の構築 1.できるだけ自宅の規模を大きく逸脱しない小規模な居住空間2.家庭的な雰囲気・設えを工夫3.少人数の高齢者を少人数のしかも同じ顔ぶれのスタッフが支えるなじみの関係4.住み慣れた地域で必要な支援を受けながら暮らし続けられる日常生活圏域を基本としたサービス体系の構築です。 サービスとして① グループホーム、②小規模多機能型ケアサービス③大きな施設の機能を積極的に地域に展開し施設そのもののあり方を問い直しユニットケアの普及に向けた施策を行なうことです。
<スライド 4>
介護保険の給付対象サービス
介護保険サービスには居宅サービスと市町村保険者が地域事情に応じて整備する地域密着型サービスの小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護、グループホームに施設サービスがあります。認知症に関しては地域密着型サービスがますます重要視されており施設サービスは難しくなると思われます。
<スライド 5>
地域密着型サービスの特徴
介護保険の見直しでは、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることを支援するため、日常の生活圏域を基本とする「地域密着型サービス」という仕組みが新設されました。このサービスは、主として市町村圏域内が原則です。 ①市町村は「必要利用定員総数」を設定し、サービス事業者の指定、指導の権限を持ちそこの住民だけが対象となります。②市町村は、一定の範囲内で指定基準及び介護報酬の変更を行うことができ 入所定員29名以下の小規模特養、定員29名以下の介護専用特定施設、グループホーム、認知症専用デイサービス、小規模多機能型居宅介護、夜間対応型訪問介護の計6種類があります。
<スライド 6> 解説文は、前のスライドで
<スライド 10>
介護予防システムの全体像
地域包括支援センターは介護予防ならびに地域支援事業を行う。新予防給付の対象者は要支援1と2の認定者で、運動器機能向上、口腔機能向上、栄養改善の3つのサービスがある。
認知症の場合は介護予防の対象から除外されるため包括支援センターが地域支援事業で特定高齢者をスクリーニングして通所系サービスで認知症介護予防が行われることになる。
<スライド 11>
介護予防サービス
介護予防サービスは、介護保険サービス事業者が行う新予防給付と市区町村が行う地域支援事業に分かれています。 新予防給付では、「本人ができることはできる限り本人が行う」生活自立支援を行うほか、「運動器の機能向上」、「栄養改善」、「口腔機能の向上」といったサービスを導入しました。 地域支援事業では、介護予防サービスを「特定高齢者」、運動器の機能向上、栄養改善、口腔機能の向上といった介護予防サービスを提供するほか、閉じこもり・認知症・うつの疑いのある高齢者を対象にした訪問・通所サービスを行い、さらに地域の高齢者全体に対し、介護予防に資する普及啓発や健康教育、健康相談にも取り組んでいます。
<スライド 14>
相談窓口
認知症の相談窓口は、医療関係、保健関係、福祉関係、介護経験者等に分けることができます。医療関係ではもの忘れ外来など診断や治療と並行して相談に応じており保健関係では保健センターや精神保健福祉センター等があり保健師等の専門スタッフが相談に応じ関係機関とも連携する体制があります。福祉関係では、市町村に設置される地域包括支援センターや社会福祉協議会、介護経験者等の団体では「認知症の人と家族の会」がありほとんどの都道府県には支部があり相談事業等の活動が行われています。
<スライド 17>
ケアマネが主治医意見書から知りたい情報 適正な認知症の人のケアプラン作成には①認知症の診断名、発症年月日②その他の現病や合併症③認知症や現病の治療内容④認知症の程度(認知症スケール結果等)⑤行動障害の具体的内容⑥注意障害や視空間認知障害の有無⑦介護に関する意見 など医学的観点からの介護の手間や状況を具体的に記入した意見書は実情に即したケアプランおよびサービス提供に役立ちます。
<スライド 22>
サービス担当者会議と多職種協働 サービス担当者会議でのかかりつけ医の役割は、身体状況、投薬内容や副作用なりやすい病態と対処方法、留意事項など情報とアドバイスが求められます。
認知症高齢者を支える制度
<スライド 29>
新しい成年後見制度①任意後見制度が設けられました。本人に判断能力があるときに後見人を選出し後見の内容を自己決定することが出来ます。財産管理以外にも身上監護(医療、住居の確保、施設の入退所など介護、生活維持、教育、リハビリなど)が含まれます。②補助類型が追加されました。軽度の認知症、知的障害、精神障害に対応して本人の申し立てや意見をもとに補助人の権限の内容や範囲を自由に選ぶことが出来ます。③財産管理から身上監護を中心とした制度になりました。法人後見あるいは複数後見が可能となり後見人、保佐人、補助人、任意後見人のすべてに身上配慮義務を果たす規定が設けられました。④これまでの戸籍への記載が廃止され、成年後見登記制度が新設されました。⑤これまでは親族に限られていた申し立て権が市区町村長にも付与されました。このことは「介護の社会化」に対応して「後見の社会化」といわれます。
<スライド 7>
なぜ認知症を無視できないのか その一例を示します。
道路交通法の改正で主治医の診断書を提出、免許の取消および停止の申請が可能となりました。かかりつけ医が「自動車運転は危険を伴うので控えた方がいい」と考える場合、本人や家族への的確なアドバイスをすれば免許更新時その旨の意思表示をすることができます。かかりつけ医が運転の危険性について十分な説明をおこたった場合に人身事故が起これば“説明報告義務”違反の民事責任を問われる恐れが有ります。
<スライド 10>
家族がかかりつけ医を受診した時の理由です。周辺症状BPSDの行動症状である徘徊や心理症状のもの取られ妄想などを理由として受診した割合が30~40%にものぼっています。
<スライド11>
一方、中核症状の物忘れのみを理由に受診している割合は3.7%に過ぎません。いかに認知症の人が早期に受診していないか家族の認識の低さを示す結果です。
<スライド 17>
疫学調査での「認知症」と診断された人の家族が気づいた日常生活上の変化を頻度順に示してあります。このような変化が半年前にくらべ目立つようであれば認知症を疑って良いでしょう。問題は家族がいなければこのような変化は気づかれ難く、現在65歳以上の4割が単身もしくは高齢世帯で今後ますます増加して家族に情報を求めることが難しい状況です。かかりつけ医が本人への問診を通して認知症を診断する能力が求められます。
<スライド 18>
認知症の主体は認知機能の障害で中核症状と呼びます。それに続発・併存して様々な行動・心理症状BPSDがみられ周辺症状と呼びます。中核症状は記憶障害を始め判断力低下、見当識障害、失語、失行、失認などがみられます。周辺症状にはせん妄、抑うつ、興奮、徘徊、睡眠障害、妄想などの症状がみられます。周辺症状は介護の上で問題となります。環境の調整、対応の工夫な対症的な薬物療法で改善します。 近年ICFの導入により生活機能の障害を認知症にも取り入れらている。もともと認知症の定義には生活の支障がでて、支援が必要となる状態といわれている。ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)国際生活機能分類。
<スライド 22>
認知症と間違えられやすい状態
認知症と間違えられやすい状態には加齢に伴う物忘れ、うつ病、せん妄などがあります。うつ症状やせん妄は認知症の症状として現れることもあり鑑別が必要です。認知症はせん妄の危険因子でもあり、そのリスクはおよそ2倍です。うつ病はアルツハイマー型認知症の危険因子でもあります。診断が困難な場合は専門医へ紹介するのが良いでしょう。薬物による意識変容なども間違えられます。
<スライド 23>
普通の物忘れ
生理的もの忘れは半年や1年で進行することは有りません。認知症は進行し本人は自覚していないが、家族に1年前と現在の物忘れの状態をくらべて貰えばわかりやすいです。もの忘れの内容は、生理的もの忘れが体験の一部なのに対して認知症では体験のすべてを忘れてしまいます。例えば、結婚式に出席した際に隣に座っていた人の名前を思い出せないのが生理的忘れで、出席したこと自体を忘れるのが認知症で見当識障害の時間の失見当がみられます。
<スライド 24>
うつ状態
うつ状態とアルツハイマー型認知症との大きな違いは発症時期です。 うつ病では何らかの契機が認められて通常は長くて数ヶ月前からの発症です。うつ状態では症状を強調します。認知症では過小評価しており、とりつくろう様な答えはアルツハイマー型認知症の特徴です。顕著となると作話になります。内容もうつ状態では自責的となり認知症では他罰的となります。この結果がもの盗られ妄想につながります。
<スライド 25>
せん妄
せん妄との大きな違いは起こり方でせん妄は何月何日と特定できるほど急性に起こります。認知症は緩徐に発症します。また、夜間に増悪することが多く、夜間せん妄ともいわれます。注意力の散漫した意識障害と幻視および運動不穏をせん妄の三徴といいます。高齢者では幻視を伴わないこともあり、通常は運動不穏のために多動となることが多いが、多動状態を伴わない場合もあります。
<スライド 28>
代表的なアセスメントツール
質問式、観察式 それぞれの代表的なツールを紹介します。 質問式には、認知症のスクリーニングを目的とした簡易テスト的ツールとして、
①改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
②ミニメンタルステート検査(MMSE)が挙げられる 。
観察式は主に患者さんとの問診や家族・介護者からの情報によって評価しツールとして
① Clinical Dementia Rating(CDR)、
② Functional Assessment StagingFAST(FAST)、
③ 初期認知症徴候観察リスト(OLD)の3つが代表的です。確定診断前の気づきを高めるツールとして活用できます。
<スライド 35>
OLD
OLDはオランダのかかりつけ医グループが外来診療での認知症の気づきを高めるために作成したツールです。日にちを忘れるなどの忘れっぽさ、同じ話をする会話の繰り返し、言葉が出てこない、会話が理解出来ないなど文脈理解の障害、時間が分らない、家族に依存、辻褄あわせの作話など12項目から構成されている。4項目以上該当した時に認知症が疑われる。ある程度習熟すれば12項目にはこだわらないでアセスメントできるようになります。
診断編ビデオ
<スライド 2>
認知症を呈する病気
認知症を呈する疾患は多い。病気を疑い検査を進めるべきです。検査機器などの問題や専門外の疾患なら専門医に紹介します。神経変性性疾患、脳血管障害、脳炎などの感染症、脳腫瘍、外傷性高次機能障害、中枢免疫性疾患、正常圧水頭症の髄液循環障害、内分泌障害、中毒・栄養障害などがあります。
<スライド 3>
主要な認知症
代表的なものにアルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型認知症があり、治療可能なものに甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、ビタミン欠乏症がある。初診時に検査を行い治療可能な認知症を鑑別する必要がある。
<スライド 12>
中核症状のアセスメント
質問には、あらかじめ家族から日常生活の行動に関する情報を得ておく必要があります。矛盾が生じた場合に患者がそれを認めるかどうか、言い訳をして取り繕うかどうかが診断の重要なポイントとなり家族からの情報で重要なのは1)以前無かった症状?2)症状が出現してきたのはいつごろ? の2点です。以前は無かった症状が出現し、悪くなって来た、出てきた時期がいつと断定出来ない等、情報が得られた時には、変性性認知症の存在が疑われます。失行、失認では家族はおかしなことをする、わざと変なことをすると分っていても症状とは認識していないことがあるのでおかしな行動をするという訴えがある際には、着衣失行、構成失行、半側空間失認、肢節運動失行の存在を疑います。
<スライド 13>
記憶障害のアセスメント
あらかじめ家族から情報を得ておくのが良いでしょう。
最近の記憶:どのような交通手段で受診したかをききます。できる限り世間話をするように聞きだすのがコツで昨日何をしましたかと質問するのもよい。
昔の記憶 : 生年月日、出身地、結婚や子供の誕生日などを尋ねる。既往歴、職業歴をきく。ここで教育歴をきくのもよい。その年齢なら当然知っているはずの社会的事件についてきく。太平洋戦争、東京オリンピック、サリン事件等です。
<スライド 14>
見当識障害のアセスメント
見当識障害のアセスメントでは時間と場所について尋ねる。通常、時間の見当識が先に障害されることが多い。アルツハイマー病では記憶障害と平行して進行する。レビー小体病では見当識障害が前景に出て記憶障害よりも目立つことがある。 時間の見当識障害では年月日だけでなく季節や、時計を見ないで現在の時刻を言わせることも有用である。月は正確に答えても季節と全く食い違うこともあります。場所の見当識としては今いる場所、ビルなら何階にいるのか、自宅の住所、今住んでいるところ、自宅と今住んでいるところが一致するかどうか質問します。
<スライド 15>
判断・実行機能障害のアセスメント
家族から日ごろの行動について聞いておく必要があります。女性の場合、料理が適切にできているか、男性の場合、買物ができているかを聞くことが有用です。料理、買物ともに多くの判断と遂行機能を要するからです。このほかに電話をかける、移動・外出をする、薬の管理をする、お金の管理をするなどについてどの程度できているか確認しておきます。
<スライド 17>
原因疾患の同定の手順 (一般身体所見)
ビデオ
<スライド 32>
アルツハイマー型認知症と血管性認知症の主な鑑別点 アルツハイマー型認知症と血管性認知症の主な鑑別点は血管性認知症では病歴や画像が認知症と関連しているかどうかの判定がしばしば困難である。 神経症状があること、脳卒中の既往、発症様式が急激なこと、動揺性が重要です。
<スライド 事例1>
ここで主治医意見書の記載のしかたで使用した事例の認知症に関連した部分を見てみましょう。
この事例での生活機能低下の原因は平成2年高血圧をベースに脳出血を起こし右半身麻痺と失語症の後遺症が有ります。そのために言葉が出ません。脳血管性認知症の可能性もありそうです。
3.の心身の状態に関する意見では
(1)認知症高齢者の日常生活自立度はⅡaです。
(2)認知症の中核症状の短期記憶は問題あり 認知能力は見守りが必要なようです 伝達能力は伝えられないになっています 周辺症状には幻視・幻聴、昼夜逆転、介護に抵抗、火の不始末があります。 精神・神経症状は無しとなっています。 これから考えられる生活に支障をきたす認知症の程度としては物忘れがあり、買い物、金銭・服薬管理などにミスが目立ち、慣れた日課はなんとかこなせるが新しい状況に対応出来ず見守りが必要であり、一人暮らしは無理だと想像が出来ます。伝達能力は失語がありコミィニケーション手段が課題です。
スライドにも書いてあるように 提出される意見書によっては認知症高齢者の日常生活自立度から推察される生活状況と「認知症の中核症状・周辺症状」から推察される生活状況が大きく異なっている場合があり介護度認定の際に困るケースがあります。そこでチェックした根拠を5.の特記すべき事項に記載して欲しいのです。失語症が有りコミュニケーションに支障、一人で外来を受診して居ますが治療費支払い後にレシートを仕舞い忘れたと何回も窓口にやってくるなど事前の事を忘れ、何度も同じ事を言っています。家の中ではたまに薬の内服を忘れるようです。長谷川式簡易知能評価スケールは19点で中等度認知症レベルです。コミュニケーションおよび判断力の障害で状況判断が出来ず家族関係が悪くなり周辺症状の昼夜逆転、介護に抵抗などが出ている様子が分ります。
治療とケア編
<スライド 1>
早期発見、早期治療の意義
日本でのアルツハイマー型認知症の中核症状に対する治療薬はコリンエステラーゼ阻害薬の塩酸ドネペジル(アリセプト)です。初期効果では認知機能の改善が期待されます。長期的にはADLの維持に介護見守りの手間が減り患者本人や介護者のQOLの改善に効果があります。認知症の早期発見・治療開始の大切さを患者・介護者に説明する事と早期に治療を始める事が大切です
<スライド 2>
認知症の病気の説明
認知症の告知は患者本人の受け入れ、心理状態を考えて確実に認知症の診断がなされた後に行うべきです。早期で本人の意思・判断能力が保たれている時期であれば任意後見制度を利用し、本人の自己決定を尊重できる。将来このような方向に臨床現場が進むと予想されます。一般を対象にしたアンケート調査では認知症と診断されたら自分自身に開示して欲しいとの回答が多くを占めました。告知した後のフォローが大切で、うつや生活の変化、心理状態に注意して、場合によってはカウンセリング、心理的ケアが必要になる。配慮しながら診療を続ける必要があります。
<スライド 3>
告知の考え方
診療は、法律的に準委任契約、医療診療契約でどのような治療を選択するかは患者の自己決定権にゆだねる観点から医師は診療経過と病状について開示し報告する義務があります。治療を続けるうえからも大切なプロセスです。患者が告知に耐えられない精神状態であれば告知を控えます。