幽霊トンネルから家に向かう道すがら、なんとなく鬱屈した気分が続いていた。何の気もなく通った道の途中に大きい神社が目につきお宮参りでもして見ようとの気になった。特別行事のない休日の境内は閑散としていた。朱色の柵の内側に植えられた白梅が満開で気分も晴れてきた。今年の正月は色々な事が重なり、とうとう初詣もしていなかった。遅ればせながら社務所に立ち寄り自分の分と他所に居る子供たちの分までお守りを買った。礼拝を済ませしばらく境内を散策して車に帰りドアを開けて乗り込もうとした時、何時の間に、何処から現れたのか、リュックを背負った東南アジア系の若い男性と日本人の女性が現れた。私に向かって女性がその外国人と握手してくれという。何の意味があるかわからなかったが一応握手した。するとこれで私たちは友達になれたのでお願いがあると言う。自分たちはカンボジアで地雷を処理するボランティア団体の一員で、今日本で募金活動中で南の鹿児島まで来た。私たちが持っている刺繍入りTシャツと引き換えに1万5千円の寄付をお願いしますとの事であった。リュックから出したTシャツは見るからに粗末なものであった。握手などと言葉巧みに騙すつもりだと気付いた私は金が無いと断った。いくら言っても引き下がりそうにない。最後には3千円でも良いと来た。私は他の方法で寄付はしているのでと突っぱね、やっと諦めて貰った。危害を加えられそうな気もしたが何とか切り抜けられた。諦めた彼らは次の獲物を探して別の車の方に、獣が獲物を狙うように遠回りして近づいて行った。折角憑き物落としにお参りに行った神社で大変な災難にあってしまった。家で静かに過ごす方が無難と急いで帰る途中に私のクリニックの当番の看護師からの携帯電話が鳴った。恩師が亡くなられたとの伝言であった。
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