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ゲンコツ医院/哀しい旅路(5)

akagama / 2007.03.18 11:36 / 推薦数 : 1

 一気に炎が燃え上がります。

 こんなところで、ぐずぐずしていたら、二人ともバーベキューです。

 先生は、男の首根っこを捕まえると、部屋の窓に向かって突進しました。

 ばりばりがしゃーん!!

 ガラスを叩き割って、二人はそのまま、夜空にダイビングです。

「うひゃあああ」

 情けない声をあげる男。

 オシッコもちびっちゃっています。

 先生と男はもつれ合って、地上へ落下していきます。

 バスッと鈍い音がして、階下に停めた、軽トラの荷台が二人を受け止めました。

 荷台にはマットレスがひいています。

 信さんに頼んだ『あの仕掛け』はこのマットレスでした。

 これなら、ビルの三階くらいなら、飛び降りても怪我はしません。

「おい、ここで大人しくしてるんだぞ。まあ、縛られて動けないだろうがね」

 先生の言葉に、眼をまん丸くしたまま、うんうんと頷く男。

 先生はそう言い残すと、荷台から飛び出しました。

 火をつけた奴は、ビルから飛び出したところを、掛川さんにたちまち取り押さえられていました。

 現住建造物放火の現行犯で逮捕です。

 消防自動車も駆けつけ、消火活動を開始します。

 発見も早かったので、延焼することもなく、鎮火しました。

 手錠をかけて、カローラの後部座席に座らされた男。

 ナカナカ色男です。

「よお、殺し損ねて残念だったなぁ。お前さんが雅さんかい」

 色男は、ふてくされて、あさっての方向をむいています。

「おいおい、ひとがきいてんだろう。返事をしなよ」

 先生は、色男の左耳をひねりあげました。

「い、い、いてえっ!そうだよっ雅は、おれだよ」

「おいおい、薫。無茶はいかん、いかんなあ」

 にやにや、笑いながらたしなめる掛川さん。

「なあ、お前、このあんちゃんは怖いぞ。警察に行く前に、ぼこぼこにされて、大事な商売道具のお顔がぐちゃぐちゃになってしまうかも知れんぞ」

 顔をぐちゃぐちゃにされるのはさすがに色男もいやなようで、ぽつりぽつりと、白状しはじめました。

 しかし、あまりひどい話に、先生の顔も蒼くなりました。

 掛川さんも、うーんという顔つきになりました。

 かいつまんでお話しましょう。

 みもとちえというのは借金取りの催促から、逃れるための偽名で、本名は、加嶋香織さんといいました。

 彼女は大怪我をした男の子のお母さんです。

 香織さんの旦那さんは、東北の田舎の町で、小さな工務店をやっていましたが、がんで亡くなってしまいました。

 工務店は、借金のかたにとられてしまいます。

 それでもまだ借金は残ったので、香織さんは、男の子を親戚に預けて、東京の月光館で住み込みで働くことになりました。

 そこに、客として泊まった雅に眼をつけられたわけです。

 銀座に行けば、もっと稼げるよ、借金はすぐに返せるよと、甘言を弄して香織さんを騙したわけです。

 騙したあとは、ヤクザの常套手段です。

 覚せい剤と、脅し、すかしで、言う事をきかせていました。

 その間、香織さんの田舎では、預けられた親戚のうちで、男の子は、食事もろくに与えられず虐められていたようです。 

 虐待を受けていた男の子は、こらえきれずに、親戚の家を逃げ出し、東京に行く列車に乗り、香織さんを探しに東京にやって来ました。

 紙切れは、香織さんが、東京に行く前に男の子に覚書に渡したものでした。

 そして、香織さんの息子さんが田舎からお母さんを探しにきたということを月光館の従業員から聞いた、雅はまずいと思いました。

 さっそく雅は、月光館の近くで途方にくれる息子さんを見つけ、お母さんに会わせてあげようと、車に誘い込み、走る車から男の子を道に叩きつけて殺そうとしたわけです。

 信さんが、みつけていなかったら男の子は死んでいたかもしれません。

 そして、最後に、先生と、先生に雅の情報を流した、銀座のスカウトマンを口封じに焼き殺しにかかったのでした。

  (つづく)
 

 

 お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。御慈悲の一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。 にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

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