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   (9)院長の秘密


 ……表向きは、ということは、田熊さんは何か、考えがあって美多摩医療センターを探っているということになります。

「ときに、あかがま君。君に頼みたいことがあるんだ。協力してくれるかなあ」

 キました。

 おそらく、おいらをスパイにして何かを探るつもりのようです。

 田熊さんには、命を救われたりもしているので、不義理はできません。

 おいらは、黙って静かに頷きました。

「じゃあ、今夜、新宿パークハイアットホテルのバー、午後九時に待ってるよ」

 午後は、心エコー検査をするために循環器病外来にいきました。

 外来では、和光先生がもうおいらを待っていました。

「もう患者さんが何人か待ってますよ。あかがま先生、早速検査をはじめましょう」

 おいらたちは、明かりを暗くした検査室にこもって、心エコー検査を開始しました。

 難しい患者さんは、和光先生に、代わってやってもらい、心臓のエコーはさくさく進みました。

 六人ほどの予約が入っていましたが、無難に検査は終了していきました。

 最後の患者さんの、エコー検査が終わって検査室をでて、内科の処置室で、二人でとったエコーの所見を検討していたら、渚さんが、カートに薬を乗せて運んできました。

 でも、渚さんの様子が少し変です。

 とっても青白い顔をしています。

 骨髄穿刺の検査の時とは別人のようです。

 和光先生も彼女の表情の変化に気がついたようですが、ちらりと見ただけで、だまっておいらの記入したエコー検査の所見用紙をチェックしていきます。

 渚さんは、黙って、カートの上に乗せた、薬品の入った箱を処置室の戸棚に運びいれていきますが、その時にひとつ箱が落ちました。

 それは、おいらの足元に転がってきました。

 止血用のトロンビン末の入った箱です。

 おいらが、箱を拾って渚さんに渡すと、彼女は申し訳なさそうに箱を受け取って、棚卸しの作業を再び続けだしました。

 その夜、田熊さんとの待ち合わせの約束をしていた、ホテルのバーにおいらは立ち寄りました。

 カウンターで田熊さんはもう飲み始めていました。

 田熊さんは、おいらをみると、ロイヤルサルートの入ったロックグラスを掲げて合図をしました。

「何にする」

「ジムビームのロック、ダブルでお願いします」

「おれのおごりだから、高い酒でもいいぞ」

「あ、いえ、これでも十分高いです。でもよっぱらっちゃわないうちに、協力させたいことの内容を聞いちゃいますが……」

「うん、まあ、だいたいわかってるんじゃないの、あかがま君のことだから」

「要するに、美多摩医療センターの、内情を探れってことでしょ」

「まあ、そういうことだ、するどいね。特にお願いしたいのは、院長の世古山だな」

「今日は会ってきたんでしょう、世古山院長と」

「会ってきたよ、インタビューは、絶対にいるからな。左手に包帯を巻いてたよ。犬にかまれたといってたが、ありゃ、頭の黒い二本足の雌犬にかまれたみたいだな」

「そんなに女好きなんですか。院長は」

「院長室のゴミバコに、使用済みの避妊具が、何個もあった。空き箱もな」

「えー、院長室でやっちゃってるんですかあ。なかなかのもんですねえ」

「まあ、古来英雄色を好むとはいうが、なかなかのもんだわ」

「でも、田熊さんも、これまで、美多摩医療センターのことは調べたんでしょ?」

 

 お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。御慈悲の一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。 にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

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