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   (14)男と男の約束!


 試合は最初から、ビンタの応酬で始まりました。

 ガッチリと組み合う二人。

「今日のこの日を待っていたぜ、四年前の借りは、返させてもらうからな」

 XXXが組んだまま、言いました。

「ふふふ、そううまくいくかな、こっちもね、簡単に負けるわけにはいかんのよ」

「ほざけ!」

 XXXが、ボルトホークをロープにとばします。

 ロープから帰ってきた、ボルトホークの喉に、XXXのクローズラインが直撃しました。

 吹っ飛ぶ、ボルトホーク!

 息がとまりました。

 丸太のような一撃で、ボルトホークは、今日の勝負は厳しいぞと実感しました。

 そして、XXXのキックがボルトホークの顔に炸裂します。

 パワー、スピード、テクニック、今日のXXXは、四年前のXXXとはもはや別人でした。

 その後も、試合は、XXX優位に進みます。

 左足が気になるボルトホークは、特訓の成果がなかなか出せません。

 攻撃を仕掛けても、巧みにかわされ、逆に反撃をくらいます。

 何度も、フォール負け寸前で何を逃れました。

 荒川医大の七階北病棟でも、良弘君が必死にテレビに声援を送っています。

 試合中、ボルトホークの足のサポーターがずれたところが映りました。

 サポーターがずれたところから、刃物傷がのぞきました。

 良弘君は、その傷に気がつきました。

 周作さんが毎日、処置をしてもらっている部分が全く同じところです。

「ボルトホークの正体は、おじさんだったんだ。がんばれー!おじさーん」

 しかし試合中盤、ボルトホークにチャンスが生まれました。

 マットに落ちた汗に、足を滑らしバランスを崩したXXX。

 動きが止まったところに、ボルトホークのシャイニングウィザードが炸裂しました。

 一瞬意識が混濁した、XXX。

 すかさず、コーナーポストに駆け上がるボルトホーク。

 そして、武道館の空高く跳躍し、ムーンサルト一回転!

 覆面の鷹が虚空に舞います。

 そのまま、稲妻のような踵落しをXXXにお見舞いです。

 かつてのボルトホークのフィニッシュホールド、ボルトスターライト!
 
 それは、四年前の試合の再現でした。

 完全に気を失うXXX。

 ボルトホークがそのまま片エビ固めから体固めに入りました。

 レフリーのスリーカウントが入ります。

 ゴングが鳴って二十二分三十八秒後、歴史が動きました。

 武道館が、どよめきました。

 新チャンピオンの誕生です!

 さて、その次の日、

 チャンピオンベルトを持った周作さんが、病棟に帰ってきました!

 七北のナース、ドクター、そして、闘病中の皆が、スタンディングオベーションで迎えます。

 涙を浮かべて、祝福に答える周作さん。

 車椅子に座って、拍手する、良弘君を見つけました。

「おう、よしぼう!ベッドは卒業か!」

「うん、チャンピオンとの約束はボクも果たすよ!今日からリハビリを始めるんだ」

「そうか、じゃあ、チャンピオンからのプレゼントだ」

 良弘君は、プレゼントの包みを開けました、中には、ボルトホークのサインの入った、WWS世界選手権のベルトのレプリカと。鷹の図柄の覆面がはいっていました。

「病気がなおったら、ボルトホーク二世は、よしぼうに任せたよ」

「ありがとう、チャンピオン」

 周作さんと良弘君はがっちり、男と男の握手をかわしました。

   (了)

    Themes for this story

 Seven Wishes(Night Ranger/7 wishes)
 You're All I Wanna Do(Cheap Trick/ Woke Up With A Monster)
 炎の戦士(J-WALK/Oval Mind)


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がんばれ!夢色の戦士(13)機能停止!

akagama / 2007.03.07 07:14 / 推薦数 : 0

 

   (13)機能停止! 

「なあ、よしぼう。ボルトホークがいってたよ。久しぶりにXXXと試合をやるのは彼でもやっぱり怖いんだって。でも、最初は勇気をもって、踏み出さないと絶対前には進めない。だから、ボルトホークは今日の試合は絶対逃げない。そして、もし、ボルトホークが勝ったら、よしぼうも勇気を出して欲しいんだ、と」

「……わかった。今日、ボルトホークが勝ったら、ボクもがんばるから」

「約束だぞ」

 周作さんは、外出届にサインをすると、西日暮里の駅に向かいました。

「よしぼう、ありがとう。XXXと戦う勇気をくれて。今度はおれがお前に勇気をあげよう、テレビで応援してくれよ」

 こちらは、武道館。

 一般内科の面々がそろっています。

 選手控え室には、ボルトホークの覆面をかぶったうー先生がスタンバイしています。

「へっへっへー、XXXめ、どこからでもかかってこいやー」

 もう自信満々のうー先生です。

 彼の辞書には、負けという字は存在しないかのようです。

 太洋プロレスの社長が入ってきました。

 覆面のうー先生を、本物のボルトホークだと疑っていないようです。

「やあ、山田、今日はがんばってくれよな。おれはこれからずーっとリングのほうでセコンドについてるから」

 今日はWWSのスーパースターと太洋プロレスの選手との、交流戦も沢山予定されているので、社長はそそくさと、試合場へ出て行きました。

 控え室に前座の試合を済ませた選手が入ってきました。

 頭が割れてます。

 血をタオルで拭きましたが、まだどくどく流れています。

 うー先生がそれを見てしまいました。

 「ううううう、うお」

 ヤバイデス。

 うー先生の「あの」癖が始まり始めました。

 うー先生は、血を見たり、痛み刺激で、激しく激しくかーっとなる癖があるのです。

 椅子に手を延ばしました。

「あ、ま、まずい」

 おいらはあわてていつものように、どーどーどーと、首筋をなでましたが。

 すぐに、うー先生は落ち着きましたが……。

 首筋をなでると、しばらく、うー先生はヘタレ化してしまうのです。

 ヘタレ化すると、二時間は動けません。

 うー先生は、試合前だというのに、借りてきた猫のようになってしまいました。

「おい、筋肉バカ、どうした。大丈夫か」

 さすがに心配する亜樹子先生。

 だめです。

 うー先生、完全にブレーカーが落ちてしまいました。

 機能停止です。

「ど、どうしよう。これじゃ、試合にならないよ」

 この状態だと、幼稚園児にも負けるかもしれません。

 XXX相手にプロレスなんて、論外です。

 みんなが、頭を抱えたそのとき、選手控え室のドアが開きました。

「あっ、あなたは」

 おいらは思わず叫びました。

 もう一人の、ボルトホークがそこにいました。

 試合は、着々と進行しました。

 いよいよ、メインイベント、WWS世界ヘビー級選手権が始まります。

 青コーナーから、挑戦者ボルトホーク、身長百八十二センチ、体重二百ポンド。

 赤コーナーから、王者XXX、身長百九十五センチ、体重二百八十ポンド。

 XXXのほうが、明らかにパワーで勝ります。

 本来、スピードに勝るボルトホークですが、負傷をしているのか、左足に、サポーターをはめての戦いです。

 そう、リングに上がったのは、まだ傷のいえない周作さんです。

 ゴングが鳴り響きました。

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がんばれ!夢色の戦士(12)決戦の日!

akagama / 2007.03.06 22:37 / 推薦数 : 0

   (12)決戦の日!

「いや、いいアイデアというよりは危険な賭けではないかと……」

 おいらは心配しています。

 賢明なる読者諸兄の方々は、すでにご存知と思われますが、なんせ、うー先生にはとてもリスキーな性癖があるのですが。

 でも、亜樹子先生は、さっそく、うー先生に話を回してきました。

 荒川医大最強の男、牛山みのること、うー先生も大乗り気です。

 確かに、体格は、周作さんとうー先生は非常に似ています。

 でも、でも、すごく危ないことと思います。

 さて、その五日後、良弘君が、脳神経外科での治療を終えて、七北病棟、周作さんの隣のベッドに帰ってきました。

 術後療法も無事に終わり、後はリハビリテーションがうまくいけば退院なのですが……。

 良弘君は、まだ、歩けません。

 歩く以前に、立つことに恐怖感を持っているようです。

 亜樹子先生も頭を抱えています。

 周作さんも色々気を使って、良弘君に話しかけるのですが、生返事ばかりです。

「なあ、ボルトホークは逃げないで試合するんだぜ、よしぼうもがんばってリハビリしないと歩けなくなるよ」

「…そのうち、やるよ」

 話をしたくないのか、良弘君は、シーツを頭からかぶってしまいました。

 周作さんは一計を案じました。

 太ももの傷はもう大分いいようです。

 普通に歩くぶんには問題ありません。

「よしぼう、ボルトホークに会わせてやろうか?」

 その言葉を聞いて、良弘君、飛び起きました。

「それ、本当?」

「ああ、ボルトホークは、秘密トレーニングを終えて、今、東京にいる。電話をかけて呼んでやるからな」

 そういって、周作さんは、病室を出て行きました。

 それから、小一時間、周作さんは帰ってきませんが、病棟に、お見舞いの花束を抱えた、覆面レスラーが現れました。

 そう!ボルトホークです。

 正確に言えば、病衣を、背広に着替え、ボルトホークの覆面をかぶった周作さんです。

 良弘君のところにやってきてくれました。

 良弘君、大喜びです。

 お花を渡すボルトホーク。

「周作さんに頼まれて、お見舞いに来たんだ。良弘君、手術よくがんばったね、これから、リハビリもがんばろうね」

 うーん、感激の対面ですが、リハビリの話を出されて、ちょっと顔をしかめる良弘君です。

「ねえ、XXXには勝てそう」

 良弘君は、リハビリのことには答えないで、今度の試合のことを聞きました。

「良弘君が応援してくれたら、きっと勝てるよ。だから、応援してくれるよね」

「わかったよ。がんばってね」

 さて、ボルトホークこと、周作さんの思いは、伝わるのでしょうか。


 四月一日、武道館。

 いよいよWWSのTVショーが始まります。

 もちろん、メインイベントは世界ヘビー級選手権試合、XXX対ボルトホークです。

 相変わらず、良弘君は、リハビリを拒否して、ベッド上での生活が続いています。

 周作さんは、軍曹に換えてもらった太ももの傷をさすりました。

 痛みは感じません。

「いけそうだな」

 独り言を言うと、周作さんが着替えを始めました。

「あれ、おじさん、これから、テレビでWWSのTVショーが始まるよ。みないの」

「おじさんは、これから武道館へ、ボルトホークの応援にいくんだよ」

「ええっ、本当?ボクもいきたいなあ」

「だめだよ、よしぼうはベッドから降りられないじゃあないか」

「……」

 

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がんばれ!夢色の戦士(11)手負いの鷹

akagama / 2007.03.06 08:26 / 推薦数 : 0

  (11)手負いの鷹

 その夜の当直は亜樹子先生です。

 すぐに、大学院生棟から駆けつけ、周作さんの、傷の消毒と、縫合処置を行います。

 幸い太い血管は切れていませんでしたが、かなり深い傷です。

 周作さんが申し訳なさそうに、亜樹子先生に言いました。

「先生、すまない、逃がしちまった。DCA13と書いたダンボール箱を奴らは盗んでいったけど、いいのか、警察に言わなくて」

「あとで警察には連絡するけれど、あんたがそんな心配しなくてもいいんだよ。それより、この傷じゃ、明日の退院は無理だね。しばらく、安静にして消毒しなくちゃね」

「あああ、試合は大丈夫かな」

「無理に決まってんでしょ!こんなに傷口がふかいのに」

「……」


 さて、ところで、おいら、あかがまは、エリカちゃんに、とらわれたあと、どうなったのでしょうか。

 はい、気がついたら、おいらは真夜中の谷中霊園にほうり捨てられていました。

 寒くて目が覚めたら、深夜の墓場でだばだ状態でした。

 しかたがないので、とぼとぼと、隣の荒川医大の時間外出入口から中に入り、七階北病棟にエレベーターで上がって行きました。

 今夜の当直の亜樹子先生は、いつも院生棟で寝るので、当直室はあいているはずです。

 今夜はそこで泊まることにしました。

 おいらの乗ったエレベーターが七階に着きました。

 おや、病棟のほうががやがやしています。

 おいらはナースステーションに顔を出してみました。

 処置室で亜樹子先生が、処置をしています。
 
 周作さんが顔をしかめて処置をうけていました。

「あ、亜樹子先生、何かあったのですか」

 亜樹子先生は、ちらりとおいらを見ました。

「あかがま。ちょっと話がある。当直室まで来な」

 当直室で、しばし、沈黙の時間が流れました。

 亜樹子先生は、おいらが何を言わなくても全て察しているようでした。

「……あ、あのう、やっぱり、おいら逆さはりつけで、ロンギヌスの槍でしょうか」

「まあ、周作さんの傷はまあ、しかたがないけどねえ。あの人が、勝手に泥棒に飛びかかっていったんだから。でもね、あんたもねえ、少し、知恵を働かさないとだめだよ。ユリウス製薬なんて聞いたこともない会社のMRとか、信用するほうがバカだよ」

「……すみません。DCA13盗まれちゃいましたね」

「あー、あれか、あのダンボール。あれには、DCA13なんかいれてねーよ。私の使わなくなったガラクタしか入ってないよ。今、DCA13は私んちの家の冷蔵庫のなかだもん」

「え?、そ、そうだったんですか」

 さすがです。

「考えてないようで、私だっていろいろ、考えてんだよ」

 敵を欺くには、まず味方からということのようです。

 今頃は、どろぼう、(当然、そのうちの一人は、エリカちゃんだったのですが)は、ダンボールをあけて地団太をふんで、悔しがっていることでしょう。

 ダンボールいっぱいのガラクタに、「これやるから帰れ、バーカ」という付文が入っていたからです。


「やれやれ、しかし、十日後の試合はどうしたものかねえ。やっぱり、あの筋肉バカにがんばってもらおうかね」

「……き、筋肉バカって」

「そうだよ、うーのやつに、ボルトホークの覆面をかぶらせて試合をさせる。いいアイデアだろ」

 そうです、亜樹子先生は空恐ろしい計画を考えていたのです。

 怪我をした、ボルトホークの影武者に、うー先生を……。

 

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   (10)恐怖の麻酔分析・狙われたDCA13!


「ううん、あのねー、エリカちょっと、聞きたいことがあるんですよー。それを教えてくれたらすぐ帰してあげるわ」

「こんなひどい目にひとをあわせて、い、一体何を、聞きたいのでしゅか」

「せんせーのところで、DCA13ってお薬、作ってますよね。エリカが知りたいのはねー、DCA13って荒川医大のどこにおいてあるかおしえてほしいんですけどお」

「DCA13?あー、おまえは、イプシロンの手先かーっ。だめだ。死んでもいわない」

「そうよ、ユリウス製薬はねー、イプシロンの百パーセント子会社なのよー。やっとわかったのね。いうまえに死なれちゃうとこまるから、お薬つかっちゃうね。今、せんせーの腕にささった点滴のボトルにはねー、麻酔薬のチオペンタールナトリウムとベンゾジアゼピンというお薬がはいってるのー。これが身体にはいってくると、言いたくなくても、つい白状しちゃうのよね。麻酔分析っていうんだけど。でもねー、運が悪いと息が止まって死ぬから気をつけてねー」

 そういうなり、エリカちゃんは点滴のポンプのスイッチを作動させました。

 麻酔薬の薬液が、一滴、一滴入ってきます。

 それとともに、おいらの頭は、ぼーっとしてきました。

 脳の中に空気が入って膨らんできているようです。

「もう一度、聞くわ。DCA13はどこに隠してあるの」
 
「ううう、ううう、ななかいきたびょうとうべんじょのよこのそうこのなか……」

 あああああ、麻酔分析に見事にひっかかったおいらは、イプシロンのスパイのエリカちゃんに、ぜーんぶしゃべってしまいました。

 ウエーン。


 さて、こちらは、周作さんです。

 周作さんはついに、明日退院の許可をもらいました。

 試合のジャスト十日前。

 それが、うれしくて、うれしくて眠れません。

 深夜三時をまわっても、目がらんらんとして、眠れません。

 何か、いつのまにか、そわそわしてオシッコにいきたくなりました。

 むっくり起きてトイレに行くことにしました。

 彼の病室はトイレの真正面にあります。

 横には倉庫があります。

 周作さんは、あれ?と思いました。

 いつも、しまっているはずの倉庫のドアが開いています。

 中で、誰かがごそごそやっています。

 看護師さんではありません。

 病室を出たときに、二人とも、看護記録をつけているのをみました。

 では、倉庫をごそごそしているのは誰?

 何気なしに覗いてみることにしました。

 とんでもないヤツラを発見してしまいました。

「ど、どろぼう!!」

 思わず、叫ぶ、周作さん。

 倉庫には、二人の黒づくめの曲者が中を荒らしていたのです。

「しまった。みつかった!」

 二人はあわてて倉庫から飛び出しました。

 一人は、DCA13と大きくマジックで書かれたダンボール箱を抱えています。

「このやろう、逃がしてたまるか!」

 周作さんは、手ぶらのほうの曲者を羽交い絞めにして逃げられないように捕まえました。

「ちきしょう、はなしやがれ」

 曲者は、懐からナイフを取り出すや、周作さんの右の太ももに突き立てました!

「いてーっ」

 思わず手を離す周作さん。

 曲者は脱兎のごとく走って行きました。

 ヤツラは、結局、DCA13とかかれたダンボール箱を持って逃げていってしまいました……。

  

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   (9)とらわれのあかがま

 智佳子先生は、新体操とチアリーディングの、元強化選手のキャリアを持っています。

 智佳子先生は、周作さんの、欠点を的確に指摘し、修整につとめました。

 最初、頭からずでーんと落ちていたトンボ返りも、智佳子先生の指導でどんどんうまくなっていきました。

 毎日三時間、みっちりと、うー先生と智佳子先生あいてにトレーニングを続けているうちに、昔のボルトホークの面影がよみがえってきました。
 
「ひょっとすると、いけるかもな」 

 食事療法も、病院食で、コントロールが進み、身体がどんどん軽くなっていくのを、周作さんは感じていました。

 自信がついた周作さんは、お台場にある太洋プロレスの道場に出かけました。

 社長のお眼鏡にかなうか、さっそく、体力テストと、若手相手のスパーリングです。

 スパーリングで若手を圧倒、翻弄する、周作さんの動きに、目を見張る社長。

「おいおい、何だよ。現役の時より、身体が軽いじゃあないか」

「じゃあ、おれを、XXXにぶつけてくれますね」

「それは、いいんだけど、おまえ、ほんとにガチンコ勝負でいいんだな。いまのXXXは四年前に闘ったときとは別人だぞ、下手するところされっぞ」

 うーん、社長ははなから、ボルトホークに勝ち目はないと思っています。

「そうじゃあないと、XXXも納得しないでしょう」

「わかったよ。じゃあ、ジョニー黒田は、別のWWSの選手と試合を組ませるようにする。試合日は、四月一日だ。頼んだぜ」

 二週間後の土曜日、午後七時。

 おいらは、ただ飯にさそわれて、時間外出入口で待っていたタクシーに乗り込みました。

 ユリウス製薬のエリカちゃんは、もう先にタクシーの後部座席に座って待っていました。

「あかがませんせー、今日は楽しみましょうね」 

 いきなり抱きつくエリカちゃん。

 いや、抱きつくだけならよかったのですが。

 抱きつかれた瞬間、おいらの太ももにちくりと、かすかな痛みが走りました。

 そして、あれ、と思う間も無く、おいらの意識は、すこーんと、すっとんでしまったのでした……。

 どれぐらい時間がたったのでしょうか。

 ぎらぎらと光る、照明に照らされておいらは、眼が覚めました。

 目が覚めた場所はどうみても、ホテルのレストランではありません。

 四方を白い壁に囲まれた、その八畳ほどの部屋に、ベッドが一つだけ。

 おいらは、ベッドに抑制されて、仰向けに寝かされていました。

 左腕に、点滴の針が刺さっています。

 天井から吊るした点滴のボトルのそばには、エリカちゃんが立って笑っていました。

 おいらは、ここで初めて、接待というのは大嘘、実はおいらを捕まえる方便だということに気づきました。

「こらー、騙したな。おいらをどうするつもりだー」

 騒いでもベルトは外れません。

「だってーセンセーエリカの頼んだお薬飲んでくれないんだものー」

「あたりまえだー。ワケワカラン薬なんか飲めるかー」

「でも、もう、遅いわよ。あかがまさんもう、動けないでしょ」

 そうです。

 お腹の部分でおいらの身体は、ベルトでガッチリ固定されてしまって動けません。

 エリカちゃんはおいらをどうするつもりなのでしょうか。

「あの、ひょっとして、おいらを殺すつもりなの」

 身動きできないところをブスリとやられるともうどうしようもありません。



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がんばれ!夢色の戦士(8)再び戦場へ

akagama / 2007.03.04 23:15 / 推薦数 : 0

  

     がんばれ!夢色の戦士(8)再び戦場へ

「試合に出たいんですけど、一ヵ月後なんですけどね」

 周作さんは決意を、亜樹子先生にぶつけてみました。

 しかし、唖然となる亜樹子先生。

「ああー?プロレスの試合に出たいー?本気なの、あなた」

「ええ、ばりばり本気です。無理ですか」

「筋トレとか試合とかやると、アドレナリンってホルモンが、どーんと出ちゃうでしょう。それ、血糖値があがる原因になるから、あまりいいことじゃないわよね。それより、実戦練習もなんにも無しで、試合なんてできるの、まともに」

「それは、何とかします。だめですか?先生」

「うーん、やるなら自己責任でおやんなさいとしかいいようがないわねえ。そのかわり、データがかなり悪化するようなら、ドクターストップよ。試合であなたが死ぬ分には、私はノータッチ、それでもいいなら頑張りなさいとしかいいようがないわね」

「わかりました。ありがとうございます!」

 病室にもどると、良弘君が、ご両親と身支度をしていました。

 術前検査が終わり、これから脳神経外科の病棟に転科するそうです。

 これから、良弘君にも試練が待っています。

 脳神経外科の手術と、術後の化学療法と放射線治療。

 XXXの試合が行われるころは、リハビリテーションをしているころでしょうか。

「よお、よしぼう、これから手術か、がんばれよ。いい話をおしえてやろう。ボルトホークは来月、XXXと武道館で試合をやるぞ。だから、はやく元気にになろうな」

「うん、わかった。ボルトホークさんに頑張ってね、と伝えてね」

 良弘君とご両親は、ヒヨ子に連れられて、脳神経外科病棟へ転科していきました。

 さて、周作さんも、本当に秘密トレーニングを始めることにしました。

 うー先生がトレーニングのサポートをしてくれることになりました。

 糖尿病の治療をしながらなので、簡易血糖の測定装置で、トレーニングの合間に、血糖が上がっていないかチェックしながら、慎重にトレーニングを続けます。

 体育館裏での、周作さんと、うー先生の特訓がスタートしました。

 もともと、ボルトホークというレスラーは、空のバトルアーティストの異名を持っていました。

 あまり、大きな筋肉をつけて、体重をふやす必要がないのは、糖尿病の周作さんにとっては、ラッキーでした。

 筋肉をつけて体重を増やすためには、強力な同化ホルモンであるインスリンを、血中に分泌させて、筋肉の材料になるたんぱく質を筋組織に送り込む必要があるからです。

 糖尿病は、インスリンが出にくくなる病気なので、筋肉をふやすには、不利なのです。

 むしろ問題は、空中戦のトレーニングです。

 ボルトホークの必殺技、ボルトスターライトは、コーナーポストから、高くジャンプ、くるりとトンボをきって、高いポジションから敵の頭上に踵落しをかませる大技です。

 高い跳躍力が要求されます。

 最近、ロードワークもせず、原付バイクばかり乗っていた、周作さんの脚力は相当、現役時代に比べると落ちているようです。

 なので、試合まで時間がないので、まず、下半身だけでも鍛えようということになりました。

 レッグプレスに、スクワットを中心に脚力を強化させていきます。

 うー先生は、智佳子先生に、周作さんの空中戦のトレーニングを見てもらうことになりました。

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がんばれ!夢色の戦士(7)決意の鷹

akagama / 2007.03.04 08:45 / 推薦数 : 0

   (7)決意の鷹


 テレビの画面は、XXXの勝利インタビューを流しています。

「今日の試合は完勝でしたね。選手権で五連覇、もう、XXXさんにはやり残したことはないのではありませんか」

 インタビューアーの声に、声を荒げてこたえるXXX。

「いや、まだやり残したことはあるぞ。ボルトホークの野郎だ。あいつ、勝ち逃げしやがって。おい、ボルトホーク、そんなに俺と闘って負けるのが怖いか。この弱虫め。この試合どこかで見ていたら、出て来い。俺はお前をぶっつぶさねえと気がすまねえんだ。」

 この挑発に、ついかーっとなってしまった周作さん。

「あんのやろー、俺に負けたくせしやがって……」

 つい、つぶやき声をもらす周作さん。

「えっ?今、俺に負けたって言わなかった」

 良弘君の言葉に、思わず、取り繕う周作さん。

「あ、俺の友達にっていう意味だよ」

「でも、ボルトホークは、また試合するんでしょう。秘密特訓もしてるんだし。こんどまたXXXとやるんだよね。ボクも病気から逃げたりしない。ボルトホークも逃げないよね」

「うーん、そ、そーだな」

 周作さんのシーツを掴んだ手に自然と力が入ってきました。


 周作さんは、ビデオを見終わってすぐ、玄関に下りて行き、公衆電話ボックスに駆け込みました。

 太洋プロレスの社長さんに電話をかけました。

 社長さんは、懐かしそうに、話をしてくれました。

「おー、山田かあ。元気でやっているか」

「社長、今、プロレスのワールドマニアのビデオ見たんですけどね。XXXの野郎、おれと試合をしたがっているらしいですね」

「おー、そのことか。うちにも、WWSからオファー来とるぞ。むこうはな、一ヵ月後の武道館でTVショーの興行があるので、XXXと、ボルトホークのタイトルマッチを目玉にしたいらしい。うちとしては、若手レスラーのジョニー黒田に、ボルトホークのマスクをかぶらせて、XXXにはとりあえず気持ちよく勝って、帰ってもらおうとおもってるんだがね」

「社長、それって、八百長じゃないですか」

「おいおい、日本のレスラーでガチンコ勝負で、XXXに勝てる奴なんているわけないじゃないか。大事なレスラーを大怪我させられてたまるかよ」

「あの、相談ですけど、どうせ、誰が出ても、勝てないんならおれにやらせてくれませんかね。XXXとガチで」

「おまえ、本気か?糖尿悪くして、居酒屋休んで、入院してるって話だが」

「本気です、身体のことは心配せんでください。すこし時間をください。また連絡します。スパーリングでおれの身体のキレを見てくださいよ」

「わかった。そのかわり、スパーリングで、ボルトホークの名前を汚すような状態なら、当初の考えどおりジョニー黒田に出てもらうよ。じゃあ電話が来るのを楽しみにしているから」

 電話の受話器をおいて、周作さんは意を決したように、「よしっ」と気合を入れました。


 周作さんは、病棟に帰ってきました。

 亜樹子先生は、病棟で、カルテを入力していました。

「亜樹子先生、ちょっとお話が……」

「んー?じゃあ、カンファレンスルームで話そうか」

 二人はカンファレンスルームに入っていきました。

「で、お話は何?そろそろ退院したいってこと?まあ、入院してからの経過は悪くないからまあ、それでもいいけどね」

「いや、じつはですね、おれ、昔プロレスラーやってたじゃないですか」

「あー聞いてる。聞いてる。結構いい線までいってたらしいよね。で、それで」

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   (6)ワールドマニア


 この場は、ちょいと、嘘をついてごまかすことにします。

「おいら、そのアレルギー体質なんだよね。ビタミン剤とかの。だから、栄養ドリンクはだめなの。発疹出ちゃうから」

 エリカちゃんは、そうキタかという顔になりました。

「えー?そうなんですかー。うーん、じゃあいいですう。それならあ、エリカに接待させてくださーい。銀座のゴールデンホテルのフルコースでどうでしょう」

「ふ、ふるこうす!!」

 突然、大声をあげたおいらに、一瞬ぎょっとする、エリカちゃん。

 でも、すぐ、平静を取り戻して話をすすめます。

「じゃあ、再来週の土曜日。夜七時、大学の夜間出入口で、タクシーでお迎えにあがりますわ。よろしくね」

 接待のフルコースのただ飯と聞いては、もう我慢できません。

 おいらは、即座にオーケーの返事をしました。

 ただ飯のお誘いに、にたにたしながら、病棟をうろつくおいらは、ダンボール箱を抱えて歩く、亜樹子先生とすれ違いました。

「やあ、あかがま、嬉しそうじゃん。ちんこに毛でもはえたのかい」

「いやですねー。亜樹子先生、そういうえっちなことを言っていると、田熊さんに嫌われますよ」

「私は、いーんだよ。田熊以外にも、男は星の数ほどいるんだから、何かいいことあったんだろ、教えろよ」

「はい、ユリウス製薬のMRの人から接待をされることになりました。銀座ゴールデンホテルでただ飯です」

「ふーん、それはよかった、といいたいんだけれど……。あかがま、あんたユリウス製薬なんてメーカー知ってたかい」

「いいえ、二日前にはじめて聞きました」

「うーん、製薬メーカーもいろいろ名前を変えるからなー、でもさ、そのMR、何で下っ端院生のあんたを接待する気になったんだろうね?あんた、薬の採用の権限なんか持ってないものね」

 一瞬、おかしいなという顔の亜樹子先生でしたが、なぜかすぐにははーんという顔になりました。

「それより、亜樹子先生そのダンボール箱は何ですか」

「これは、量産化した、DCA13だよ、病棟のトイレの横の倉庫に、置いとくんだ。これから、DCA13は臨床でどんどん使うようになるからね。持ち出しやすいところにおいて置こうかと思ってね」

「はあ、そんなにたくさん使うようになったんですか、すごいもんですねえ」

「まあ、あんたも楽しんできな」

 そういうと、亜樹子先生はまた、えっちらおっちら、ダンボール箱を抱えて、倉庫の方に向かっていきました。

 
 さて、すっかり、仲良しになった、良弘君と周作さん。

 二人ならんで、ビデオでプロレス観戦中です。

 少し前にやった、WWSの最大の祭典、ワールドマニアのビデオです。

 うー先生が録画したのを貸してもらったものです。

 かつて、周作さんが闘った、XXXがメインイベントで、世界ヘビー級選手権を闘っています。

 周作さんがタイトルを返上した後すぐにそれを、XXXが奪取し、その後、四年間タイトルを保持し続けています。

 今のマット界で、XXXが勝ったことのない選手は、ボルトホーク、周作さんだけだそうです。

 今日の、選手権試合も、圧倒的なパワーで勝利をおさめました。

 これで、ワールドマニアの選手権は、五連覇です。

 

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がんばれ!夢色の戦士(5)妖しい女

akagama / 2007.03.03 08:01 / 推薦数 : 0

  

     (5)妖しい女  

 さて、春眠、暁を覚えずといいます。この時期は、午後も眠たくなるものです。

 エリカちゃんと初めてあった日から二日後のお昼。

 相変わらずおいらは、院生棟の机に突っ伏して昼寝をしてました。

 よだれを垂らして寝ているおいらの肩をとんとん叩く人がいました。

「むにゃむにゃ、だれよ、昼寝の邪魔するの」

 こうしゃべりながらも、うとうとうとうと、眠り続けるおいら。

 寝ぼけ眼でおいらの頭上に、何か柔らかな巨大なものが乗っかってきました。

「あ、だ、誰、だれがいたずらしてるの」

 重たい目をやっとの思いで開けると、そこにいたのはユリウス製薬のMR、エリカちゃんでした。

「こ・ん・に・ち・は。おじゃましてまーす」

 頭に乗っかってったのはエリカちゃんのおっぱいでした。

「あ、ああ?エリカちゃん。ここは、関係者以外立ち入り禁止だよ」

「大丈夫ですよ。誰もいないですもん」

「いや、今は誰もいなくても、突然、医局に誰か入ってきて、見つかったら大変だから」

 特に智佳子先生に見つかるのはまずいです。

「先生、じゃあ、営業活動をさせてくださいよ。荒川医大は、MR出入り禁止じゃなかったはずですもの。院生棟や医局に、誰が来ても平気でしょ」

 なんか、美人さんなんですけど、しっかりしてます。うー、なかなか、手ごわそうです。

「あの営業活動はいいんだけれど、ユリウス製薬のお薬ってうちの大学で何か、使ってたのあったっけ?」

 意味深げに、笑うエリカちゃん。

「ユリウス製薬は、まだ設立されたばかりの製薬会社なんです。これから、あたらしいお薬ばかりなのでまだ、どれも、採用になってはいないんですね。これから、いろんなお薬を採用して使っていただきたいんですけど……」

「えー?それじゃ、おいらみたいなバカ院生に営業しても無駄だよ。何の権限もないもん」

「ううん、出来るだけバカじゃなきゃだめなのよ」

「えっ?今、何かいった?」

「いえいえ、気にしないでいいんですのよ。あかがま先生のように若くて元気な先生にいろいろお薬を試して欲しいんですの」

「ふーん、でも、大学には採用されないかもしれないよ」

「あかがま先生に、使ってもらえるだけでも、エリカは幸せです。うれしいです」

 エリカちゃんは、バッグから、ドリンク剤の薬瓶を取り出して、おいらに勧めました。

「あかがま先生、それでは、ユリウスの新薬の試供品でーす。ちょっと飲んでみてださーい」

 おいらは、もらった薬瓶をまじまじとみつめました。

 なんか、毒々しい外観のドリンク剤です。

 ラベルは真っ白で試供品とだけかかれています。

 何のお薬かも、書いていません。

 試供品といわれて、これを素直に飲む奴はバカだと思います。

 おいらも、軍曹達から普段バカバカといわれていますが、そこまでのバカではありません。

 おいらは、どんなお薬なのか聞いてみることにしました。

「あんのー、これは何の薬でしゅか。えらくビビッドな色がついてるんですけど」

「これはあの、トビマールといって、とっても、とっても元気がでる栄養ドリンク剤でーす。さあ、さあ、ぐぐっと一気にお願いしまーす」

 にこにこしながらも、なんか、ちょっとあせり気味のエリカちゃんです。

 うーん、何か変です。

 この、トビマール、ほんとに栄養剤なんでしょうか。

 おいらは、ちょっと不安になりました。

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