今から十五年前になる。開院の朝は良く晴れてクリ二ック玄関のガラス張りの風除室には所狭しと開業祝いに贈られた生花が並べられていた。朝の光が一層その華やかさを際立たせていた。花束に囲まれた真新しいタイルの土間に白い一通の封書が届けられていた。送り主を見ると恩師からで、配達は開業の日の朝にと指定されていた。中に開業祝いのカードが入っていた。敬愛してやまない恩師の手紙がクリ二ック初の来客となった。期待と不安の入れ混じった複雑な気持ちで迎えた開院日の朝に見覚えのある文字を見た途端に目頭が熱くなった。恩師の暖かい手が背中を押してくれたような気がした。あれから順風満帆とは行かないまでもなんとかやって来れた。これも卒業して右も左も分からない青臭い私を医療技術は勿論、人間としての医者としての考え方、あり方を叩き込んでくれた恩師のお陰である。今年も、元気なお姿の写真入り年賀状を頂いた。心の支えとしている恩師が御健在な事が一番オの励みと感謝していた矢先に、昨日の昼、外出先で恩師の訃報を知った。
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