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悲しき医畜!戦慄の奴隷医療センター(5)... >
akagama / 2007.03.09 22:46 / 推薦数 : 0
(4)オカリナのひと
おいらは、外の空気が吸いたくなったので、二人と別れて外に出ることにしました。
「じゃあ、屋上の空中庭園に行くといいですよ。眺望はいいです。今日のお天気なら、富士山が見えるはずです」
「教えていただいてありがとうございます。じゃあ、いってきます」
「ああ、ごめんなさい。教えるのを忘れていたんだけど、医師は、業務時以外のエレベーター使用は禁止されているから、階段を使わないとだめだよ」
「ええっ、厳しいんですね」
何か、ここの病院は、医師はかなり冷遇されているようです。
仕方がないので、階段をのぼって、十八階の上の空中庭園にあがりました。
もう、足はがくがくです。
「はあーっ」っと、大きく息をはいて、背伸びをしました。
屋上からの眺めは最高でした。
東に新宿の副都心。
西に富士山。
まだ、この街には、この病院以外に高層ビルがありません。
美多摩市を一望できます。
おや、どこからともなく、オカリナの音が聞こえてきます。
とても、悲しげな曲を奏でていました。
テレビから流れてきたのを聞いたことのある曲でした。
「誰が、オカリナを吹いているんだろう」
おいらは、オカリナの音の聞こえるほうに向かって、歩いていきました。
オカリナを吹いていたのは、ベンチに座っているきれいな女性でした。
髪が長く、くりくりとした瞳の、二十二、三歳ぐらいのひとです。
女性はおいらの顔をみると、オカリナを吹く手を止めました。
「あ、ごめんなさい、じゃまをしちゃって」
おいらは、驚かせてしまったのかと、あわてて頭をさげました。
彼女は、笑って答えました。
「いえ、いいんです。今度、こられた先生ですね。私、仁科渚です。内科病棟の看護師です」
オカリナを吹いていた女性は、この医療センターの看護師さんでした。
「悲しい曲だね。いつも、ここで、オカリナを吹いているの」
おいらの、問いかけに渚さんは頷きました。
「宗次郎さんの『悲しみの果て』です。大事な人に聞いてもらっているんです」
「大事な……ひと?」
「……今は、空にいます」
おいらは、すぐに医局の机の花を思い出しました。
「あの、ひょっとして大事なひとって、ここの病院の先生?」
「はい、彼はとても一途でまじめな人でした。いつも、私の吹くオカリナを聞いてくれました」
「……だから、今日も彼に聞いてもらっているの?」
「今日は、深夜勤務の明けなんです。この街で、この場所が一番天国に近いので、彼の耳にも届くような気がします」
話していると、渚さんはとても悲しそうな表情になりました。
そろそろ、休憩時間が終わりそうなのでおいらは、また、医局への階段を下っていきました。
医局に戻ると、智佳子先生と和光先生も戻っていました。
でも、医局全体の雰囲気が少し変です。
お医者さんたちが、がやがやしています。
見慣れない人も何人かいるようです。
背広を着た男の人が何人か医局にいます。
一人の背広服の男の人が、一人の先生に近づいて、なにやら話しかけています。
その先生は、頷いて両手を差し出しました。
男の人が、いきなり光るものを胸から取り出しました。
手錠です!!
がちゃりと冷たい手錠が、先生の両腕にはめられました!
先生は、半泣きの表情になりながらも、和光先生に頭を下げました。
お忙しい中、何時も御訪問誠に有難うございます。御慈悲の一押しお願い頂ければ誠に幸いでございます。 
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