人生の旅情~ある講演会から(2) さる6月5日にメディポリス指宿であったホリステック医療講演を聴講した。講師は川越市にある医療法人真心会帯津病院名誉院長の帯津良一さん。200人ほどの聴衆を前に「場と旅情~医療という場のエネルギーを高めるために~」と題して統合医療の考え方と方法論について自分の経験を交えて講演した。帯津さんは東京大学医学部を卒業して今の癌センターの前身、駒込病院で外科、特に食道癌手術を手がけた。しかし治療の結果が悪く科学的エビデンスをもとにした西洋医学の限界を感じた。このままでは患者を救えないと悩んだ末に思いついたのが人間の自然治癒力を基本にした中国医療であった。一応勉強をして始めては見た物の共鳴する仲間がなかなか現れなかった。そこで独自に実践するために自分の病院を開業した。西洋医学は勿論大切にするが西洋医学ばかりに頼って深追いするのではなく、心と体を1つの人間として丸ごとひっくるめてアプローチするホリスティク医療を取り入れて実践してきた。現在は国内に多くの共鳴者を得ている。ホリスティク医療の発祥の地はドイツであるが東洋の中国、チベット医療の影響も大きい。人生は生老病死から成り立っている。その過程で生じる苦痛や苦悩からの開放も治療の1つである。元来、人間は悲しみを纏った存在と言う認識が大切である。病人の悲しみの理解と共感は治療者としての大切な要件でもある。学生時代に英語の授業でサマーセットモームの原著を訳しノートに書かせるだけの先生がいた。普通なら学生にとっては退屈な授業の筈であるが意外と人気があった。それは人間はいつかは故郷に帰ると言うホームカミングをテーマにした小説コスモポリタンが教材であったからだと納得したそうである。そこには猛々しい感情など微塵も無い穏やかな世界が広がっていた。私の場合も教養時代の英語の講義はサマーセットモームが教材であったので興味深く聞き入った。自然科学の視点から捉える西洋医学を駆使しても治らない病気も多い。それを抱えた人をどのように救うかも医療人に課せられた義務である。いわば人生の旅情ともいえる悲しみに共感しえる志や覚悟を持った医療人が求められている。その様な雰囲気の場とエネルギーが必要であると結んだ。私もかつて癌の外科治療に携わっていただけに共感出来る部分も多く有意義であった。
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