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皆様、大変にお久しぶりです。種々の事情で長らく休載していましたが、半年振りに復活します。
その間、飛行機頭痛のコラムにたくさんの方から体験コメントをいただきましてありがとうございました。私も大変に参考になることが多く、皆さんからいただいたコメントを参考にすると飛行機頭痛の頻度が少なくなったような感じがします。
本年4月、アメリカ癌学会に参加してまいりました。その際のトピックなどからいくつかお知らせします。
まず第一弾はentosisです。これは癌細胞が隣の癌細胞を食べてしまう現象です。アポトーシスという細胞死の最後は、細胞が死んだ後小さい塊に分かれます。それが隣の細胞の食べられる現象は良く知られていました。entosisはそれと違って、なんと【生きたまま】食べるのです。食べられたほうはそのまま生きていて、なんと細胞分裂までして自分を複製することまでやってのけます。時間がたてばやがて取り込んだ細胞の体内で消化されます。 しかし体内に溜め込んだ染色体の量は2倍、3倍となりますから、ますます癌は悪性になりそうです。
癌組織というジャングルの中では、生きるか死ぬかの厳しい生存競争が起こっています。それを勝ち超えてきたものが弱いわけはありません。まだまだ癌から学ぶことがたくさんあります。
私はボランティアで癌の最新治療や予防などをテーマに健康セミナーを行っていますが、その時に主催者の方から癌が自然治癒したとの興味深い話をお聞きすることがあります。
最近お聞きした方は、胃癌末期で腹膜転移も認められあと1週間の命と宣告されていた52才の女性です。 癌の患者さんはよく「癌は死ぬことよりも、死ぬほどの痛みに苦しめられることが耐えられない」といいます。このご婦人はモルヒネでも耐えられない痛みや不快感があり、それから逃れたくて1分でも1秒でも早く死にたかったそうです。
ある日その方の一人娘が、もうこれが最後だからと結婚を考えている人を紹介したのだそうです。 その瞬間「自分の娘の第二の人生の門出を見守ってやらなくて何が親だ。結婚式まではなんとしても生き抜いてみせる」と決意し、今度は1分でも1秒でも長生きしたいと180度考え方が変わりました。
数日後、突然気分が悪くなり、大量に黄緑色のどろどろしたものを嘔吐し、その後意識がなくなりました。主治医はてっきり臨終と思って親類を集めましたが、1週間経っても死なない。 1ヶ月後には元気に流動食を食べれるまでに回復されました。医者が不思議に思って内視鏡でチェックしたところ、末期の癌がすっかり消えていたというのです。すなわちその患者さんは癌を吐き出したというのです。
以前はこの手の話を聞くとにわかに信じられなかったのですが、癌のアポトーシスの研究を行っていくうちに、アポトーシスの考え方からすれば、癌が自然に消失することはありえることだと考えるようになりました。
確かに癌が自然に治ること、すなわち「癌の自然治癒」というのは報告はされていますが、非常に稀なケースだと思っていました。しかし例えば医学文献データベースのPubMedでMeshというキーワードの分類の中にある"Neoplasm Regression, Spontaneous"(癌の自然消滅)に含まれる論文を検索すると2300以上もあります。発表されない症例も含めれば数がまだ増えると思います。ただし、癌全体の数が多いですので、稀といえば稀ですが。。。
これから癌の自然治癒についてアポトーシス、システムのトレードオフそして癌の生存戦略などの観点から考えてみたいと思います。気長にお付き合いください。
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自分が住む環境はできるだけ過ごしやすいものにしたいと思うのは人の常です。しかし癌はそうは思わないようです。癌が生活している環境は、酸素が少なく、栄養が少なく、圧力が高いなど、深海の環境に似ています。しかしそんな中でも癌は無制限に増えてゆくのですからたいしたものです。
それでは癌細胞をその環境から取り出して、酸素が多く、栄養が豊富で、圧力が高くない快適な環境においてやると、どうなるでしょうか?「やったー」とばかりに、爆発的に増殖しそうですね。ところが現実はびっくりすることにほとんど増えないのです。
これはどういう訳でしょうか?それを『ゲーム理論』から説明しようとする研究があります。簡単に言えば、癌は大変に利己的で自分以外の細胞が増えないように、劣悪な環境をあえて作っていると考えます。そうするとそのような環境でも生き延びれるもののみが増えてゆきます。「出る杭は打たれる」・「足の引っ張り合い」という言葉がぴったりする状態になっていると考えるのです。
このような環境で競争してゆくと、癌はどんどん強くなり、最後には抗癌剤にも耐えれるような力強さを持つようになるでしょう。これまでは癌細胞をより生存が難しい状況に置くことを目的とする治療法が開発されてきましたが、あえて癌細胞に快適な環境を作ってやるという逆転の発想も必要になってくるのではないかと思います。
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