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< 一寸の物忘れで自信喪失。 | メイン | 2日続きで検死に立ち会う >

気温も35度近くにあがり外を歩くと肌が痛いほどの酷暑。昼間、エアコンを最強にして家に籠もって避暑を決め込んでいる最中に警察から検死の依頼が来た。70歳代のお年寄りの不審死で家族の要請で救急隊が駆けつけたがすでに亡くなっていたらしい。この暑さで熱中症でも起こしたのかもしれない。おそらく現場は暑いだろうと用心のため飲み物を補って警察の迎えを待った。たまたま当直だったのか若い婦警さんが緊張した面持ちでやって来た。冷房がまだ効き切れない車内に乗り込んだ。場所は隣の港町、海沿いの道を車は走る。窓の外は夏の日射しを受けて雲はまっ白に輝き、空も海も遠くの山もライトブルーの水彩画。静かな水面を白い波を立てて小船が走る。真昼の港町は静かに何事も無いように時を止める。暑い中汗をぬぐいながら現場の家を探し当てて入ると家族が警察の事情聴取を受けていた。一言声をかけ遺体のある部屋に行った。案の定蒸し暑く、検死官が顔中を汗だらけにしながら説明をしてくれた。遺体は横たえては有ったが坐ったままうつ伏せて亡くなっていたらしい。外傷もない。高血圧で治療中だったというので脳出血を疑い腰椎穿刺を行った。血性の髄液が得られた。くも膜下に穿破した脳出血と予想した。広い家に一人で暮らしており近くに住む家族とは前日の夜9時までは一緒に過ごしていた。その後、1人になり床に就こうとして薬箱を開けた状態で事切れたと思われた。暑い中では何が起こるか分からない。発見されるまでおよそ16時間、すでに硬直が来ており、うつ伏した上半身には死斑が出ていた。胸に心電図の電極が残っていた。救急隊員が死亡していると分かりながらも家族の悲しみを思い蘇生を試みたのであろう。この暑さの中での使命感に溢れた行為に敬服した。高齢化が進み独居老人がますます増えてこのような孤独死のケースも多くなるだろう。家族や地域の細やかなサポートが大切だし、最近の世情を考えると検死も疎かに出来ないなど、送ってもらう帰りの車中で、本当は怖い婦警さんに説教してしまった。

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