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デイケアに来たおばあさんが心配そうな顔でそっと二の腕を出してスタッフに相談した。白い肌が大きく赤くはれあがり真ん中に赤黒いものがぶら下がっている。痒みで夜も眠れなかったと言う。黒い部分を触るが外れない。良く見ると少し動く。今度は強く引っ張ってみると外れた。ダニである。いつからこんなになったか聞いて見る。4~5日前に夏の野菜作りで畑仕事をした。その頃から腕が重く感じられる様になり、腕を見てみると腫れた出来物があるのに気づいた。だんだん周りが赤く痒くなって来た。これはてっきり悪いものだと思い込みクリニックで手術が出来るかどうかなど色々考えて心配で成らなくなった。しかし怖くて、別居している息子にも言いだせず、私の診察時にさえも言えなかったらしい。いよいよ赤くなって痒くてたまらずスタッフに思い切って相談したと言う訳である。外れたダニの種類はマダニで最近、山の開発、造成などで咬まれる人が多くなっている。食いついて腹いっぱい吸血し満腹すると外れる。簡単に取れたのはその所為で、普通は麻酔をかけて外さないと痛くてたまらない。一度食いつくと接着剤様の物質を出し針を固定するからである。咬まれた後、ライム病とかツツガムシ病を併発し大変なことになる場合もあるので要注意だ。手紙の書き出しに使う『恙なく』はツツガムシ病の原因となる恙虫(ダニ)に咬まれる事から来ている。昔は脚絆をつけて歩いて野山をかきわけての旅であつた。そのため咬まれる機会も多く旅の後、高い熱を出し黄疸が出てなくなる人が多かった。健康でいる事を恙なくと言う訳である。最近もそれで亡くなった人が報じられた。夏に向かい野山での服装に気を付けて欲しいものです。なったら特効薬のテトラサイクリン、ミノマイシンなどニキビに使う抗生剤が効果があるので咬まれたら早く病院で相談して欲しい。
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診療を済ませ家に帰ると1通の鉛筆書きのハガキが届いていた。達筆な字で、命拾いをしまたが字も書けるようになりました。先生のお陰ですとお礼がしたためられていた。宛名を見ると1ヶ月余り前に救急車に添乗してICUのある病院に紹介したかかりつけの患者さんからである。1週間記憶がなく目覚めた後も体が思うように動かなかった。つらいと言う言葉の意味がこんなものかとはじめて分かった。今はリハビリ病院に移り訓練中であり鉛筆ながら文字がヤット書けるようになったので助けてもらった先生に(私)真っ先に書いたとの事、私は心配しただけにうれしくてホッと緊張が取れたのだろうか涙が出た。その方は一ヶ月以上も前、庭いじりをしている時に足に石を落としてしまい、小さな傷を作った。たいしたこともなさそうなので自分で処置して次の日に私のクリニックに診察に見えた。通常の治療をして傷も殆ど治りかけた頃、喉の違和感を訴えた。見たところ特に異常は無い。そこで耳鼻科に紹介した。飲み込みが悪いだけで所見は無いので漢方薬を処方して置いたとの返書を受け取った。これで落ち着くだろうと気にも掛けなかった。次の日、休日であったが、ご飯が食べられないので点滴をして欲しいとの電話。遠くに住んでいて父親の急を聞いて駆けつけた娘さんからであった。その時、頭に悪い予感がよぎった。破傷風だ!急いで対応しなければ危ない。すぐに来てもらった。患者さんは娘さんに支えられてやっとのことで歩いた来た。幸い呼吸は出来ており、口が開かない程度である。しかしこれからが大変と判断し、クリニックで出来る治療を施しながら紹介病院を探した。連休のさなかで受けてもらえない、そこで遠いが、前に私が勤めていた病院の後輩に窮状を訴えたところ快く引き受けて呉れた。救急車に添乗、搬送したのである。その後、典型的症状が出たため、ICUで眠らせた状態で管理されていた。私は心配で幾度と無く電話で様子を聞いて一喜一憂、2週間ほどで回復されたと聞き胸を撫で下ろした。この方は今年90歳になるが文章を書くのが好きな方で新聞、文芸誌に投稿し殆ど採用される程の上手。これまでも私のことをそれとなく文章に折込、気恥ずかしい思いをしたことも度々。そろそろ私としてはその方の筆がスムーズに運び出してあちこちの新聞など投稿欄にあらわれるのが気に成り出している。
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