平成15年12月に会誌に投稿した文章です。3年経っても何も事態は動いていない。
沢山の重苦しい問題を引き摺りながら今年も終わろうとしている。北朝鮮の拉致,核問題,イラク崩壊,エイズ蔓延など年越しになる。前者は世界歴史の曲がり角の残渣であり,後者は神の領域を超えるばかりの現代医学が忘れた影である。しばらくは,その因果に畏をもって耐えるしかないであろう。国内の財政低迷に源を発する社会不穏の連鎖は目を覆うばかりである。
それに対応する官民の寛容の無さにも生きる勇気を失う。改革一色の医療システム再編は我々に蜂の巣をつついた如き混乱をもたらしている。しかし私たちは自信を失ってはならない。私達医師の大部分が地域に根をおろし住民の命を守っている。現場を無視した,いかなる制度改革が押し進められようと,医師として信念を持って培ってきた住民との間の相互信頼は揺るがない。また私自身これまでの遣り方を変えるつもりもない。地域医療は,住民が主体となり医師の持てる技術を引き出し育てた手作りの地域の生活文化である。全国一律の机上のお仕着せが通用する筈も無い。顔の見える住民の信頼があればこそ夜中でも,疲れていても診療に頑張る。これが地域に生きる医師の使命である。私は10年前の医師会報に駄文を寄稿した。大事な社会保障である医療分野にも経済衰退の影響が現れ出した頃で,医療費抑制として保険医の定年制が囁かれた。まさに寝耳に水であったので貧すれば鈍すだと切って捨てた。大きな幹の木の梢は青々と息づいている。梢のボリュームなくしては幹も育たない。
地域医療こそ梢であり日本医療の原点である。今まさに,住民と共に医療のあり方を考える時である。
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