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私は刺青に偏見をもっている。刺青を入れた人に対する偏見である。私の頭にすぐ浮ぶのは倶利伽羅紋紋の入れ墨をしたやくざ屋さんである。小さい頃から銭湯に行くと入り口に入れ墨をした人は絶対お断りとあった。見たことも無かったが子供心に入れ墨をしている人は悪い人、怖い人と刷り込まれて来た。私の住む田舎では滅多にお目にかかれなかった。医者になってからの話だ。ある日、私が勤めていた大病院の外来に家来をつれたやくざの組長が診察にやってきた。わたしはこの人が体中に入れ墨をしている事は前に上司の診察に立ち会って分かっていた。長袖シャツを着ているので外からは分からない。私が採血をする事になり他の患者さんに入れ墨がバレないようにシャツをたくし上げて駆血帯を播いた。気づかなかったが上げた袖の下に入れ墨が一寸見えていたのだろう、たまたまその近くにいた5歳ぐらいの子供がこれを目ざとく見つけたらしい。どきどきしながら注射針をまさに今、やくざ屋さんに刺そうとしているその時に「ワー綺麗、おじちゃんそれ何、もっと見せてよ」と大きな声、そして走りよって来た。そして袖をさらに捲り上げた。私は瞬間やばい事になるぞと固まってしまった。さすがにやくざ屋さん、その人は動じることもなく子供に微笑みかけた。私は冷汗たらたら、足を震わしながらやっとの事で採血を終えた。無垢の何も分からない幼子が羨ましくなった。この御仁は、後日心臓手術を無事終えて目出度く退院した。手術の日は黒服の若者が廊下に並び、ものものしい雰囲気だったが私は必要以外なるべく手術室と病棟には近づかないようにしていた。
今度は最近の私のクリニックでの話しである。いつも肩が痛くて私の神経ブロックを受けている中年の女性。年の割に若く肌も白く一寸見には美人である。ある日ブロックをしようと服を脱いで貰い背中を向かせて驚いた。背中いっぱいに牡丹の花が咲いていた。どうしてこんなことをと尋ねると治療のためだとさらりと答える。次は観音様をその真ん中に彫る予定だとのたまう。私の治療のふがいなさもさることながら少し抵抗を感じ、将来後悔しない為にもこれまでにするよう忠告をして置いた。しかし外来に来る毎に観音様があらわれ色も鮮やかに着けられて来た。観音様の体にブロック注射の針を刺しながら足が震えるようになって来た。入れ墨をした人は理屈なしに苦手である。そんなことがあり、たまたま本を読んでいて入れ墨で痛みをとる治療の載った記事が目に留まった。熊本では畳表を作るイグサ作りが盛んであるが今は機械での作業になっているらしいが昔は手作業であり、作業後に手首が痛くてたまらずそれを和らげるために手首に入れ墨をしたとの事である。 少しホッとしている。
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現在、82の特定機能病院では包括医療が行われている。そのシステムが一般人には判り難い。手術料に関してはズーッと以前から包括された報酬である。私は外科医ではあるが今は手術はしない。以前は虫垂炎、鼠径ヘルニア、胃潰瘍、胆石症などの手術を来る日も、来る日もしていた。虫垂炎手術を例に取ると4~5分で済む症例から、癒着で見つけ出すのが大変で手術に2~3時間もかかる場合もある。時間はかかつても手術料は同じである。同じ病名の同じ術式の場合、使われた手術材料、時間、術者の経験、技術力などに違いがあっても同じ手術料である。時間がかかろうが,難儀をしようが同じなので難しい症例の場合、疲れも手伝ってやるせない気持ちになる。しかし同じ手術でも簡単にいく場合もあるので平均すれば一定の所に落ち着く。このやり方が包括医療のシステムである。対極に出来高払い方式がある。外来診療での腹痛を例に取ると、まず問診、触診など診察を受ける。ありふれた胃炎、大腸炎と診断が付けばこれで終わりとなり診察料と薬代だけで済む。しかし普通の腹痛と少し違うぞと医者が判断して採血検査、エコー検査などを受けた場合、その検査に応じた分の料金が追加される。これが出来高払いである。現在の殆どの病院、診療所の入院、外来での診療に対する報酬の計算方法である。包括払い方式、出来高払い方式どちらにもメリット・デメリットがある。医師の裁量とチーム医療、乱診乱療と制限医療、入院期間とクリニカルパス(治療行程の明確化)での短縮、情報公開の問題などがある。 |
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