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    悲しき医畜!戦慄の奴隷医療センター(8)限りなき闇 

  渚さんが、背後に人の気配を感じた瞬間のことでした。

 渚さんは突然、強い力で、後ろから口を封じられ、もう片方の手で、羽交い絞めにされました。

 曲者は耳元でいやらしく囁きました。

「おい、梶田は死んだぞ。いいざまだよな」

 しかし、渚さんは、黙ってませんでした。

 口を押さえていた手に思い切り噛み付きました。

「うぎゃっ」

 思わずひるんだ曲者。

 渚さんは、必死に階段を駆け下り、曲者を振り切りました。


 さて、おいらは、点滴を終えると、他に病棟での仕事はなかったので、医局に戻ることにしました。

 医局では、先生達が、今朝の朝刊を広げて、わいわいと騒いでいます。

 皆、昨日逮捕された、清藤先生の記事を見ていました。

 憤然とした面持ちで、記事をみつめています。

 去年以降、警察のえじきになるお医者さんが後を絶たないため、ほとんど、お医者さんが逮捕されたといっても、医療ミスの疑いならベタ記事程度の扱いにしかなりません。

 ただ、先生方は新聞に載った、院長談話に、怒っているようでした。

 院長は、「今回の医療ミスに関しては、手術担当医に落ち度があったことを認め、亡くなった患者様と御遺族の方には深く陳謝するとともにご冥福を、お祈りします……」という談話を寄せていました。

「おいおい、あの手術は誰がやったって難しいもんだぜ。これじゃあ、清藤先生が医療ミスで殺したっていっているようなもんじゃあないか」

 清藤先生と同じ脳神経外科の先生が、怒ったように叫びます。

「結局、清藤先生は、刺されたんだよ、院長一派にな」

「おい、滅多なことをいうんじゃない。次はおまえかも知れないぞ」

「こら、声が高い。院長の奴、医局に盗聴器を仕掛けているかもしれないぞ」

「ほ、ほんとうかよ。危ない、危ない」

 どうやら、医局の空気は最悪のようです。

 これでは、とても、中でゆっくり出来る雰囲気ではありません。

 この場は、そそくさと失礼することにします。

 こういうときは喫茶室でサボるに限ります。

 おいらは早速、医局の暗い階段を下りました。

 医局の階段をおりて、病院の裏を回ると喫茶室への近道になるよと、智佳子先生から聞いていたので、その通り病院の裏廊下を歩いていました。

 ここの廊下は、患者さんが入ってくることがないので、やはり、薄暗く、湿っぽい空気がくぐもっていました。

 予備薬品庫、備品庫、資料室といった普段は、あまり使われない部屋が並んでいます。
 
 予備薬品庫の前を通りかかったとき、中で人の声がしているのに、おいらは気がつきました。

 とぎれ、とぎれに、聞こえる声は二人とも女性のようです。

 「…死ぬ」、「…注射」

 かろうじて、そういう単語が聞こえたような気がしましたが、おいらの頭の中は「コーヒー」飲みたい病におかされてしまっていたので、何も気に留めずに、部屋の前を通り過ぎました。

 そして、喫茶室でぼーっと、コーヒーを飲んでいたときのことです。

「あかがま君、午前の仕事はもう終わりかい。ずいぶんのんびりだね」

 おや、おいらに、声をかけてきたのは、醫亊臨牀社の田熊亮一さんです。

 国際治療センターの人体実験事件のときにお世話になった人です。

 そうそう、熱帯熱マラリアを使った生物テロ事件では、田熊さんの秘密兵器のおかげで命拾いをしたこともありました。

 田熊さんはおいらの向かいに座って、ウイスキーソーダを注文しました。
 
「田熊さんじゃないですか。お昼からアルコールですかぁ。それにしても、今日は何でまた美多摩医療センターなんかに」

「うちで出す予定の、病院情報誌の取材だよ。表向きはね」

 お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。御慈悲の一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。 にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

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