平成19年10月25日県医師会館で第9回禁煙支援学術講演会が開催された。2006年4月の診療報酬改定で「ニコチン依存症管理料」が設けられ喫煙は嗜好の問題ではなくニコチン依存症と言う病気として国が認め禁煙治療を健康保険で受けられるようになった。現在、本県では約80医療機関が禁煙治療の届出をして指定を受けている。夫々の医療機関で実施するに当たり少なからず戸惑う部分も有るか考え整理する意味で産業医研修会も兼ねて研修会を開いた。講師に早くから禁煙指導に取り組み、積極的に禁煙治療を行なっている施設の先生を招聘した。まず鹿児島市の有馬新一クリニックの有馬新一先生と松本医院・松本英彦先生が事例発表を行ない、つづいてNPO法人・京都禁煙推進研究会の理事長の田中善紹先生が「禁煙治療の実際」と題して特別講演を行なった。京都禁煙推進研究会は禁煙普及を目的として1998年に発足している。田中先生は京都で1600年続く紅葉で有名な光明院第25代住職であり境内にある田中医院の院長でもある。京都には各所に縁切り寺が多いが先生は自院を煙切寺と言って憚らない。田中医院での昨年4月~今年5月までの1年間での禁煙治療受療者は91名であり、その中で保険外対象者は12名で保険対象者が79名その中の32名(40%)が禁煙に成功している。同期間の全国調査での禁煙成功率は32.6%である。ニコチン依存症は病気であり治すことが出来る。今なぜ禁煙治療なのかと言う問いに対する答えは、高血圧、高コレステロールが治療の対象となるのは動脈硬化性疾患の予防のためである。同じように喫煙も動脈硬化の危険因子であり肺がん、喉頭がん、食道がんはじめ多くの全身がんの原因で、その30%に関与している。ところで高血圧は血圧値が病気の指標で治療としては食事に運動それに薬の内服であるが喫煙には呼気CO濃度、尿中ニコチン量の指標があり、治療としてニコチン製剤や日本では現在のところ使われていなバレニクリンなどがある。ニコチン依存症の診断にはTobacco Dependence Screener(TDS)が使われる。5点以上は依存症であり現在喫煙している人の調査では53.9%すでに依存症であった。管理料対象患者の要件はTDS5点以上、ブリックマン指数(1日喫煙本数×喫煙年数)が200以上、直ちに(1ヶ月以内)に禁煙を希望し、禁煙治療プログラムの説明を受けて参加文書に同意している者である。ブリックマン指数についてはタバコをなくす運動の対象として大切な若年者が該当しないので次の改定では省かれ新しいスタイルになる可能性が強い。施設基準は社会保険事務所に届出を行い院内に禁煙治療をしている旨、掲示する。禁煙治療の経験医師が1名以上(非常勤でも可)勤務している。禁煙治療に係る専任の看護師または准看護師を1名以上配置しているとなっているが兼務でも可能である。呼気―酸化濃度測定器を備えている事と有るが16万円前後で厚労省が認可した器械が手に入る。医療機関は敷地内禁煙でなければならない。届出さえすれば誰でも禁煙治療は行なえる。これまでに禁煙ブームには3つの山があった。‘94年のニコチンガムのニコレットに’99年のニコチンパッチの発売があり‘06年の禁煙治療の保険適応がある。’06.5月以降には禁煙治療施設数と受診者数が急速に伸びた。 ’06年11月に全国501施設(病院90、診療所410)の新患者数1463人の調査では、1ヶ月間に一医療機関当たり病院3.48人、診療所2.8人、全体で2.92名であった。田中医院での新患は去年6月には20名であったが1年後の5月は5名に減っている。禁煙指導には時間を要する上、採算が取れるには1ヶ月5人以上の新患が必要である。私は禁煙出来た人からは非常に喜んでもらえて禁煙外来は楽しいのでボランティアの気持ちで行なっている。禁煙運動にはマスコミの力が大きい。ブームで終わらせないでむしろ火を点ける運動が必要である。禁煙治療のポイントは肩を張らないで心を楽に始める事である。研究会のパンフレットには楽々卒煙アイウエオの標語を使用している。㋐明るく止めよう。必ずいいことが有る。㋑一気に。気合が勝負を決める。一週間頑張りましょう。㋒動いて。水を飲む、深呼吸。㋓えんを結んで。ニコチン代替。㋔おきあがりこぼし。七転び八起き。パッチは何時張るのがいいのだろうか?朝、毎日張り替えるのが標準であるが不眠や寝起きのムカつきがある場合、夜寝る前に剥す。依存度が高い人、朝寝起きに一服する人には夜寝る前に張る。副作用が出ればガムを使用するか途中で剥しても良い。ニコチンは皮下に保留されるので血中濃度は保たれる。6時間だけ張ってそのあと剥いだとしても24時間は効果が残る。パッチとガムの併用も問題ない。個人の使用感に応じて使うのが良い。初期のスタートダッシュが必要であり十分量を使う。女性は20TTSから始めたほうが良い。ニコチンパッチの使用枚数は1年間禁煙できた人の平均で22枚であった。田中医院の遣り方は、初診は予約制をとり初回の指導を20~30分間行っている。パッチは次の再診日までの1日1枚あて7~14枚処方する。初回は家族同伴が効果的である。2回目は予約なしの、患者さんの都合で1週間~2週後に来てもらい10~15分間の指導とパッチの7枚~14枚を処方する。3回目は1ヶ月後に来てもらい1ヶ月の禁煙が出来た人にはパッチはやらない。どうしても必要ならニコチンガムで補うのが良い。4回目は2ヶ月後を目安に都合で再診してもらい5回目の3ヶ月後に禁煙を確認している。一年後に葉書で禁煙を確認している。初診時、再診時の指導は主に看護師が行う。再診以降のポイントは呼気CO濃度の正常化を示し褒めると供に禁煙で体調の良くなったことを自覚させる事である。途中のつい1本でタバコに手を出さないようにさせる事が大切である。前にも述べた様にニコチン製剤は個人の使用感を参考にあして必ずしもプログラム通りでなく適宜変更する。体重増加に対する指導をしておくのは重要である。再診は簡単なアドバイスのみで十分の事が多い。また失敗しても今回の失敗を教訓に再挑戦する様に勧める。いずれにしても禁煙は動機付けが重要であり、一般外来の診察でもタバコ喫煙者に2~3分のアドバイスを行なうなど啓蒙をはかりタバコのない環境整備も大切である事を強調された。




京都禁煙推進研究会のマーク。肺に扮したDr.和尚さんが憎っくきタバコを一刀両断にあだ討ちしている。



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