高齢化につれ増え続ける慢性期医療をどうにかしようと療養病床は導入された。地域によっては全病床を在院日数制限の厳しい一般病床ではなく報酬面で有利な療養病床にした方が経営上は楽な場合が少なくない。しかし地域医療の為には外来診療をし、地域連携の休日診療、在宅救急当番も引き受けざるを得ない。そして急性期入院に対応する必要もあり、一般病床の赤字を他の療養病床や介護サービス事業の利益で補填しているのが実情であろう。医療改革関連法に療養病床削減が盛り込まれた。厚労省は療養病床の実態調査をして医療提供が殆ど必要ないか週1回程度の患者を8割と判断している。そして6年間の経過措置で医療必要度の低い療養病床をコストの割安な老人保健施設、有料老人ホームや在宅療養に移して、2012年3月迄で介護型13万床を全廃、医療型25万床を15万床まで削減する方針である。その先鞭として平成18年4月療養病床診療報酬の医療区別の改定が行われて7月から実施されている。患者の「医療の必要性」が高い方から医療区分3、2、1、さらにADL区分でも評価して一日あたりの入院料が決まる。区分3は24時間体制の監視、管理を必要とする疾病・状態であり、急性期医療のICU管理にも匹敵する。区分2も医療ニーズの非常に高い状態である。調査では療養病床に現在入院中の患者をこの区分に従って振り分けると大半が区分1になる事が判っている。報酬は区分1では区分2、3に比べて半額近くに減る。しかし医療ニーズが少ないとしても介護の手間は同じで、コストの大部分を占める人件費は変わらない。入院させ続けて従来通りに医療をしたら赤字となり経営は成り立たなくなる。そこが厚労省の狙いである。勢い介護施設や在宅だと言っても決められてしまった区分1の患者の医療の必要度は老健施設では不充分である。また24時間支援の在宅診療を取り入れ介護サービスで補った所で、支える家族無しでは行えない。今の社会環境で協力出来る家族は限られている。さように受け皿がない。 私の所は有床診療所で介護型と医療型の療養病床と一般病床を少しずつ持っている。5年後に介護型が削除されるので①介護型病床を一般病床に移す②介護型と医療型とを合わせて医療機関併設型小規模介護老人保健施設にする③全てを一般病床にする。これら3パターンの中から1つの選択を迫られる。③の一般病床にした場合、対象患者が集まらず経営上赤字を出さずに維持するのは難しい。行政が積極的に薦める②の全部の療養病床を老健施設にするのが、今の体制のままでスムーズに移行出来そうである。一方、私の療養病床の患者は医療行為の必要な寝たつきりで到底在宅に移せない人が殆どである。他にグループホーム、通所リハビリも運営している関係で利用者の急変や終末医療を考えた場合、どうしても一般病床、療養病床を残す必要もありそうだ。これまで長い間、生活と医療に関わり信頼関係を築いている患者さんとの繋は無視できない。悩ましい問題である。
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