akagama
Profile

関連リンク

ブログ内検索

カレンダー

<< 2008/10 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

新着コメント

新着トラックバック

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

ゲンコツ医院/哀しい旅路(7)

akagama / 2007.03.19 16:51 / 推薦数 : 2

 十数分後、太一が正気を取り戻した時には、後ろ手にしばられて転がされていました。

 厳しい顔で、にらみつける先生。「おい、俺の親父は与党の幹事長だぞ。こんなことをしてただですむとおもってんのか」

「ただじゃすまないってのは、こっちのセリフだ。親父の権力をかさにきて、悪行三昧しやがって。こら、女はどこだ」

「女?」

「しらばっくれちゃあいかん。この雅が全部吐いたんだ。加嶋香織という女を買ったろう」

「ああっ、雅、テメエ。裏切りやがったな」

「若先生、すみません。へたうっちゃいました」

「さあ、女はどこだ!ここでおまえが悪さをしてるのはこの雅がげろってるんだよ」

「香織って女は、しらねえよ」

「まあだ、しらばっくれるつもりか!」

 先生は、太一の顔をポカポカと殴りつづけます。

 太一の顔はみるみるうちに腫れあがってきました。

「まあだ、痛い目にあいたいのか」

 今度は、先生のサッカーボールキックが、太一の顔となく腹となく、全身に炸裂します。

 さすがにこれはききました。

 おもわず、音を上げる太一。

「許して、許してください、これ以上やられたら死んでしまいます。お話します。香織は奥の部屋です」

 先生が奥の部屋のドアを開けるとそこには……。

 逃げられないように手錠を嵌められた女性がいました。

 口には声が出せないように、猿轡をかませられていました。

「あんたが、香織さんかい」

 先生の問いかけに、ぐったりしながらも女性は頷きました。

 香織さんは太一の部屋に監禁されてからは、ろくに食事を与えられなかったようです。

 かなり、脱水症状が見られているので、入院が必要のようです。

 先生は掛川さんに電話をしました。

 これぐらい、証拠が集まれば大丈夫。

 中諏訪太一と、砂川雅は、掛川さんに現行犯逮捕され、留置場行きです。

 二日後、男の子の意識が戻りました。

 今は、大学病院の部屋で、親子仲良く、療養生活を送っているようです。

 さて、拳骨医院の診察室では、先生と弁護士さんが話しています。

 香織さんの借金の問題のことです。

 香織さんはすでに法律に定められた分の、お金は払っていて、過払い分のお金を返してもらう請求をすすめる事になりました。

 また、香織さんの新しい仕事も決まりました。

 みのる先生のいる荒川医大の医局の秘書さんに欠員がでているので、退院をしたらそこで勤めることになりました。

 母子二人なら、十分生活が出来そうです。

「しかし、もうちょいとあばれたかったなぁ」

「勘弁してくださいよ、先生。警察に先生が連れて行かれたら困るのは患者さんですからねえ。掛川さんもあきれてましたよ」

 たしなめる珠代さん。

「警察かあ。それはおれも勘弁してもらいたいなあ。おとなしくしといたほうがいいかねえ」

 といいつつ、もの足りなそうなゲンコツ先生でした。

    (了)

 

 お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。御慈悲の一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。 にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

ゲンコツ医院/哀しい旅路(6)

akagama / 2007.03.19 07:03 / 推薦数 : 1


「こらこら、薫。腹がたつのはわかるが、ほんとに死んでしまうからいい加減にしろ」

「大保守党の中諏訪先生の、赤坂の別宅マンションだよ。香織は中諏訪先生の息子さんの奴隷として飼われているんだ」

「ああ?奴隷?そうか、お前、彼女を売ったっていうのか!おまえの副業っていうのは、人売りだったのか」

 雅はうなずいて中諏訪代議士の息子に、香織さんを五千万円で売ったと白状しました。

「おい、守。赤坂に助けに行くぞ」

 意気込む先生。

 しかし、掛川さんは浮かない顔です。

 何といっても、相手は大保守党幹事長、代議士の大先生様の息子様です。

 警察が踏み込むには、きちんと礼状をとらないとあとでえらいことになりそうです。

 しり込みをする掛川さん。

「すまん、とりあえず、上にお伺いをたててからにしたいんだが……」

「ええーい、眠たいやつめ、よしわかった、おれ一人でいくぞ。雅をかせ!」

 掛川さんがとめるのも振り切って、手錠をつけたままの雅をカローラから引きずり降ろし、信さんから借りた軽トラの助手席に放り込みました。

 荷台に、縛り上げられたスカウトマンが転がったままですが、無視して、軽トラを走らせます。

「あー、もお、しゃあないなあ」

 掛川さんはぶつぶついいながら、カローラで後を追いました。

 深夜なので、道はがらがらです。
 
 二十分も車を走らせると、赤坂の中諏訪代議士の別宅マンションに着きました。

 中諏訪代議士の息子様は、完全に昼夜逆転した生活をしているそうです。

 皆が働いてる真昼間は部屋で寝ているそうです。

 夜は、雅たち、人買いから買い集めた奴隷を相手に、覚せい剤とお酒を使って、王様ごっこをして遊んでいるそうです。

「俺は外で待っているよ」

 掛川さんの声に頷いて、先生は、助手席の雅を軽トラックから引きずり出してマンションの前に連れて行きました。

 先生は、マンションのインターホンのボタンを雅に押させました。

 マンションのホールは、鍵を持っていない人間は居住者に連絡をして、開錠してもらわなければなりません。

  部屋番号は、1103号室、11階です。

 中から不機嫌な声が聞こえてきました。

「こんな夜中に誰だ」と。

「雅です。実は、シャブのマブネタを仕入れましたんでね、太一さんにもお裾分けにまいった次第ですが」

「シャブか、ちょうど、きらしてたところだ。いいだろう。はいって来いや。いま、ロックをはずす」

 オートロックが解除され自動ドアがあきました。

 先生は雅を後ろからこづいてエレベーターにのりこみました。

 エレベーターを11階で降りた二人は、廊下を歩き始めました。1103号室の前に立ちました。

 雅にドアをノックさせます。
 
 先生は、中から外をうかがうような気配を感じました。
 
 さっと雅の背後にしゃがんで隠れて、ドアの脇にとりつけられた監視カメラにうつらないようにします。

  静かにドアが開かれました。

 中から、中諏訪太一は用心深く顔を覗かせました。

「雅、お前一人か」

「いや、オマケ付きだよ。すまないね」

 先生はそういうなり、雅を突き飛ばして開いたドアの隙間に足を突っ込んで、ドアを閉められないようにします。

 間髪いれず、ドアをパーンと開け放して、室内に入りこみます。

「な、なんなんだテメエ」

 先生の強襲に、ぶったまげながらも、太一は、強がりを吐きます。

  先生は、有無を言わせず、太一の首筋に手刀を叩きこみました。

  もんどりうってたおれる太一。

   (つづく)

 お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。御慈悲の一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。 にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

ゲンコツ医院/哀しい旅路(5)

akagama / 2007.03.18 11:36 / 推薦数 : 1

 一気に炎が燃え上がります。

 こんなところで、ぐずぐずしていたら、二人ともバーベキューです。

 先生は、男の首根っこを捕まえると、部屋の窓に向かって突進しました。

 ばりばりがしゃーん!!

 ガラスを叩き割って、二人はそのまま、夜空にダイビングです。

「うひゃあああ」

 情けない声をあげる男。

 オシッコもちびっちゃっています。

 先生と男はもつれ合って、地上へ落下していきます。

 バスッと鈍い音がして、階下に停めた、軽トラの荷台が二人を受け止めました。

 荷台にはマットレスがひいています。

 信さんに頼んだ『あの仕掛け』はこのマットレスでした。

 これなら、ビルの三階くらいなら、飛び降りても怪我はしません。

「おい、ここで大人しくしてるんだぞ。まあ、縛られて動けないだろうがね」

 先生の言葉に、眼をまん丸くしたまま、うんうんと頷く男。

 先生はそう言い残すと、荷台から飛び出しました。

 火をつけた奴は、ビルから飛び出したところを、掛川さんにたちまち取り押さえられていました。

 現住建造物放火の現行犯で逮捕です。

 消防自動車も駆けつけ、消火活動を開始します。

 発見も早かったので、延焼することもなく、鎮火しました。

 手錠をかけて、カローラの後部座席に座らされた男。

 ナカナカ色男です。

「よお、殺し損ねて残念だったなぁ。お前さんが雅さんかい」

 色男は、ふてくされて、あさっての方向をむいています。

「おいおい、ひとがきいてんだろう。返事をしなよ」

 先生は、色男の左耳をひねりあげました。

「い、い、いてえっ!そうだよっ雅は、おれだよ」

「おいおい、薫。無茶はいかん、いかんなあ」

 にやにや、笑いながらたしなめる掛川さん。

「なあ、お前、このあんちゃんは怖いぞ。警察に行く前に、ぼこぼこにされて、大事な商売道具のお顔がぐちゃぐちゃになってしまうかも知れんぞ」

 顔をぐちゃぐちゃにされるのはさすがに色男もいやなようで、ぽつりぽつりと、白状しはじめました。

 しかし、あまりひどい話に、先生の顔も蒼くなりました。

 掛川さんも、うーんという顔つきになりました。

 かいつまんでお話しましょう。

 みもとちえというのは借金取りの催促から、逃れるための偽名で、本名は、加嶋香織さんといいました。

 彼女は大怪我をした男の子のお母さんです。

 香織さんの旦那さんは、東北の田舎の町で、小さな工務店をやっていましたが、がんで亡くなってしまいました。

 工務店は、借金のかたにとられてしまいます。

 それでもまだ借金は残ったので、香織さんは、男の子を親戚に預けて、東京の月光館で住み込みで働くことになりました。

 そこに、客として泊まった雅に眼をつけられたわけです。

 銀座に行けば、もっと稼げるよ、借金はすぐに返せるよと、甘言を弄して香織さんを騙したわけです。

 騙したあとは、ヤクザの常套手段です。

 覚せい剤と、脅し、すかしで、言う事をきかせていました。

 その間、香織さんの田舎では、預けられた親戚のうちで、男の子は、食事もろくに与えられず虐められていたようです。 

 虐待を受けていた男の子は、こらえきれずに、親戚の家を逃げ出し、東京に行く列車に乗り、香織さんを探しに東京にやって来ました。

 紙切れは、香織さんが、東京に行く前に男の子に覚書に渡したものでした。

 そして、香織さんの息子さんが田舎からお母さんを探しにきたということを月光館の従業員から聞いた、雅はまずいと思いました。

 さっそく雅は、月光館の近くで途方にくれる息子さんを見つけ、お母さんに会わせてあげようと、車に誘い込み、走る車から男の子を道に叩きつけて殺そうとしたわけです。

 信さんが、みつけていなかったら男の子は死んでいたかもしれません。

 そして、最後に、先生と、先生に雅の情報を流した、銀座のスカウトマンを口封じに焼き殺しにかかったのでした。

  (つづく)
 

 

 お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。御慈悲の一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。 にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

ゲンコツ医院/哀しい旅路(4)

akagama / 2007.03.17 22:05 / 推薦数 : 1


「やあ、信さん。あんたの軽トラに、『あの仕掛け』をして、貸してくれないかい」

 そして、身の回りの準備を始めました。

 午前零時前、先生は、信さんの軽トラに乗って、指定のビルの前にやってきました。

 掛川さんは、先生より先に到着して、目立たぬところに、運転してきたカローラを停め、車内からこっそり、様子を伺います。

 ビルの窓ガラスの位置を確認しながら車の停車位置を慎重に決めました。

 何か考えていることがあるようです。

 しかし、指定のビルの窓ガラスは、真っ暗です。

 人が待っているような感じではありません。

 先生は掛川さんに、携帯で連絡を取りました。

「今から、ビルに入る。もし、何かあったら、仇はたのんだよ」

「了解。死ぬなよ」

 ビルには鍵がかかっていませんでした。

 先生は慎重のドアを開けて、静かに中に入りました。

 ビルの中は真っ暗です。

 マグライトで中を照らしながら、階段を上がります。

 二階、三階。

 階段をのぼりきった所に、ドアがありました。

 電話で来るようにと、指定されたのは、この部屋です。

 ドアには曇りガラスが、はめ込まれています。

 中は電灯もついていっません。

 曇りガラスの向こうの様子はうかがい知ることはできません。

 先生は静かに、ドアのノブを回してゆっくりと開けました。

 マグライトで照らしながら、事務所の中を覗くと……。

 そこは、机と椅子があるだけの、事務所のような室内でしたが……。

 銀座の、あのスカウトの男がいました!

 猿轡をかまされ、しばりあげられています。

 うーうーと情けない声をあげて、床に転がされています。

 思わず、男に駆け寄る先生。

 その瞬間でした。

 ばたんと音がして、外から、ドアが閉められました。

「しまった、罠にはまった」

 悔しがっても、もう後の祭りです。

 さらに、敵は、ドアを閉める時に、ガソリンを詰めた火炎瓶を投げ込んで逃げたようです。

 走って立ち去る足音が聞こえました

 事務所の床にぱあっと火柱が立つのが見えました。


    (つづく)
 

 お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。御慈悲の一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。 にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

ゲンコツ医院/哀しい旅路(3)

akagama / 2007.03.17 08:32 / 推薦数 : 1


 月光館の送迎車で、診療所に帰ってきた先生をみて、眼をまるくしてあきれ返る、希美さんと珠代さん。

「あらあら、先生。昼休みにやっぱりソープランドにいってたんですね。困った人だわ、まったく」

「おいおい、冗談じゃあないよ。俺の身体から、石鹸の匂いがするか、かいでみな」

「わ、わたしはいいです。先生を信じておきます」

 希美さんは、笑ってましたが、珠代さんは、疑わしく、先生の周りを犬のようにくんくんしました。

「うーん、弟さんほどではないが、相変わらずワキガがちょいとくさい。まあどうやら無罪のようだわね」

「やれやれ、おれはずいぶんと、珠代さんには信用がないんだね」

「給料をあげてくれれば、信用しますよ」

「考えときましょう」

 さて、銀座の女専門のヤクザ、雅。

 この男が、鍵を握っているような気がします。

 暗くなるのをまって先生は、入谷の駅から地下鉄にのって銀座へと向かいました。

 女性をねらうスカウトのごろつき共の出没地点は何箇所かあります。数寄屋橋の交差点付近、銀座四丁目交差点付近など々。

 先生は、早速、銀座三越前で、片っ端から、道を歩く女性に声をかけている男を見つけました。

 そいつは、なかなか、女性に相手にされません。

 雅は、よく、はっとするような美人を連れていたと聞きます。

 スカウトマンとしては優秀な男のようですが、この男はからっきしだめです。

 こいつは、どうみても、雅ではないようですが、後ろから声をかけてみます。

「おい、仕事中に、悪いんだが聞きたい事があるんだけどなあ」

「何だあ、じゃましてんじゃーねえぞ、てめえ」

 口汚く罵りながら、振り返るスカウトマン。

 しかし、巨漢の先生をみて、スカウトマンは、思わず硬直してしまいました。

「いやあ、じゃまして悪かったな」

「……いえ、いいです。何でも聞いてください」

「ここに立ってる、男連中の中で、雅ってヤツを探してるんだがなあ」

「ま、雅さんですか」

「しってんのか」

「き、今日は銀座に出てません。雅さんは副業でいそがしいのでしばらく出てこれないといってました」

「副業?」

 思わずまずいことを言っちゃったのか、急にばつが悪そうに、口をつぐむスカウトマン。

「まあ、いい。雅にあったら、牛山という男が会いたいと伝えといて欲しいんだ」

 雅が銀座にいないとなると、仕方がありません。

 先生は、携帯電話の番号をその男に教えて、一旦銀座を離れることにしました。

 その男は、雅に連絡が取れ次第、携帯電話に連絡すると約束しました。

 銀座の駅にいく途中、先生は、携帯電話を取り出して、入谷警察署に連絡をしてみます。

 なじみの刑事さんを呼び出してもらいました。

 その刑事さんは掛川守さんといいます。

 先生とは幼馴染です。

 掛川さんは柔道四段。身長百七十八センチで、体重百二十キロ。

 焼肉なら、十人前は軽いです。

 元力士の先生と並ぶと、ちょっと、怖いです。

「やあ、薫。お前が聞きたいのは、あの子供のことなんだろう」
 
「そうだ。子供の身元はまだ、わからんかね」

「こればかりはなあ。身につけている服も靴も、それ自体、ありふれたものだしなあ。何せ、意識がなくてしゃべれないときてやがる」

「実はみもとちえ、というのが、その子の母親の名前らしいんだが。今、その女を連れていた女衒気取りの雅ってヤクザを探しているんだがね」

「おいおい、町医者にそこまで、捜査されちゃあ、おれたちの出番がなくなっちゃうよ」

「雅は、スケコマ師のほかにも後ろ暗い、副業に手を染めているらしい。一つ、調べてみてくれないか?男の子の母親と、糸が繋がるかもしれん」

「あいよ。それじゃあ、今度、南千住の「ひとでなし」で一杯やろうぜ」

「いいけど、あそこのオヤジは糖尿病で、医大に入院してたんじゃあなかったのか?」

「いや、この前、退院したそうだよ」

「そうか、じゃあ、その時にまた、いろいろとまた、話をしようか」


   (つづく)

 
 

 お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。御慈悲の一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。 にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

ゲンコツ医院/哀しい旅路(2)

akagama / 2007.03.16 07:40 / 推薦数 : 2

 先生は、交番で、「月光館」の場所をききました。

 教えられた道のとおりに歩いていくと、十分ほどで「月光館」という看板が見えてきました。 

「いらっしゃいませ。ご予約のお客様ですか」

 店先に立っていた番頭さんが声をかけてきました。

「休みに来たわけではないのだが、人探しをしててね。女将さんはいるかい」

 番頭さんは、一瞬怪訝な顔をしましたが、奥に入ってなにやらひそひそ相談すると、また表に出てきました。

「女将がどうぞといっております。奥の事務所の方へどうぞ」

 先生は、事務所の脇の応接室に通されました。

 応接室のソファに座って、数分もすると、女将を名乗る女の人があらわれました。

 五十歳くらいのおばさんです。

「今日は何の御用でしょうか」

 先生は、名刺を出して、名前を名乗りました。

 女将には、とても、先生のことがお医者さんには見えないらしく、へえという顔をしていました。

「うん、実は、みもとちえさんという人をさがしていてね」

「はあ、最近は、お医者様の先生も、私立探偵のアルバイトをするんですか」

 女将は、先生の名刺をしげしげと眺めていいました。

「その人の御家族らしい人が、大怪我をしたので、知らせてあげたいんだよ。ここの名前がその御家族の持っていたメモに書かれていたので来たんだが」

「なるほど、そういうわけですか。あいすみませんが、みもとちえさんという人、うちではもう勤めていないですねえ」

「じゃあ以前に務めていた人でそういう人がいたの」

「はい、仲居さんで、確かにそういう名前の人がいました。なかなか綺麗な女性でしたがね」

「それは、いつごろの話?」

「一ヶ月ぐらい前です、年の頃は三十前だったらしいですが、五つ六つ若く見えました。映画にでも出していいような、はっとするような美人ですよ」

「じゃあ、結局、ここはやめちゃったの」

「はあ、何か、もっと割のいい仕事につくとかいって、やめていきましたが。どうも、後ろに男の影がちらついているみたいでした」

「ふうん、男かい」

「はい、雅さんといって、普段は銀座でうろうろしている女専門のヤクザだそうです。ちえさんと雅さんは近所の喫茶店で話をよくしていたらしいです。」

 ふう、とため息をついて女将は続けました。

「まあ、ちえさんぐらいの器量だと旅館で仲居をしているより、銀座に勤めたほうがはるかに稼げますからねえ」

 女将の話では、雅は狙った、美人さんをオトス為には、覚せい剤でもなんでも使うという噂を聞いているそうです。

「そうかい。じゃあ、この店に、小さな男の子は来なかったかい?五、六歳ぐらいの子だ」

「ああ、東北の小さな街からきたという男の子なら、昨日、来ました。まさにその、みもとちえっていう人を探してましたけどねえ。いや、びっくりしましたよ。小さな男の子がこんなところまで一人でやってきたんですから。あ!ひょっとして大怪我をしたというのは、まさか……」

「まあ、それはいいんだ。じゃあ、結局その子はどうしたの」

「困ったような顔をして、東北の田舎に帰るとは言っていました。で、そのあとですよ。雅さんがうちに他の女をつれて休みにきたんです。それで、私は、あんた、ちえさんの坊やがうちに来たよといったら、あわてて出て行きました」

 男の子はその後、暴行を受けたようです。
 
 ひょっとすると雅がやったのかもしれません。

 みもとちえという女性には会うことは出来ませんでしたが、雅というヤクザが絡んでいるようです。

 その情報を得ただけでも収穫はあったようです。

 先生は、封筒に入ったお礼を女将に渡しました。

「いろいろ教えてくれて、ありがとう。これで旅館のみんなで、寿司でもとってくれ」

「へへへ、すみませんねえ、先生。うちの従業員が身体を壊したら、診察にいかせますんで、ひとつよろしくお願いしますよ」

「おいおい、始めから身体を壊すような仕事をさせるんじゃあねえよ」

「はは、ごもっともで、ちょいと番頭さん、先生を車で診療所までお送りしてちょうだい」

 (つづく)
 

 お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。御慈悲の一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。 にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

ゲンコツ医院一ノ章/哀しい旅路(1)

akagama / 2007.03.15 19:34 / 推薦数 : 1

「先生、先生!大変だぁ!子供が、子供が死にそうだ」

 まだ、七時半だというのに、大工の信(のぶ)さんが、大怪我をして、ぐったりした六歳ぐらいの男の子をかかえて、「吉原拳骨医院」に飛び込んできました。

「あっ、信さん。とうとうやったね、あんた信号無視でもして、子供をひいたんだろ」

 そういって怒鳴ったのは、床掃除をしていた受付の、珠代さんです。

 バスト、ウエスト、ヒップ、いずれも、百センチというダイナミックな、ナイスバディの持ち主です。

 日暮里駅前の、巨乳風俗店の店長が、菓子折りをもって、じきじきにスカウトにきたというのが自慢だそうです。

「ちがう、ちがうよ。おいらが、軽トラで吉原大門の交差点前を走っていたら、道の端っこでたおれてたんだよ」

「ふうん、まあそういうことにしといてやるよ、先生は奥で飯を食ってるから呼んでくるわ、せんせー、はやくきてー」

「おう、どうした。どうした」

 奥から、ゲンコツ先生が、顔を出しました。

「子供が血だらけで倒れてたんだ、死んじゃうかもしれないよ」

「今から診よう。はやく診察室に」

 先生は、信さんが、かかえてきた、怪我をした六歳ぐらいの男の子をみて、すぐ診察室に運びこみました。

 男の子は、血だらけで、意識がありません。

 靴も、洋服もぼろぼろのかなり汚れたものを着ていました。

 何とか呼吸はしていますが、弱々しそうです。

 信さんは心配そうに尋ねました。

「大丈夫そうかい。先生、何とか助けてあげてよ」

「頭を打っているようだな、脳挫傷の疑いがあるから、CTを撮らなきゃだめだろう。荒川医大のERにお願いしよう」

 救急車を要請すると、先生は、男の子の身元につながるものが何か出てきてはこないかと、服とズボンのポケットを探ってみました。

 ポケットの中から出てきたのは、子犬の形をした財布と、小さな紙切れでした。

 紙切れには、丁寧な女性の文字で、「みもとちえ、台東区根岸四丁目、月光館」とかかれています。

 財布の方は空っぽです。

「信さん、月光館って旅館、知ってるかい」

「よせやい。かかあの眼が光ってるのに、旅館なんてとこいけるわきゃねえでしょうが」

「うーん、名前も住所もわからない。まだ、保育園児ぐらいの年でもう行き倒れの坊やかい。こりゃあ弱ったねえ」

 実は、先生にはもっと気になることがありました。

 身体のいたるところに、古い打撲による内出血の後がありました。

 以前に激しい虐待を受けていたようです。

 やがて、救急車が到着して、男の子を連れて行きました。

 その後、間も無く、荒川医大から電話がかかってきました。

 弟の牛山みのる先生からでした。

「兄貴、あの子はやはり、頭蓋骨骨折と、急性硬膜下血腫だったよ。あと、右下肢骨の骨折があった。今、緊急手術中だ」

「そうか、身元不明の患者を、押し付けたりして悪かったな」

「気にしなくていいよ。ここは東京だ。訳ありの患者のことを気にしてたら始まらないよ」

「こちらでも、わかる限り身元は確かめてみるよ」

「ありがとう。今のところ、命に別状はなさそうだが、意識が早く戻ってもらいたいもんだね」

 その日の慌しい、午前の外来が終わりました。

 先生は、外来が終わったあと、今朝の男の子のことを考えていました。

 あの子は、靴も服もかなり古い、ぼろぼろのものを着ていました。

 そして、身体中のいたるところに、虐待のあと。

 これまで、決して幸せに暮らしてきたわけではないようです。

 それに、紙切れに書かれた、「みもとちえ」という、女の人の名前も気になります。

 男の子は、荒川医大のERの先生達が必死で治療にあたってくれているようですが、先生、いてもたってもいられなくなりました。

 珠代さんが奥で呼んでます。

「せんせー、昼ごはんたべないんですかあ。さめちゃいますよお」

「ごめん、おれ外で食ってくるから」

「あらあらあら、外のお風呂屋さんで女の人を食べてきちゃあだめですよー」

「そこまでの時間はないなぁ。すぐに帰るからね」

 先生は、白衣を脱いで、外出の準備をしました。

 行き先は、もちろん、旅館「月光館」です。

 (つづく)

 

 いかがでしょうか?期待できそうでしたら一押し何卒ヨロシクお願いします

にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

ゲンコツ医院・序ノ口

akagama / 2007.03.15 09:37 / 推薦数 : 2


 吉原に、元相撲取りの医者が始めた医院があるらしい。

 なかなか、効く治療をしてくれるそうな。

 おりしも、慢性の腰痛に悩まされていた私である。

 早速、砧の自宅から保険証を持ち出し、タクシーを走らせ、浮世風呂街の裏手にある、医院に出かけてみた。

 医院の名は「吉原拳骨医院」いう、いかにもアクの強そうな名前をつけている。

 この名付けは中々面白い。

 医院の建物は古いが、中はキチンと掃除がされている。

 朝の八時というのに待合室にはすでに、患者が、あふれていた。

 待つこと数十分、いよいよ私の診察の番が巡ってきた。

 診察室に座るは、院長の牛山薫博士である。

 しげしげと眺めるに、成る程、元力士というだけあって、それはそれはでかい。

 身の丈百九十センチ、体重百キロといえば、現役力士にも引けをとらぬ体格である。

 何でも、三段目のときに、新弟子虐めをしていた、小結の部屋頭を半殺しにして、部屋をクビになったという。

 正義感の強そうな男である。

 早速診察を受けたが、触診するなり、お前さんは、肝の臓を痛めておるようだから、酒は節制するようにときた。

 中々鋭い奴だ。

 私は、小学生の頃、交通事故で輸血を受けた際に、肝炎ウイルスを誰かからいただいたようで、一進一退の状態が続いているのだ。

 さて、本題の腰骨の様子は、触診だけではわからぬから、X線を撮ると言い出した。

 仕上がった写真をみるなり、

「うむ、骨の変形はない。筋肉の疲れだろう」

 と、鍼をうつという。

 おいおい、ここは、西洋医学の医院ではないのかい、と笑って尋ねると、

「おまえさん、すぐに良くはなりたくないのかい」

 ときた。

 それならお手並み拝見と、ひとまず、お任せすることにする。

 鍼をうつこと、十数分。

 驚いたことに、これまであれほど、私をなやませていた、腰痛は綺麗に消えていた。

 彼の弁によれば、ツボをついて、痛みを感じなくしているだけだから、またくるようにとのことであった。

 いや、しかし、参った、参った。

 砧から、吉原まで、湯女に会いに通うのならともかく、むくつけき元力士のもとに通うようになったとは。

 それにしても、ここの医者、見かけは、危ういが、見立ては、確かなようである。
 

  有名な作家がある新聞にこのようなエッセーをのせました。


 この診療所「吉原拳骨医院」の院長先生の名は、牛山薫先生といいます。

 おん年四十歳。

 外科の看板をだしていますが内科はもちろん、鍼灸、漢方の東洋医学にも精通しています。

 イカサマとインチキをする奴が、何より許せない正義感の塊のような先生です。

 この、牛山先生をサポートするのは、看護師の、雪添希美(ゆきぞえのぞみ)さんです。

 荒川医科大学の看護学部を卒業して、修士の学位までとったバリバリの二十五歳の看護師さんです。

 そして、受付の、お酒大好き事務員の大宮珠代さん。ビッグサイズの三十歳です。

 皆、華の独身です。

 さて、どうなりますやら……。

 

 お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。御慈悲の一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。 にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

固定リンク | コメント (2) | トラックバック (0)