今年は亥の年。かごしま水族館では毎年年末年始に干支に因んだ魚を展示している。今年は「猪の子」を選んだ。「猪の子」はコトヒキの幼魚でイノシシの子の「ウリ坊」にそっくりである。猪の子は流れの速い小川の川底を集団で縫うように泳いでいる。人影に気付くと弾かれた様に逃げ去る。私はこの話を聞いて「猪の子」と遊んだ幼い日を思い出した。遊び仲間の少なかった私にとってある時期「猪の子」が友達でもあった。家からそう遠くない田んぼの真ん中を1本の比較的水量の多い小川が流れていた。周りの人々は流れが速いことから「ながれこ」の愛称で呼んでいた。上流のあちこちで湧き出る温泉水も流れ込み河口付近で大きな別の川と合流して海に注いでいた。そのため海の満ち引きの影響も受けていた。おそらく海から遡上して来ていたのだろう。母が近くで農作業をしている間、私は堤防でひたすら遊んだ。小川といっても子供にとって堤は深いし流れも速かった。はじめの頃は水底の猪の子や小エビをながめては小石をぶっつけたりする事ぐらいであった。私には年の離れた兄がいる。すでにその時分は私と一緒に遊ぶには大きすぎたが、もっと小さい頃はしょっちゅう魚釣りに連れて行ってくれていた。そのおかげで釣りの仕方は見様見真似で知っていた。無性に猪の子を取りたくなった。釣り針にミミズを付けて何時間でも挑戦した。猪の子はすばしっこく子供の私には到底釣れるそうもなかった。その代わり小さなうなぎが良く釣れた。しかしこれが厄介物で釣り上げた途端に体をよじり釣り糸に巻きついてしまい、外すのに時間がかかった。猪の子を釣ったはっきりしたおぼえは無い。その姿かたちはよくしっている。水からつり上げたときキュウキュウとなくのもなんとなく覚えている。不思議ではある。釣れた事もたまには有ったのに、余りにもすばっこい魚なので取れたはずが無いと思い込んでいるせいかもしれない。ホンの4~5年前のことであるが釣りの巧い中学校時代の同級生とイカ曳きに行った。イカの餌には生きている猪の子を使うため、まず河口で猪の子を釣る事から始めた。彼は瞬く間に数匹いとも簡単に釣り上げた。その時、猪の子が、キュッキュッと鳴いた。そのときとダブったのかもしれない。今も私が遊んだ小川はある。しかし周りはすつかり宅地となり排水溝から汚水が流れ込み魚の住めない川になってしまっている。覗いても猪の子の姿は無い。
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