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2012.02.11 10:55 |  生活 / くらし  |  健康のコツ  |  心理  |  yuka_tetsuya  | 推薦数 : 1

オキシトシン的ほほえみ

 昨年の5月にいわき市に瓦礫撤去のボランティアに家族と一緒に参加した。青松できれいな海岸が文字通り根こそぎなぎ倒されていた。瓦礫の中に家族の写真やランドセルがあると、その持ち主の方の安否が気遣われて、片付ける手が何度も止まった。
 作業場所から道路を隔てたむかいに、傾いた家で雑貨商を開いているおばあちゃんがいた。「どーんと流されたが、松の木の間にフェンスに引っかかって助かった。」とまるで人ごとのように話しをされた。港のお店は跡形もなく消えていたので、ここで商売を始めたという。
 作業が終わりかけていた頃、おばあちゃんが「これ、みんなで飲んで下さい。片付けてくれてありがとう。」といって缶コーヒーをたくさんいただいた。固辞したが、おばあちゃんの温かい笑顔に感動していただいてしまった。缶の上にはわずかに砂がついていた。
 東北の人は強い。心に芯が一本入っている。そして笑顔がいい。あのような大災害の後でさえも、人を感動させるほどの笑顔を見せることができるのはどうしてだろうか?大災害についてのセミナーを依頼されてから、ずっと考えている。
 人はうれしいときには笑顔になるのは当たり前であるが、どうも優勝したとか、宝くじに当たったとか、合格した時に出てくる飛び跳ねるような笑顔と、おばあちゃんの笑顔は違う。
 前者は脳科学的にはドーパミンの作用とされている。報酬が得られたときに感じる快感をもたらす物質である。しかしこれは一過性で、常に次の新しい快感を求めて、あたらな競争とストレスをも同時に生み出してしまう。失敗した人から見れば、その笑顔を見ても笑えない。
 おばあちゃんの笑顔は持続性がある。ボランティア全員に等しく感動を与え、悲惨な光景を目の当たりにして落ち込んだ心を温めてくれた。これは脳科学的にはオキシトシンの作用とされている。母親が赤ちゃんにおっぱいをあげている時の微笑みはまさにオキシトシンである。
 『「親切」は驚くほど体にいい!』(デイビッド・ハミルトン著)によれば、人に親切にするときにもオキシトシンが出ているという。そしてそれは血圧を下げ、長寿になると解説している。長寿のことはともかく、「親切」にしてあげた後、ストレスが消えているのはよくあることである。
 過酷な介護の仕事を笑顔でされている多くの方々に接すると、ヘルパーズ・ハイもおそらくオキシトシンであろう。医療従事者ならどなたも、病気が治って退院されるときに患者さんからの感謝の言葉を聞くとそれまでの疲れが吹っ飛ぶ。他の職業ではなかなか得られない役得である。
 大震災後、ACのCMが耳にたこになった。しかし、『「思い」は見えない、しかし「思いやり」は見える』というCMで男子学生が最後に見せるはにかんだような笑顔を見て、こちらも笑顔になる。オキシトシンの伝染力は強いが、ドーパミンはそれほどでもない。

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