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akagama / 2007.04.03 15:48 / 推薦数 : 0
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クラブ「さくら」では、今夜出勤の女の子も勢ぞろいしたところで、開店前のミーティングがはじまりました。
ママさんが、マイク片手にフロア中に響く声を張り上げます。
ママは、まだ二十台半ばです。
ある、中央官庁の、高級官僚の、お妾さんらしいのですが、ママさんのパトロンのことは店の誰も知らない秘密だそうです。
そのママさん、今夜は、気合十分です。
今夜は貸切ということで、割り増しの料金をたくさん、たくさんもらっているので、気合がはいらざるを得ません。
「みなさん、今夜は、貸し切りで、大変大事なお客様がいらっしゃいまーす。どういうことかわかりますかあ?はい、わかりますね。今夜、いらっしゃったお客様のことについて、皆さん、決して誰にもお話してはいけません。もしそのようなことがあると、お店自体がなくなりますし、皆さんも大変困ることになります。それから、今日のお客様からアフターのお誘いがあった場合、ぜったいに断ってはいけません。いいですね?」
三十人近いホステスの女の子はみんな神妙な顔をして聞いています。
ここのあたり、ほかのクラブとは一味ちがいます。
お店には、新人さんも何人かいますが、みんな、そのあたりの心得は身につけているようです。
黒服の支配人が、ママにひそひそと耳打ちをしました。
うなずくママ。
ぱんぱんと、手をたたいて、ホステスさんたちに声をかけます。
「皆さん、お客様が、見えられましたよ。決して失礼のないように、よろしくお願いします」
「はーい」
ホステスの女の子たちは、ホールに集合して、お客さんを出迎えました。
ホールの扉が開けられ、貸切のお客様の来店です。
二十人ほどのお客さんが入ってきました。
が、お客さんたちは、どの顔も一癖も二癖もありそうな連中です。
「先輩、何か、ずいぶん柄の悪いお客さんじゃないかと思いませんか?」
ずらりならんだホステスの端っこで、お客さんを眺めていた女の子が、となりの年上のホステスにひそひそと話しかけました。
「そうね、今日は、危ない業界の人もたくさん来るらしいという話よ」
「さくら」に、入ってきたお客さんは、正確にいうと十七人。
さて、その内訳ですが、グラニヤ国の外交官と思しき黒人の男性が八人、どうみても堅気の連中には見えない黒服の外人の男たちが八人、そして、これもあやしげな、日本人の男が一人。
フソン大統領の姿は見えませんでした。
やはり、入院中なのかもしれません。
一人交じっている日本人の男というのは、佐古渉、三十六歳。
元、外務省職員。
この男、五年ほど前、ロシアに駐在中、銃を密輸しようとして免職になっています。
二年間ほど、刑務所でおつとめをしたあと、「貿易関係」のお仕事を始めました。
どうも、今回の、グラニヤの高官と黒服連中のパイプ役を果たしたのは彼のようです。
佐古と、グラニヤの外交官の中でも、ボス格と思われる二人と、黒服のほうも、一番貫禄のよさそうな二人、合わせて五人が、フロアの一番奥、VIPシートと呼ばれるボックスのなかに陣取り、ひそひそと話しはじめました。
このボックスには、ホステスの女の子はだれも寄り付けません。
話が一段落するまで、ボックスには来るなといわれています。
格下どもは、三々五々、ホステスの女の子を横に侍らせて、ちびちびと酒を飲みはじめました。
しかし、奥のボスたちが、気になるらしく、しばしば、横目で奥のボックスの状況を探ろうとしています。
もっとも、VIPシートは格下どものボックスより一段高いところにあるので、どういう雰囲気で、ボス同士が話しているのかは彼らにはわかりません。
ただ、雰囲気は、少なくとも和気藹々といった感じではありません。
店の中には、ひとつ、ぴーんとはりつめたものがありました。
ひとつ、ムードを壊すものがあれば、たちまちのうちに、この緊張の糸がきれて、ただならぬ事態に発展するような厳しい空気が流れています。
「一触即発」そういう、形容がぴったり来る今夜の「さくら」でした。
お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。ガチでがんばります。一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。
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